- 作者: 高井尚之
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/10/17
- メディア: 新書
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Kindle版もあります。
- 作者: 高井尚之
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/11/28
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内容(「BOOK」データベースより)
“日本初”の喫茶店から、欲望に応えてきた「特殊喫茶」、スタバ、いま話題の「サードウェーブ」までの変遷をたどった、日本のカフェ文化論。
昔ながらの「喫茶店」から、ドトール、スターバックスの隆盛、コンビニコーヒーが大ヒットしている現在まで。
「カフェ」の歴史がコンパクトにまとめられた、「新書らしい新書」という感じです。
街中のあちらこちらに「カフェ」があり、繁華街では飽和状態のようにもみえるのですが、いま、日本国内にどのくらいの数のカフェ(喫茶店)があるか、ご存知でしょうか?
日本国内にあるカフェの店舗数は、最新の調査では7万454店(2012年時点。「平成24年経済センサス-活動調査)。最盛期の15万4630店(1981年)の半数以下に落ち込んだが、それでも2014年現在で5万店超のコンビニの1.4倍だ。これは常設店での統計なので、全国各地で開催されるイベントで設けられる期間限定のカフェなどは含まれない。
そんなにあるのか……と驚くばかりです。
マクドナルドなどのファストフード店を「カフェ的に利用する」人も少なくないので、「コーヒーが飲める店」というのは、実質的には、もっと多いはず。
それでも、人口6000万人のイタリアには、軽食喫茶店(バール)の店舗数は、2007年で約16万店あるそうで、上には上がいるものだな、と感心してしまいます。
僕自身は、子どもの頃には「喫茶店」というものに入ったことがなくて(当時、30年以上前は、子どもだけで喫茶店に入るなんてことはありませんでしたから……って、今でもそうか)、「大人の場所」というイメージを持っていました。
それと同時に、「店でお茶(コーヒー)を飲むだけのことに、あんなに高いお金を払うって、なんかもったいないなあ」とも。
そんなお金があったら、ゲームセンターに行くか、文庫本でも買いたいものだ、と。
まあ、そういう考え方を、いまでも引きずっているところはありますが。
ちなみに、スターバックスが日本に進出してきたのは、1996年(平成8年)8月2日。銀座松屋の裏にできたのが、最初の店舗だったのだそうです。
懐かしい!というよりは、もう僕、そのときは大人で、社会人だったじゃないか!ということに驚かされます。
いまや、「どこにでもある」ような気がするスターバックス。日本での歴史は、まだ20年足らず、なんですね。
2013年の日本国内でのスターバックスの店舗数は1000店を超え、2015年に鳥取市にオープンすれば、「全県制覇」になるそうです。
これだけコンビニコーヒーがヒットしていても、スターバックスが大きく失速するということもないようで、同じ「コーヒーを飲む」という行為でも、「コーヒーそのものを飲めればいい」という人と、「カフェでちょっとお洒落にくつろぎたい」という層は違う、ということなのでしょう。
この本では「日本のカフェ、コーヒー消費の歴史」についても語られています。
日本で最初のコーヒー飲用記とされるのは、狂歌師であり、洒落本・黄表紙の作者としても知られる太田南畝(蜀山人)が1804年に「瓊浦又綴(けいほゆうてつ)』(瓊浦は長崎の美称)で記した次の一文だ。
紅毛船にて「カウヒイ」といふものを勧む、豆を黒く炒りて粉にし、白糖を和したるものなり、焦げくさくて味ふるに堪ず
蜀山人さんが日本で最初に飲んだということではないのでしょうが、記録に残っているものでは、これが最初なのだそうです。
1800年代の初めには、日本でも飲んだことがある人がいたんですね。
「焦げくさくて、飲めたもんじゃない」というのは、すごくよくわかります。
この本によると、実在が確認されている日本で最初のカフェは、1888(明治21)年に東京に開店した『可否茶館』なのだとか。
それから百数十年、日本の「喫茶店文化」は、独自の進化を遂げていきました。
コーヒーの味へのこだわりや、店主の個性を主張した店づくりなどは、スターバックスなどのチェーン店の画一的なカフェへのカウンターとして「逆輸入」され、近年のアメリカのカフェに、大きな影響を与えているのです。
そういえば、アメリカに留学した先輩が、「アメリカでスターバックスが人気なのは、すごく美味しいからっていうより、アメリカのなかでは比較的マシなコーヒーが飲めるからだよ。日本人がありがたがるようなもんじゃないと思うけどねえ」と言っていたんだよなあ。
現存する最古の店は、1911年(明治44)年12月に開業した『カフェー・パウリスタ』。
100年以上の歴史があるのです。
この本のなかでは、「愛知県のカフェ文化」など、各地のローカルカフェ情報や名店についても紹介されています。
同じ中部地方でも岐阜県と三重県の一部を除き、他の県民性は違う。本書の担当編集者は長野県出身だが、「喫茶店の数も多くないが、長野の北部では自宅を訪ねてきたお客を、わざわざ『喫茶店へ行こう』と誘いだすという発想自体、まずありません。喫茶店といえば待ち合わせ場所に使うとか、買物の途中、休憩に立ち寄るところだと思っていました。ところが、名古屋市内にある知人宅を訪れた際、『コメダ行こまい』と連れだされた時にはびっくりした」と話す。静岡県出身の何人かに聞いても「浜松市も静岡市も自宅感覚で使うことはない」と断言する(浜名湖を越えると文化が変わるといわれ、浜名湖より西の静岡県は愛知県三河地方の影響を受けてモーニング文化がある)。
僕が住んでいる地域にも、最近『コメダ』ができたのですが、朝行ってコーヒーを注文すると、トーストとゆで卵が無料でついてくる、というのは、けっこうインパクトがありますね。
というか、それってどっちが「おまけ」なんだ、と。
学術的な「文化論」というよりは、「身近なところで、人々に愛されてきた、コーヒーと喫茶店の歴史を、著者の体験もまじえながら語っていく」という気取らない新書で、愉しく読むことができました。
こういう喫茶店の話を読むと、コーヒーが飲みたくなるけど、それ以上に、ナポリタンを食べたくなるんだよなあ、僕の場合。