冷たい熱帯魚 ☆☆☆☆ - 琥珀色の戯言

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冷たい熱帯魚 ☆☆☆☆


冷たい熱帯魚 [DVD]

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【ストーリー】
小さな熱帯魚店を経営する社本と妻の妙子は、娘の美津子が万引きしたと連絡を受け、スーパーへ向かう。そこで警察への通報をされそうになったとき、同じく熱帯魚店を経営する田幸雄の介入でお咎めなしに。社本よりはるかに大きい店構えを持つ村田は、若い女の子を全寮制の寮付きで雇っており、美津子もそこで面倒を見ても良いと申し出る。再婚相手の妙子と美津子の不仲に悩んでいた社本はその申し出を受ける。完全に村田のペースに乗せられた社本夫婦は、熱帯魚の養殖ビジネスに協力する事になるが、どんどん深みにはまっていく・・・。


 この映画に興味を持ったのは、「日本アカデミー賞」で、でんでんさんが「最優秀助演男優賞」を受賞されたからでした。
 いや、佐藤浩市さんとか、香川照之さんが穫ったのなら、「ああ、いい作品なんだねえ」で済んでしまうところなんですが、「でんでんさんが、賞を穫るような映画って、どんな作品?」と、すごく気になったんですよね。
 しかも、「冷酷な殺人鬼の役」だっていうじゃないですか。
 僕と同じように、気になった人は多かったみたいで、近所のTSUTAYAでは、『八月の蝉』ほどではないとしても、けっこうこの『冷たい熱帯魚』、ずっと全部(3〜4本くらいあったのですが)「レンタル中」になっていました。
 1週間レンタルから、3泊4日レンタルに「格上げ」されてもいましたし。


 今回、ようやく観ることができたのですが、正直参った。というか、こりゃ息子には見せたくない。3歳だからわかんないとは思うけど……
 そもそも、「興味本位で借りてみた人」も、けっこう途中でリタイアしてしまったのではないでしょうか。
 つまらないというより、「解剖耐性」「ナマ肉耐性」みたいなのが無いと、キツイよこれ……

 
 僕はこの映画を観て、巻き込まれていく主人公をみながら、先日観た映画の一場面を思い出していました。

映画『ドラゴン・タトゥーの女』のなかで、とても印象的なセリフがありました。
主人公と2人きりになった、ある登場人物が、こう言ったのです。
「人間というのはおかしなものだ。怖いという感情を抱いていても、他人の機嫌を損ねないように行動してしまう」

 主人公は、留守中にこの人物の家を探っていたのです。
 そのとき、突然、相手が帰ってきました。
「ここは逃げなきゃ!」と傍観者としては言いたくなるのですが、主人公は「どうだ、せっかくだから、一杯やっていけよ」という相手の誘いに逡巡しながら乗ってしまうんですよね。
 そして、案の定、罠にはまってしまう。


 主人公の「心の弱さ」というより、「どんな相手にでも、つい『嫌われたくない』という行動をとってしまう、人間の習性を思い知らされたような気がします。
 観客として観ていると、「早く警察に行けよ。いまなら共犯にもならないし、そもそもこいつらは絶対ずっと塀の中か死刑なんだからっ!」と言いたくなります。


 この映画、「埼玉愛犬家連続殺人事件」がモチーフなのだそうですが(この作品内では、熱帯魚店が舞台に変えられています)、でんでんさんが演じている、やたらとエネルギッシュな犯人が「ボディを透明にしちゃえば大丈夫」なんていう言葉を、あの事件の犯人が実際に言っていたというのには驚きました(参考リンク:埼玉愛犬家連続殺人事件(Wikipedia))
 こういうのって、行き着く所まで行くと、なんだかもう、シュールというか、ユーモラスにすら感じてしまうのです。
 そして、このいたたまれない話に、どう決着をつけるのだろうと思いながら観ていたのですが、終盤は、まさに怒濤の展開。最後の最後まで、どんでん返しというか、観客のぬるい予想を裏切る作品でした。
 うん、園子温監督、たしかにすごいなあ。
 そして、ここまで「子どもが学校で苛められそうな役」を演じきった、でんでんさんも凄い。
 こんな人、確かにいそうだなあ、僕も押し切られちゃいそうだなあ、と思うもの。


 映像的にかなりグロテスクで、観ているだけで心理的に圧迫される作品なので、「ぜひ観てください」と勧めがたいところはあるのですが、「こんな映画を観たんだよ……」って、誰かに話したくはなりますね。


 ところで、この映画のタイトルを口にしようとするたびに『淋しい熱帯魚』になってしまうのは、僕だけでしょうか……(WINK直撃世代だからね)

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