あらすじ: 古代ローマ、アイデアが行き詰まり失業した浴場設計技師のルシウス(阿部寛)は、友人に誘われた公衆浴場でタイムスリップしてしまう。たどり着いた場所は、何と日本の銭湯。そこには「平たい顔族=日本人」がいて、彼は漫画家志望の真実(上戸彩)と出会う。ルシウスは日本の風呂の文化に感銘を受け、そこで浮かんだアイデアを古代ローマに持ち帰り一躍有名になっていくが……。
2012年16本目の劇場鑑賞作品。
GW明けの月曜日の夕方からの上映で、30人くらいの入りでした。
出演者たちが積極的にテレビなどで宣伝している影響もあるのか、お客さんの入りも上々のようです。
僕がシアターに入るときにも、女子高生らしい集団がワイワイと喋りながら同じタイミングで入ってきて、この子たちは『コミックビーム』なんて知らないだろうなあ、と不思議な気分でした。
あのマンガが映画化されると最初に耳にしたときは、「これはもう、ローマ人コスプレ集団による学芸会映画確定だな」と思ったのですが、キャスティングを知って、なんだか納得。
「そうか、日本には、阿部寛がいた!」
先日、職場でも『テルマエ・ロマエ』の話題になったのですけど、そこでも、「ルシウス=阿部寛」は「まさに適役!」と大好評でした。
それにしても、映画の撮影中には、阿部寛さんや市村正親さんが「誰がいちばん濃い顔か勝負」をしていたというのですから、撮影現場もけっこうノリノリだったのでしょうね。
そういう雰囲気の良さが伝わってくるような映画でした。
しかし、阿部寛さんの顔の濃さがそんなに目立たないくらいの、ローマ人の濃さっていうのもすごいですよね。
この映画をみていて、僕がいちばん感心したのは、ルシウスの人物像が、最後までブレなかったことでした。
フジテレビが関わっているし、阿部寛さんと上戸彩さんが、ちょっといい感じにはなって、うわー恋愛映画化か?と思ったのですが、結局「恋愛映画的」にせずに、「自分の責任をまっとうしようとする人々」を描こうとしていたのは、けっこう好感が持てたんですよ。
言葉に関しては、掟破りの開き直りとも言える手段で、強引に「解決」してしまうのですが、まあこれは、ギャグマンガ原作だからこそできる荒技、ではあるのでしょう。
ハリウッド映画では、ローマ人もペルシア人も、何の疑問もなく英語しゃべってますしね。
そういえば、オリバー・ストーン監督の『アレキサンダー』で、コリン・ファレス演じるアレキサンダー大王の英語が訛っているということで、バッシングされたという話があったなあ。そもそも、アレキサンダー大王は英語喋ってなかっただろうに……
いろんな意味で、出し惜しみしない映画だと思います(上戸さんの入浴シーン以外は)。
阿部さんも、「出せるところは、限界まで出して」の熱演。
あの黄色い洗面器やフルーツ牛乳などの小道具の使い方も上手い。
ローマの「テルマエ」と日本の「お風呂」。
場所も時代も違う人々が、「お湯につかってリラックスする」という習慣でつながっていたというのは、なんだかとても不思議で、面白いですね。
老若男女、すべてが楽しめる良質の娯楽映画だと思います。
「予定調和的」「なまぬるい」なんて言う人もいそうだけれど、この映画、僕は大好きです。