VERMEER 9/35!
世界に35点しか作品が残っていない(「35」という数字には異論もあるようですが)フェルメール作品のうち、9点(大阪展は8点)が日本に、それも、一つの部屋に終結!
10月29日の月曜日、午前9時30分から11時の朝一番の入場で観てきました。
かなり話題になっている展覧会で、混んでいることは予想していたのですが、平日の朝だし、月曜日は上野の国立西洋美術館など、休みが多い曜日なので案外空いていたりして……
行ってみたら、やっぱりそんなことはなくて、開館15分前にたどり着いたときには、もう50mくらいの入場待ちの列ができていました。
そんなに大きな美術館じゃないのに、こんなに大勢の人を一度に入れるんだったら、「日時指定入場制」の意味があるの?
などと、ブツブツ言いながらも、開館後10分くらいで入場。
入場時に音声ガイド(ナビゲーターは石原さとみさん!)が無料で貸し出され、作品解説の小冊子もついてきます。
大人・一般の入場料は2500円なので、サービスというよりは、最初から入場料に含まれている、ということなのでしょう。
この音声ガイドと解説本がデフォルトになっていることによって、一般的な展覧会で作品の横に書かれている解説を省略することが可能となっています。解説のまわりに人が滞留して流れが悪くなる、というのを予防する効果はありそうです。
石原さとみさんのコメントも、これ、本人が考えたのだろうか、と思うくらい、細かいところに目配りがされたもので、なかなか面白かったんですよね。
フェルメールの絵には、17世紀を生きた人々の日常が描かれていて、それだけをみると、「なぜ、こんなありきたりの情景を、わざわざ絵にしたのだろう?」って疑問になるんですよ。
この展覧会、作品数はそんなに多くはないのですが、その疑問に対して、僕なりに答えがわかった気がします(解説にも書いてあります)。
それまでの絵画というのは、宗教画か貴族や大金持ちなどのスポンサーの肖像画が主だったのですが、17世紀のオランダでは、「ちょっと生活に余裕ができた市民」が絵を部屋に飾ることができるくらいの経済力をつけてきたのです。
そのおかげで、「今からみると、なんでこんな日常生活をわざわざ描いたのか」という作品が生まれるようになったのです。
この展覧会では、フェルメールの作品ではないですが、船を緻密に描いた絵や狩りの獲物の動物の絵なども展示されているのです。
そういう作品をみていると、「こういうものをリアルに描いてみたかったんだ!」っていう画家の声が聞こえてくるようです。
メカフェチと動物フェチの画家にとっては、好きなものが描ける、良い時代になった!って感じだったのかな。
フェルメールのような「日常を描きたい画家」にとっても。
そんなに展示作品は多くないので、けっこうあっさり、「フェルメール・ルーム」に到着します。
いま、世界でいちばんフェルメールの密度が高い場所。
いよいよ……とワクワクしながら部屋に入ります。
混雑が不安だったのですが、僕が到着したタイミング(10時10分くらい)では、絵の前で好きなだけ眺められる、という状況ではないものの、前に人が一層くらい並んでいるものの、その隙間から、「近くでフェルメールを観た!」と言えるくらいの距離でしっかり観られましたし、部屋の中央から、8点のフェルメールを見渡す、という貴重な経験もできました。
フェルメールの作品はそんなに大きくないので、遠目だとあんまり観た気がしないんですよね。
日本初公開の『赤い帽子の娘』は、とくに、「こんなに小さい絵だったのか」という感じです。
ちなみに、一番人気は『牛乳を注ぐ女』でした。
9/35、とありますが、『取り持ち女』は2019年1月9日からの展示です。
フェルメール・ルームに入ってみての率直な印象は「良く言えば、すごく落ち着く気はするけど、案外地味だな」というものだったんですよ。
いや、その地味さというか、どこかの家にかかっていてもおかしくないような親密さ、というのがフェルメールの魅力ではあるのですが。
フェルメール・ルームがそんなに混雑していなかったのも、圧倒的なインパクトで観にきた人が立ちすくむ、というタイプの作品ではないことも大きいのではなかろうか。
ああ、こんなものか、とわかったような気分になって、しばらく眺めてその場を離れて、その日の夜、「ああ、もう少し、しっかり見ておけばよかった」と、少し後悔する、そんな体験でした。
フェルメール密度が濃くて、コンパクトで観やすくて、石原さとみさんが耳元で語りかけてくれるという貴重な展覧会ですので、ちょっと値段は高めですが、観ておいて損はないと思います。
大阪展にも、行ってみようかな。
fujipon.hatenadiary.com
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