いつか電池がきれるまで

いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

新しい環境で生活をはじめる人に役立つかもしれない、3つの話


blog.tinect.jp


 しんざきさんの話はいつも面白い。きっと、問題の解決を、悩みつつも楽しめるような、任天堂岩田聡さんみたいな人なのだろうなあ、と想像しながら読んでいます。
 目の前にあるのが「宿題」とか「課題」ではなく、自分という探偵に対する「人生からの挑戦状」みたいなものだと思えれば、もっといろんなことがうまくできるようになるのだろうか。

 世間は今日から春休み、この春に環境が変わり、新しい学校や職場で生きていく人も少なくないと思います。
 希望と不安、あわただしさとせつなさが入り混じった季節です。
 僕自身も最近かなり煮詰まった気持ちになっていることもあって、ちょっと初心に帰ったつもりで、「これまで書いてきたもののなかで、『新しい環境で生きる人に少しくらいは役に立ちそうな話」を3つご紹介します。



 まずひとつめ。

blog.tinect.jp


 この『佐久間宣行のずるい仕事術』(佐久間宣行著/ダイヤモンド社)という本は、いまの世の中の「仕事術」の本のなかで、とくにおすすめできると思います。

 この本、ある意味「身も蓋もない」のです。

 例えば、「相談のゴールは『解決』にする」という項には、こう書かれています。

仕事の悩みがあると、あなたは誰に相談するだろうか。
先輩、上司、親、友だち……。
ちなみにそれで、問題はどれくらい解決してきただろうか。
悩みについての相談を、ただの愚痴やストレス発散で終わらせず、根本から解決したいと思っているなら、相談相手の選び方から変えてみよう。
「話を聞いてほしい人」ではなく「その問題を解決できそうな人」を選ぶのだ。
相談の目的は、問題解決。
そうであるなら悩みをぶつける相手が問題を解決してくれることがゴールになる。
つまり仕事の悩み相談とは、「動いてもらうためのきっかけづくり」。
だから、悩んだ時はまず、「どうすればいまの問題を解決できるか」を考える。
そして、「だれにアクションを起こせば問題が解決するか」を考えて、これが叶うキーマンに相談するのだ。
それは直属の上司かもしれないし、クライアントかもしれない。間違いないのは、親友に相談して気持ちが晴れても、状況は変わらないままということだ。
相談の仕方にもコツがある。
まずは相談内容より先に、「なぜあなたに相談するのか」を伝えたい。
「これは○○さんにしか解決法がわからないと思うので教えてください」
「あのプロジェクトを経験されたと聞いたのでご相談させてください」
なぜ自分がその人を選んだかが伝わると、悩みの方向性も明確になるし、相手もより親身になる。今の自分にとって、「あなた」に相談することに意味があるとわかってもらうのだ。
「なぜあなたなのか」が腑に落ちて、親権度合いが伝われば、心ある人ならあなたの話を聞くのみならず、すぐ具体的な解決に動いてくれる。

 佐久間さんは「相談でやりがちなミスは、1〜2年次上の先輩に相談すること」とも仰っています。

「自分とそんなに経験も立場も変わらない人に、『愚痴』をダラダラ聞いてもらっても意味はない」と。

「言われてみれば当たり前」ではあるのですが、いざ、自分がその立場になると「問題解決のためのキーパーソン」よりも、「自分が話しやすい人」「仲が良い人」に「相談」してしまいがちですよね。それで、共感なり慰めなり助言なりをもらって、「あなたに相談して、スッキリした!」と思い込んでしまう。

 でも、それで状況が変わることはない。

 ただ、僕の実感としては「人は、自分に愚痴ばかりこぼす人は鬱陶しがるけれど、愚痴の一つも言わない人には警戒しがち」というのもあるので、コミュニケーションとしての愚痴を親しい人には発しておく、というのも有りなのかもしれません。



 ふたつめの話。

fujipon.hatenablog.com


 僕は長年「他人の問題解決能力」みたいなものを侮っていて、自分の問題を自分以上に解決できる人はいないだろう、と思っていました。
 でも、長年いろいろ困ったことに対応してきて、人にはそれぞれ守備範囲や得意・不得意があるし、大概の問題は世の中全体レベルでいえば「よくある悩み事」「想定内のアクシデント」でしかないのです。

 ネット時代になったおかげで、僕自身、店やホテルの予約や通販などで、人に電話をかけたり話したりせずにいろんなことができてよかった、と救われた気分なのですが、そういう時代だからこそ、「ネットで突っぱねられても、相手に直接コミュニケーションをとることで解決できる問題」があることも痛感しています。

 けっこういろんなことが「ネットでは締め切り」「もうお取り扱いしていません」「予約が一杯です」にもかかわらず、担当者の裁量でなんとかしてもらえることも多いのです。
 ネット通販があまりにも便利になったおかげで、「Amazonで真っ先に売り切れたもの」でも、リアル店舗ではまだ予約可能だったり、店頭に残っていることも多いのです。



 みっつめの話。

fujipon.hatenadiary.com


 これはちょっと長いエントリなのですが、「結局、人間関係には公式なんてないのだ」ということをいろんな人がいろんな体験から語っているのです。
 なかでも、もっとも僕の印象に残っているのが、この話。


『月刊CIRCUS・2008年3月号』(KKベストセラーズ)の特集記事「春の転職シーズン到来・採用責任者はココを見ていた!〜人事部長に訊け」より。
(『エンゼルバンクドラゴン桜外伝』の作者である、漫画家・三田紀房さんが語る「入社後を見据えた『ドラゴン桜』式転職術!」の一部です)

 人間関係のトラブルの原因って、ちょっとした生活習慣なんです。
 机が汚いとか、時間にルーズとか、つき合いが悪いとか。世間一般が共有しているルールから外れると、急激におかしくなる、自分が気づいてない部分で人に不快感を与えてるかもしれません。そこを改善するだけでも人間関係って変わりますよ。


 このエントリは2008年に書いたものなのですが、それから15年経って、性格や働きかたの「多様性」みたいなものは、より広く許容されるようになってきた(あるいは、あえて文句を言ってくる人は少なくなった)と思います。
 でも、この「人間関係のトラブルの原因は、ちょっとした生活習慣である」というのは、この15年間も、ずっと生き続けている「金言」ではないでしょうか。
 清潔にしていて、時間を守り、挨拶や必要事項の連絡をちゃんとしてくれる人なら、向こうもあえて揉め事を起こす必要はないですよね。
 あとひとつ付け加えるとしたら、「お金のことは人間関係の壊す原因になりやすいので、貸し借りはしない。どうしても必要なときは、絶対に返し忘れない」ということです。
 僕自身、もう25年前くらいに先輩に頼まれて行ったアルバイトのお金を結果的にもらえなくて、そのことをずっと忘れられないんですよ、たった数万円くらいの話なのに。向こうからみれば「たった数万円」でも、たぶん忘れていただけなのだろうけれど(一応、催促はしたんですけどね)、もらえるはずだった側は、ずっと引っかかり続けているのです。お金って、そういうものなのでしょう。


 少し古い話もあるのですが、書いてからそれなりに時間が経っていても、それなりに役立つのではないか、というものを選んでみました。
 自分を伝えることにマメであること、自分の力を過信せずに、相談すべき相手に、しかるべき時に相談すること、そして、生活習慣を見直すこと。
 実際、僕のこれまでを思うと「やるべきことがわかっていても、それをやるのが難しい」のは百も承知なのだけれど。



fujipon.hatenadiary.com
fujipon.hatenablog.com

アクセスカウンター