(5) 2009 (平成21年)のつづき
ヒナとメスツバに危険が
ヒナが生まれて2週間経った5月18日の夕方のことです。これまで順調だと思っていましたが、小車庫のオスツバではない、これまで見たことないオスツバがしつこくメスツバに付きまとい餌やりをさせません。
餌捕りに出かけても後を追って行きます。メスツバが餌を咥えて返って来ると先に巣に来て餌をやらせません。オスツバはジージーと威嚇の声を出しています。
メスツバは巣の前の棒にとまって困惑しています。
こんなことが餌やりの度に続くので、メスツバも困っているのが見ていて分かります。
私が巣にいるオスツバを脅かして巣から離れた隙にメスツバは餌をやります。
こんなことを何回も重ねてどうにか餌はやれています。
野生の生き物は本能的に自分の子孫を残そうとするのでしょう。
そのため他のオスの子供は邪魔になるのです。
以前テレビで見ました。アフリカのライオンはメスをめぐっての戦いで勝った雄ライオンは負けた雄ライオンの子供をかみ殺すのです。
ツバメにもそんなところがあるのかも知れません。
これも限界で、シャッターを閉め暗くして、このオスツバを捕まえました。
無駄と思いましたが、夕方鳥かごに入れて2キロほど離れた所で放しました。
案の定、翌朝早くから来て昨日と同じく、餌捕りから餌やりまでメスツバに付きまとい、ヒナに餌をやらせません。ヒナもオスツバが巣にとまると怖がって巣の底に張り付くようにして動きません。オスツバはヒナの上にまで乗ってジージーと威嚇の声を出しています。メスツバはその前で固まっています。
このままでは、ヒナは死んでしまうと思い再びオスツバを捕まえることにしました。
今度はもっと遠くにと、河北市の横山まで来るとツバメが沢山いたので、ここで放しました。
彼女見つけろよと鳥かごから出すと、すぐに見えなくなりました。
たとえ車庫に帰ろうとしても途中に河北潟があり、ここにはツバメの塒がありツバメが沢山いると思い、ここなら彼女見つけるかもとの考えで決めました。
家に帰って間もなく、あのオスツバが車庫に帰ってきました。
また同じことが始まりました。
今度は車庫にこのオスツバだけにしてシャッターを閉じ、オスツバを追い回しました。
車庫中逃げ回っても追い回しました。そうすれば懲りて来なくなるだろうと考えました。これだけのことをしなくても来なくなるのが普通です。
そしてシャッターを開けると飛んで行きました。
これだけ脅かせばもう来ないはずです。そうはいきませんでした。
その直後からまた始まりました。
3回目の捕獲をしました。そしてもっと遠くへ行って放しましたが、2時間半で戻って車庫に入ってきました。
全く懲りていません。このオスツバの執念に怖ささえ感じました。
しまいには、ヒナに覆いかぶさって毛を抜き始めました。
ヒナは巣の底で身動きしません。
メスツバはなす術もなく巣の前で固まっています。
またオスツバを捕まえました。4回目です。
そして、もっと遠くに、どこなら良いのか。
ツバメは南国から九州に来て、中国地方、近畿地方を経て福井から石川に渡って来ると考えられます。
渡ってきたルートに放しても帰って来ます。そこで行ったことがないだろうと思われる富山以北にしました。そこなら帰ること知らないだろうと、高速で新潟方面に向けて走りました。
なるべく遠くへと思いましたが疲れもあって、滑川インターで下りました。
そこは水田地帯で家も並んでおり、ツバメが飛び交っていました。
ここなら良いだろうとツバメを放すとすぐに見えなくなりました。
この騒動で小車庫のオスツバは来なくなりました。
翌5月20日、
邪魔がいないのでメスツバの餌やりは順調でした。ヒナも久しぶりに頭をあげピーピー鳴いて餌を欲しがっていました。
夕方5時半ごろ車庫の中からオスツバの囀りが聞こえました。
行ってみて愕然としました。昨日滑川で放したオスツバが車庫に入っていました。
予想はしていましたが、やはり来ました。
メスツバは固まっています。オスツバはヒナの上に乗って、威嚇の鳴き声を出してヒナに何かしています。
ツバメの帰巣能力は凄いものです。数千キロを渡って来るのだから何の事もないのでしょう。
ヒナが巣立ちするまであと3,4日何とかしなければ。
夜、もう一回捕まえて鳥かごに入れました。
目印に赤い色を付けています。
巣立ちするまでかごで飼うことにしました。確保したオスツバにミルワームを与え80匹食べました。初めの頃は上手く食べさせられませんでしたが、慣れると口に入れると自分で飲み込むようになりました。
翌日もミルワーム60匹と羽虫も食べました。
その間メスツバは順調に餌やりをしています。
22日、オスツバがいなくなると、また別の2番目のオスツバが車庫に入り巣にとまってジージーと鳴いています。
さらに3番目のオスツバが来て、この2羽が喧嘩しだしました。喧嘩しならながら外に飛び出し、暫くして3番目と思われるオスツバが車庫に入ってきました。
このツバメが勝ったのでしょう。
どうなっているのか自分でも頭がこんがらかってしまいます。
このメスツバが一人ものだと、他のツバメが何故知っているのか不思議です。
次々とオスツバが現れるのは、番になれなかったオスツバが多いからでしょう。数千キロの渡りをするツバメは体力的にオスの方が強いのでメスより多くなるのかも知れません。
3番目のオスツバはおとなしく、ヒナに危害を加える様子は見えません。
24日朝、車庫の外にその3番目のオスツバが来ていました。
メスツバが巣の前で巣立ちを促しています。
8時ごろ車庫に行くと2羽が巣から出て棒にとまっていました。
暫くして鉄骨の梁に子供2羽とメスツバ、そして3番目のオスツバの4羽が並んでいました。
昼前には4羽とも外に出て、メスツバが餌を持って来ています。
オスツバは子供のそばにいますが餌を持って来ることはありません。その日はカラスが異常に多くて危険な日です。そばにオスツバがいるだけで安心できます。
夜6時前に4羽で帰ってきました。子供2羽とメスツバが一緒で、オスツバは別の棒にとまって寝ました。
明日、捕獲したオスツバを離れた場所に放すことにします。
翌25日朝6時前には4羽とも車庫から出て近所にいました。
メスツバは餌を持ってきますが、オスツバはそばにいるだけで餌は持ってきません。
昼前、捕獲したツバメは市内を流れる川の下流で放しました。
水面に何回も着水して水を飲み飛んで行きました。たぶん返って来るでしょう。
すでに巣立ちしているので、心配ないと思います。
午後3時ごろ車庫の前の電線にそのオスツバがとまっていました。車庫は空なのでどこかに飛んで行きました。可哀そうな面もありますが、こうするしかありませんでした。
この夜も4羽で帰ってきました。
その後も4羽一緒に行動していますが、オスツバは子供のそばに付いているだけで餌やりはしません。自分の子供でないからだと思います。
夜は毎日4羽で車庫に帰ってきます。
オスツバは子供に危害を加えることもなく一緒に行動しています。
6月9日を最後に子供は車庫に帰って来なくなりました。2羽の子供はメスツバだけで無事に育て上げました。
これが6羽全部孵化していたらヒナは全滅だったでしょう。
子供が車庫に帰るときいつものようにたくさんのツバメが付いて来ます。
その中に最初のオスツバも時々混じっていますが危害を加えることはありませんでした。
メスツバと3番目のオスツバはその後、番になって2回目の産卵がありました。
おわり