「日本文学に興味を持っているが、どの作品を読めば良いかわからない」
「文体が古く読みづらい。初心者が読みやすい作品を知りたい」
日本文学の購入を検討するにあたり、上記のように悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
そこで、今回の記事ではおすすめの日本文学30選を紹介します。自身に合った小説の選び方と、各小説の特徴も合わせて解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
日本文学とは
日本文学と聞くと小説をイメージするかもしれませんが、そもそも文学とは、思想や感情を言語化して表現された芸術のこと。
つまり日本文学とは、日本人によって日本語で書かれた文学作品のことで、小説だけでなく、日記や随筆、詩歌、戯曲などすべての総称です。
日本文学の歴史は古く、日本最古の書物とされる「古事記」から考えると1,300年以上。そんな長い歴史の中で、現代の小説の先駆けになったのは、1887年に二葉亭四迷が発表した「浮雲」といわれています。
日本文学の面白い点は、書かれた時代背景を読み解き、その時代に飛び込むことができること。作品をとおして、当時の人間の生き方を知ることができるのは、日本文学ならではの特徴といえるかもしれません。
また、日本文学を読むことで、感性の分析力が身につく、個性を育てられる、自分の考えを人に伝える説得力が身につくなど、人として成長できる点も大きな魅力。
日本文学作品の選び方
日本文学には豊富な作品があります。しかし、古い時代の作品は文体や文法が難しく、読みづらい場合も。特に日本文学になれていない初心者の方は、最初から読みづらい作品を選ぶと、挫折してしまうことがあるかもしれません。
以下、日本文学の選び方を紹介するので、自分の読みやすい作品を見つけるための参考にしてください。
作品が執筆された時代で選ぶ【古典・近代・現代】
文学作品は、大きく古典・近代・現代の3つの時代に分けられます。定義が決まっているわけではありませんが、一般的な年代は以下のとおり。
- 古典文学:江戸時代まで
- 近代文学:第二次世界大戦前(明治維新以降)
- 現代文学:第二次世界大戦以降
古典文学は、現在からは想像できない、昔の日本人の考え方や生活様式を感じられることが大きな魅力でしょう。ただし、今の時代とは文法や価値観、社会常識などが異なるため、理解が難しい傾向も。
例えば、古典文学のひとつである「平家物語」は、和漢混合文で書かれた軍記物ですが、主語が省略されていたり、「侍」という文化を知っていなければ内容を理解できなかったりします。
多くの古典文学は読み手側で補完しなければいけないことがあるため、日本文学初心者の方にはやや不向きかも。
一方、近代・現代文学は、中学校や高校の教科書に載っているような有名作品や、芥川賞・太宰治賞を受賞している話題の作品も豊富です。
年代が古くなるほど理解が難しい傾向があるものの、古典文学に比べて圧倒的に読みやすいため、初心者の方はまず近代・現代文学から読み始めることがおすすめ。
読みやすくアレンジされた作品なら初心者でも親しみやすい
前述しているように、古典文学は原文だとなかなか読み解けない場合も多いですが、現代語訳された作品や漫画版の作品もあります。
「古典文学を読みたいけど、原文はハードルが高い」と感じるのであれば、こうした作品を選択することもひとつの手段。
例えば、古典文学で有名な「源氏物語」は、与謝野晶子氏や瀬戸内寂聴氏、谷崎潤一郎氏など多くの人物が訳本を出しています。
また、原典に沿って漫画化された作品(「あさきゆめみし」)や、
現代風の可愛らしい絵柄で描かれた漫画(「はやげん!はやよみ源氏物語」)も。
初心者が古典文学を読むのであれば、このような作品を入り口としても良いかもしれません。
なお、古典文学の訳本に関しては、訳者によって読みやすさが異なる点に注意が必要。読みやすさは公式サイトに記載されていることがあるほか、近年は購入者のレビューが確認できるサイトもあるため、事前に確認しておくことをおすすめします。
ちなみに、普段目にする映画やアニメでも古典文学の内容が盛り込まれていることがあり、意外と身近な存在。例えば、話題になった新海誠監督の「君の名は。」は、小野小町の和歌を引っかかりとして描いた作品になっています。
難しいイメージが強い古典文学ですが、理解すればロマンを感じられる作品も多数。興味のある方は、読みやすい・理解しやすい作品からチャレンジしてはいかがでしょうか。
迷うなら有名な文豪の名作を読む
どの日本文学作品から読み始めれば良いのか迷う方は、有名な文豪の作品から読むのもおすすめ。
有名な文豪は多数いますが、誰もが一度は名前を聞いたことがある作家の例として、以下の方々が挙げられます。
夏目漱石 | 代表作 | 作風 |
吾輩は猫である、坊っちゃんなど | 社会と人間の関係など悩める日本人の内面を客観的に描写 | |
芥川龍之介 | 代表作 | 作風 |
羅生門・鼻、蜘蛛の糸・杜子春など | 人間の繊細な心情の動きを描写 | |
宮沢賢治 | 代表作 | 作風 |
銀河鉄道の夜、注文の多い料理店など | 優れた言語感覚や想像力に溢れた描写 | |
川端康成 | 代表作 | 作風 |
雪国、伊豆の踊子など | 日本人独自の感性で情緒豊か、日本的な美を重視 | |
太宰治 | 代表作 | 作風 |
人間失格、走れメロスなど | 雰囲気の暗い作品からユーモラスな作品まで幅広い |
「名が知れた文豪の有名作を読む」「教科書で見かけた文豪の作品を読む」など、まずは読みたい文豪を絞ってから具体的な作品を決めるのも良いでしょう。
小説を読み慣れていないなら映画化・ドラマ化された名作で選ぶのもあり
小説を読み慣れていない方は、映画・ドラマ化した文学作品を選ぶのもおすすめ。特に、近代・現代文学作品は、映画・ドラマになっている作品も多数あり、映画・ドラマを観ることで、原作を読んだときに内容が理解しやすくなります。
また、日本文学は児童書にもなっているので、子どもと一緒に楽しむのもあり。
日本文学は、原作が最も魅力を感じられることは間違いありませんが、最初から原作を読まなければいけないというルールはないので、自分が理解しやすい方法・作品から入ってはいかがでしょうか。
おすすめの日本文学作品30選
日本文学は、古典文学・近代文学・現代文学で読みやすさやテーマがまったく異なり、特に読みやすさは、日本文学初心者にとって重要な点です。以下、古典文学・近代文学・現代文学に分けておすすめの作品をご紹介。
古典文学の名作5選
古典文学は、現代では考えられない、当時の社会背景や人間模様を知ることができる点が大きな魅力。以下、おすすめの古典文学を5作品紹介します。
東海道中膝栗毛
江戸時代後期の戯作者(小説家)、十返舎一九の代表作。享和2年(1802年)から文化6年(1809年)にかけて出版された滑稽本です。
江戸に住んでいたお調子者の弥次郎兵衛と喜多八は、伊勢参りに出発。道中に数々の失敗や滑稽を繰り返しながら、東海道を通って大坂へ旅する2人様子を、狂言や小咄を交えながら、当時の口語で描き出しています。
作品最大の魅力は弥次さん喜多さんの滑稽な振舞いですが、各地の名所、名物なども詳しく描写されおり、当時の様子を知ることも。クスッと笑える古典文学を読みたい方におすすめです。
南総里見八犬伝
江戸時代の文豪、曲亭馬琴が28年もの年月をかけて著した長編小説。悲劇の最期を遂げた房総里見氏をはじめ、安房地方の善良な人々などをとりあげて、作者の意のままに大活躍させる爽快な創作物語になっています。
南総里見八犬伝に影響を受けた漫画やアニメも多く、魅力的な登場人物や激しいアクションシーンも。バトル漫画やバトル映画が好きな方におすすめの古典文学です。
雨月物語
江戸時代後期の読本作家、上田秋成によって書かれた怪異小説9編からなる作品。日本でも指折りの怪談・怪異小説といわれており、中国や日本の古典に素材を得た本作品には、怨念や未練を抱えた霊や妖怪が登場します。
時代背景は平安時代から江戸時代まで幅広いですが、どの話の主人公も、復讐の情念・約束への執着・愛欲と、何かしらの想いに身を捧げている点は共通。こうした主人公たちを取り巻く不条理と救済の可能性が本作品のテーマになっています。
曽根崎心中
江戸時代に活躍した劇作家、近松門左衛門の代表作。堂島の遊女で働くお初と、醤油屋の手代徳兵衛の、この世では結ばれることのない切ない恋の顛末(てんまつ)を描いた作品です。
元禄16年(1703年)に、大坂の曽根崎で起こった若い男女による心中事件に基づいて書かれた作品になっており、若者の純粋さゆえの悲劇という人間ドラマが魅力。この世で実らない想いを、あの世で果たそうとする日本的な愛の物語で、恋愛小説が好きな方におすすめの作品です。
浮雲
明治時代の1889年に二葉亭四迷が発表した小説。貧しい境遇に生まれながらも努力の末に官職に就いた主人公の文三。寄宿先でいとこのお勢に好意を寄せますが、仕事に身が入らなくなってしまいクビになってしまいます。そんなときに元同僚の本田が登場し、お勢にアプローチ。3人の関係はどうなっていくのか…。
本作品は未完となっており、物語としての終わりはありませんが、主人公の揺れ動く心情と美しい文体が魅力。その後の展開を読者が想像できる楽しみもある作品です。
近代文学の名作13選
近代文学は、学校の教科書にも載っている有名作品も多数。比較的読みやすい作品も多く、戦後の日本の様子を知ることもできます。以下、おすすめの近代文学を13作品ご紹介。
こころ
夏目漱石の晩年の代表作のひとつ。上「先生と私」、中「両親と私」、下「先生と遺書」の3部構成になっており、下の後半部分は学校の教科書にも載っている名作です。
ミステリー要素や恋愛要素がありながら、作品そのものは、他人の秘密をのぞき見ているような背徳感が感じられる点が大きな魅力。特に、下「先生と遺書」で先生の秘密を開示されるシーンは、物語にグッと引き込まれます。
愛と友情、生と死、人間のエゴといった普遍的な文学の主題が取り上げられており、王道の日本文学を読みたい方におすすめ。
吾輩は猫である
冒頭の「我輩は猫である」の文章が有名な夏目漱石の処女作。名作として多くの方に知られており、現代でも読まれている作品です。
ストリート性は特になく、「我輩」と名乗る猫の視点で人間生活の様子が淡々と描かれていきます。明治時代の社会背景や人々の生活風景を、ときには皮肉や風刺を含んでテンポの良い語り口で書かれている点が魅力。
「我輩」という猫が語り部になることで、普段気がつかないような人間模様を気づかせてくれる作品です。
三四郎
夏目漱石の前期の代表作のひとつ。日露戦争後の日本を舞台に、学問や友情、恋愛に悩む青年の姿が描かれています。
東京の大学に入学するため上京した主人公の三四郎。大都会の空気に翻弄される中、自由気ままで魅力的な女性の里見美禰子に出会い、彼女に強く惹かれていきます。果たして2人の恋の行方は…。
本作品は、不器用な主人公の恋愛模様や青春を感じられる1作。夏目漱石の作品の中でも、読みやすいと定評があり、学生にもおすすめの作品です。
舞姫
舞姫は、森鴎外のデビュー作となっており、作者自身のドイツ留学での経験がモデルといわれる作品。
ドイツへ留学した官僚の豊太郎は、踊り子エリスと恋に落ち、職を解かれてしまいます。その後、エリスと暮らし始めた豊太郎。しかし、友人に「出世の道へ戻るためにエリスと別れろ」と諭され、葛藤の末、妊娠したエリスを残し帰国します。
現代では、批判を浴びるような主人公の行動ですが、明治時代は個人より国家や家が尊重される時代。そんな時代に翻弄される若者の苦悩と葛藤を描いた作品になっています。
銀河鉄道の夜
銀河鉄道の夜は、宮沢賢治が遺した未完の長編小説です。孤独な少年ジョバンニが、友人カムパネルラと銀河鉄道の旅をする物語になっており、宮沢賢治の代表作のひとつ。
ファンタジー要素の強い本作品ですが、旅の出会いや大切な人との別れもあり、死や愛、希望といった普遍的なテーマが描かれています。比較的読みやすい作品なので、子どもから大人まで幅広い方におすすめです。
破戒
島崎藤村が7年かけて書き下ろし、自費出版した作品。明治後期を舞台に、出自(生まれた場所)による差別で苦悩する教師の葛藤を描いた本作品は、社会問題を文学という形で取り上げ、日本文学の新たな可能性を開いたとされています。
自己のアイデンティティと差別の間で追い詰められていく主人公の痛切な心情に、心を揺さぶられることも。夏目漱石などの文豪からも高い評価を受けた作品で、社会派小説が好きな方におすすめです。
山椒魚
12作の短編を収録した井伏鱒二の代表作です。タイトルなっている「山椒魚」は作者の処女作。
岩屋の中に住んでいた1匹の山椒魚は、いつのまにか体が大きくなり、すみかから出られなくなってしまいました。そんな山椒魚の悲しみを、哀愁感漂わせながら、ユーモアたっぷりに描写。
現在の状況を嘆くより、その後の行動が重要だということを投げかけているような本作品は、味わいのある短編集が好きな方におすすめです。
友情
武者小路実篤の代表作で、青春期の若者が友情と恋愛に葛藤する様子を鮮やかに描いた日本文学。主人公の野島と親友の大宮、野島が想いを寄せる杉子の三角関係を題材に、「片思い」「叶わぬ恋」「失恋」という3つのテーマを自由奔放に、包み隠さず描写しています。
若者からも人気が高く、日本文学の「永遠の青春小説」ともいわれる名作。大正時代の若者たちの、熱烈な恋愛模様がリアルに感じられるおすすめの青春小説です。
五重塔
五重塔は、真田露伴の代表作。主人公の十兵衛は、腕が確かな大工でしたが、のろまな性格から、周囲には侮られていました。そんなある日、寺の和尚から親方の源太に塔の建設依頼が。源太より格下の十兵衛ですが、五重塔を建設したいという熱い想いから、試作模型を持ち込み、塔の建設を任されます…。
五重塔を建てた職人の魂を感じる本作品。普段はのろまな主人公が、五重塔を建てるという夢のために行動する様子は、強い信念があれば人生が好転するということを投げかけているのかもしれません。
羅生門
表題作の2編を含めた芥川龍之介の作品からなる短編集。京の都が天災や飢饉ですさんでいた時代、荒れ果てた羅生門で死体の髪の毛を1本1本引き抜いている老婆を目撃する主人公は、老婆に「なぜそのようなことをするのか」と問い詰める…。因果応報を描いた「羅生門」は、映画にもなっています。
そのほか、あごの下までぶら下がる鼻をコンプレックスに思っていた僧侶が、鼻を短くしようと悪戦苦闘する「鼻」など、名作が8編収録。芥川龍之介の世界を存分に楽しみたい方におすすめです。
蜘蛛の糸
芥川龍之介が初めて子ども向けに書いた児童文学作品。大泥棒の犍陀多(カンダタ)は地獄に落ちてしまいますが、目の前にお釈迦様があらわれます。
彼が以前に蜘蛛を助けていたことから、お釈迦様によって1本の蜘蛛の糸が救いの手として差し伸べられますが、主人公のほかに、地獄に落ちた者たちも救いを求めて殺到し…。
児童向けに書いた本作品は「悪いことをしたら自分にかえってくる」という教訓を伝える1作。絵本にもなっているので、子どもと一緒に楽しめる日本文学です。
藪の中
芥川龍之介の代表作のひとつで、平安時代を舞台にした作品。全7章から構成されており、藪の中で起こった殺人事件に関して、尋問を受けた7人の証言を並べた話になっています。各証言が微妙に食い違い、真相はますますわからなくなっていくミステリー小説のような内容が魅力。
最後まで真相が描かれておらず、読み手の解釈によってイメージが膨らむ作品です。考察が好きな方におすすめの日本文学。
一握の砂
1910年に発表された石川啄木の551首の短歌集。全5章に分かれており、「我を愛する歌」「煙」「秋風のこころよさに」「忘れがたき人人」「手套を脱ぐ時」があります。
表題になっている「一握りの砂」というフレーズは、歌集の2番目に登場。「自分を感傷的にさせてくれた人々のことを私は忘れない」という啄木自身の感情を読んだ内容といわれています。
啄木はキレイな歌が有名ですが、本歌集には日常生活の何気ない様子や、自身のダメ人間さを感じさせる歌も収録。作者の等身大の姿を見たい方におすすめです。
現代文学の名作12選
現代文学では、作者の世界観や作品のテーマを楽しむことができます。以下、おすすめの現代文学を12作品ご紹介。
ノルウェイの森
1987年に出版された村上春樹の代表作。主人公のワタナベは、ドイツ行きの飛行機を降り、ビートルズの「ノルウェイの森」を聴いたことがきっかけで、青春時代を思い出します。高校時代に親友を自殺で失い、およそ1年後に、自殺した親友の彼女であった直子と再会。
それをきっかけに、直子との物語がスタートします。しかし、親しくなった矢先に直子はワタナベの前から姿を消してしまい、ワタナベの人間関係は変わっていき…。
本作品は「性」と「死」の2つのテーマに焦点を当てた作品。構造的にも単純で読みやすいため、日本文学に興味を持ち始めたばかりの方にもおすすめです。
人間失格
「恥の多い生涯を送って来ました」の文言が有名な、太宰治の代表作。幼い頃から他人や世間を恐れ、周りの機嫌ばかりを伺っていた主人公は、自己嫌悪と孤独感に苛まれ、徐々に心のバランスが崩れてしまい「人間失格」に。
主人公の手記として書かれた本作品は、作者本人の苦悩を描いた自伝的小説ともいわれ、映画化・漫画化もされています。自分を偽ってでも他人から愛されたいという、人間の自意識を掘り下げた本作品は、今を生きる多くの方も共感できる名作。
斜陽
太宰治の代表作のひとつで、没落貴族の家庭を舞台に、従来の道徳に挑戦を投げかけた名作です。「斜陽族」という流行語が生まれるほど強い影響を与えた日本文学。
終戦直後の日本、没落した上流家庭出身のかず子には、寝たきりで死期が近い母と麻薬中毒になった弟がいました。将来に不安を感じたかず子は、妻子を持つ流行作家・上原にすがり始め…。
斜陽の魅力は、洗練されたいい回しや秀逸な言葉遊び。また、恋を前にして目まぐるしく変わる、女性の心情もドラマチックに表現されています。読みやすく、日本文学初心者の方におすすめ。
雪国
冒頭の「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」というフレーズが有名な、川端康成の代表作。世界中で翻訳出版されており、日本はもちろん、世界的に名作といえる作品です。
親譲りの財産で生活を送る主人公の島村。妻子持ちにも関わらず、雪国の温泉旅館に通い、芸者の駒子と関係を深めていきます。その様子を比喩や背景描写でつづった物語。
本作品の特徴は、雪国での切ない愛憎劇を徹底した情景描写によって表現していることです。詩を読むような美しい表現の数々が魅力。日本語の美しさを堪能できる日本文学です。
刺繍・秘密
刺繍・秘密は、谷崎潤一郎の処女作。作者唯一の告白書にして懺悔録である自伝小説「異端者の悲しみ」ほかに「少年」「秘密」など、初期の短編全七編が収録されています。
表題作の「刺繍」は、人の肌に針を突き刺して色素を入れ、絵柄を描く刺青を通じて、肉体的な痛みを伴う快楽や、異性に支配される喜びなどをテーマが書かれる作品。谷崎潤一郎が描くエロティシズムが印象的です。
官能的な要素の多い本作品。好みは分かれるかもしれませんが、日本語による美しい文体が魅力の谷崎潤一郎の作品を楽しみたい方におすすめです。
金閣寺
1950年に起こった金閣寺放火事件をモデルに、放火犯の内面を深く描いた三島由紀夫の代表作。幼い頃からいじめられていた主人公の溝口は、以前から父に「金閣寺ほど美しいものはない」と言い聞かされていました。そんな溝口は、想像の中で金閣寺の美しさを膨らませていく。彼はなぜ、憧れの存在である金閣寺を焼いたのか…。
金閣寺の美しさに屈折した思いを抱く青年の姿を通じて、現実と理想に苦しむ人間の心理を描いています。戦後文学の最高傑作とも称され、国際的にも高い評価を受けている名作。
檸檬
表題作を含めた14作が収録された、梶井基次郎の代表的な短編集です。表題作の「檸檬」は、主人公が憂鬱さや不吉さに苛まれている物語。
借金取りに追われ、身体の具合も芳しくない主人公は、何をしても満たされません。そんなときに寺町通の果物屋で見つけた檸檬によって、少し晴れやかな気持ちを取り戻していく主人公。
短編集に収録されている作品は、基本的に憂鬱で暗いものが多いです。しかし、完全に絶望しているわけではないという繊細な気持ちを味わえる文学作品。
砂の女
第14回読売文学賞を受賞した、安部公房の代表作です。教師の仁木順平は、昆虫採集のために海岸の砂丘に行くことに。
そこには、今にも砂に埋もれそうな部落があり、終バスを逃した順平は、そのうち1軒の深い穴の底にある民家に宿泊を決めます。しかし、よく朝目が覚めると、地上に上がるはしごが外され、家から出られなくなり、そのまま女と同居生活をすることに…。
独創的な世界観が魅力の本作品。サスペンス的な展開の中で、少しずつ変化していく主人公の姿から、人間の本質を考えさせられます。奇想天外な展開が好みの方におすすめの日本文学。
海と毒薬
1986年に映画化もされている遠藤周作の代表作です。戦時中、九州の大学附属病院で行われた米軍捕虜の生体解剖事件を小説化した、不朽の名作。
無愛想で一風変わった中年の町医者・勝呂が主人公です。彼には大学病院時代に、米軍捕虜への人体実験に参加していたという忌まわしい過去が。勝呂を含む人体実験参加者は、人間の命を弄ぶ非倫理的な行為について、それぞれの葛藤を抱えます。
戦争時の極限状態に置かれた人々の心理描写から、倫理観の問題点や人間の残虐性を浮き彫りにした本作品。信仰を持たない日本人の善悪の概念を投げかける作品になっています。
沈黙
江戸時代の日本を舞台に、神の有無とキリシタン禁制を描いた遠藤周作の歴史小説。2017年に海外で映画化もされています。
島原の乱が鎮圧された頃、ポルトガル人司祭のロドリゴが日本に潜入し、そこで彼が見たのは、残酷な拷問をされる日本人のキリシタンたち。背教も意識し始めた彼らは、キリスト信仰の真理に向かい合います。
キリスト教弾圧下の日本にやってきたポルトガル人宣教師が、命がけで神の存在と自分の生き方に自問自答する物語になっており、宗教色の強い作品に。宗教に対する考え方を学びたい方におすすめです。
コンビニ人間
2016年に芥川賞を受賞した村田沙耶香の代表作。作者本人がコンビニで働いていた経験を活かして執筆された作品です。
子どもの頃から周囲とは違った異質さを感じていた主人公の恵子。そんな恵子が存在意義を感じられたのはコンビニでした。大学時代からアルバイトとして働き続け、気がつけば36歳未婚。ある日、新入りの男性・白羽がやってきて…。
コンビニという身近でなじみのある題材でありながら、「普通とは何か?」というメッセージ性の強い本作品。現在社会を生きるうえでの苦悩を描きながらも、インパクトのあるキャラクターが魅力的な作品です。
乳と卵
多数の文学賞を受賞している川上未映子の代表作のひとつ。本作品は2007年に芥川賞を受賞した作品になり、豊胸手術のために上京してきた巻子と娘の緑子、巻子の妹である夏子が一緒に過ごす数日間を軸に、女性として生きることの大変さが描かれています。
「女性の生きにくさ」をテーマとした本作品は、女性ならではのモヤモヤした感情を描写。改行がなく、読点によって区切られた文章が延々に続く、独特の構成が珍しい日本文学です。
まとめ
日本文学は、小説や随筆、詩歌など日本語で書かれた文学作品の総称です。日本文学の歴史は1,300年以上あり、作品も豊富。どの作品から読めば良いのか悩む方は、出版された時代や作家の特徴を参考に、自分好みの作品を選びましょう。
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