とびこもたくあんも不要!韓国おにぎり「チュモッパ」のおすすめレシピ
こんにちは!韓国料理研究家の本田朋美です。
2022年の「トレンド料理ワード大賞」で第9位にランクインした「チュモッパ」。
最近では「チュモッパの素」が市販されるほど、人気の韓国料理になりましたよね!
このチュモッパ、本場韓国ではちょっと深い歴史があるのです。
今回はチュモッパについて探求したいと思います!
「チュモッパ」は具が何であれ「おにぎり」のこと
日本で「チュモッパ」の人気に火がついたのは2020年頃のこと。お店で食べるような韓国料理を自宅で再現したい人たちの間で話題となり、インターネットでの検索頻度が急増しました。
さらにこの写真のように、注文すると材料が運ばれてきてお客さん自身が混ぜて握るスタイルで提供する韓国料理店が増え、ブームに拍車がかかりました。
ところで現在日本で流行している「チュモッパ」は、ご飯にとびこ、たくあん、韓国のり、マヨネーズなどを混ぜ込んで一口サイズに丸く握ったものが主流ですよね?
実は「チュモッパ」という言葉は、分解すると「チュモッ=こぶし」「パッ=ご飯」で、具が何であれ、おにぎり自体をチュモッパと呼ぶんです。例えば具が梅干しであってもチュモッパですし、三角に握ったおにぎりも韓国ではチュモッパに含まれます。
三角形のおにぎりはチュモッパの一種でもありますが、「サンガッキムパッ(三角キンパ)」とも言います。これは以前「麻薬キンパ」の記事でもご紹介しましたね。
ちなみにこちらは韓国のコンビニで販売されている、ビビンバ味のチュモッパ(サンガッキムパッ)です。
戦地で食べられていた、特大の「チュモッパ」
日本の「おにぎり」は一説によると弥生時代から作られていたそうなので、それと比較すると「チュモッパ」の歴史は長くないのですが、1392年に建国された李氏朝鮮の記録である「朝鮮王朝実録」には、当時の僧侶がチュモッパに近いものを作っていたという記載があります。
以後チュモッパは、韓国の歴史のいろいろな場面で登場します。
太平洋戦争のときには、兵士たちがご飯を握ってまとめたものを戦地に持参し、戦いの合間に食べて空腹をしのいでいたそうです。兵士たちに持たせるために女子学生たちがチュモッパを作る訓練も行われたそうですよ。
当時のチュモッパは雑穀や麦を混ぜたご飯に塩で味付けしただけのもので、大きさは握りこぶしの2倍以上もある特大サイズ。1人1個が基本でした。
この頃のチュモッパを再現してみました。右は今日本で流行している一口サイズくらいの大きさです。迫力が伝わるでしょうか?
韓国で「チュモッパ」が広まったのは日本のおにぎり人気から
以前、麻薬キンパの回でもご紹介したとおり、もともと韓国では「ご飯は必ずホカホカの温かいものを食べる」という食文化だったので、冷めたご飯を食べるチュモッパは一般には広く定着せず、韓国で本格的に商品化されたのは、実は1990年代以降です。
日本のコンビニなどで売られているバラエティ豊かな「おにぎり」が韓国で知られるようになり、韓国でもコンビニなどで前述の「サンガッキムパッ」として販売され人気に。その流れで「チュモッパ」も商品として登場しました。
そこから一般の人たちの間で注目を浴びるきっかけになったのは、1997年に韓国で発生した通貨危機です。
韓国の通貨であるウォンの価値が大暴落し、家庭のお財布事情にも大いに影響を与えたのですが、そんな中でチュモッパは安い価格で手軽に食べられるという理由で支持されたんですよ。
つまりチュモッパは「節約料理」だったんですね!
韓国の地方都市「光州」を代表する料理に
2019年には、韓国の地方都市である光州市(クァンジュシ)が、チュモッパを市の料理にしようと、住民たちの意見をまとめて31種類ものチュモッパを開発しました。
この31種類のチュモッパにどのような食材が使われているか、気になりますよね?
韓国で報じられていたニュースの中から一部をご紹介すると、とんかつ、テナガダコ炒め、カレークリーム、じゃこ、油揚げ(いなり寿司風のもの)、豚肉の甘辛炒め、牛肉ときのこ、トッカルビ(韓国のハンバーグ)、えびクリームなど。
テナガダコ炒めやトッカルビのように韓国らしいものもあれば、日本で言う洋食のようなちょっと意外な具材もありますね。
このとき開発されたチュモッパは、光州市の支援により立ち上がった専門店や既存の店舗で2020年から販売されました。
ところで、なぜ光州市がチュモッパを地域の料理として開発したのでしょう?
背景にあるのは、1980年5月18日から27日にかけて起きた民主化運動、いわゆる「光州事件」です。
このとき、市場で働く女性たちがチュモッパを握って、運動家たちの食事を支援したそうなんです。
光州市ではこの民主化運動を忘れないようにしようという思いで、チュモッパの開発に至ったそうですよ。
チュモッパは奥が深いですね!
それでは最後に、少ない材料で作ることができるチュモッパのレシピをご紹介します!
最近は日本のスーパーでも比較的手に入りやすくなった「サムジャン」を使ってみましょう。
サムギョプサルやポッサムにつけて食べることが多いサムジャンですが、チュモッパにトッピングすると、非常に良い味のアクセントになるんですよ。
もう一つのポイントは、葉物野菜を添え、お好みでチュモッパを包んで食べる点です。
サムジャンの「チュモッパ」レシピ
調理時間
10分
分量
2人分
材料
・ご飯…1合分
・ごま油…大さじ1
・白ごま…大さじ1
・塩…小さじ1/3
・韓国のり…適量
・サムジャン…大さじ1/2
・葉物野菜(サラダ菜、サニーレタス、青じそ、えごまの葉など)…適量
・小ねぎ…適量
作り方
1. ボウルにご飯、ごま油、白ごま、塩を入れて、切るように混ぜ合わせ、10等分にする。
2. 1のご飯を1つずつラップで包み、丸く成型する。これを10個作る。
3. 韓国のりをポリ袋に入れてもみ、細かくする。
4. ポリ袋の口を開き、2の下半分だけに韓国のりをまぶす。
5. 小ねぎを斜め切りにする。
6. 4のご飯にサムジャンと小ねぎをトッピングすれば完成!
韓国のりはご飯の全面にまぶしてもいいですし、ご飯に混ぜ合わせても手軽に作れます。
このチュモッパはそのまま食べてもおいしいのですが、葉物野菜に包んで食べるのもおすすめです。ぜひやってみてください。
それでは今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました!