性的虐待を受けた子どものための本 - キリンが逆立ちしたピアス(ブログ版)

性的虐待を受けた子どものための本

 少し古いまとめなのですが、子どもの頃に、性的虐待を受けたかたが、体験をツイッターで書いています。

性的虐待を受けた子供のその後」
http://togetter.com/li/77543

記憶が四十年も消えず恐怖も拭い去れない。誰にも言えなかったことが尾を引いた原因ではないかと推察されています。最後に次のように締められています。

大人はそれに気づいてやらなきゃならないんじゃなかろうか。どんな方法があるのか、わからないけど。気づかなきゃ被害に遭う子供達は減らないもの。

 これいついては、子どもに、性的虐待について話し出すきっかけを作るための「ライオンさんにはなそう」という絵本があります。

ライオンさんにはなそう―いやなことがあったけど、はなすのがこわいの

ライオンさんにはなそう―いやなことがあったけど、はなすのがこわいの

  • 作者: パトリシア・キーホー,キャロル・ディーチ,田上時子
  • 出版社/メーカー: ビデオ・ドック
  • 発売日: 1991/06/01
  • メディア: 単行本
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作者は「はじめに」で次のように書いています。

 この本は、性的虐待あるいは身体的虐待を受けたと思われる、3歳から7歳までの、ごく幼い子どもたちのために書かれています。虐待を未然に防いだり、虐待を受けた子どものセラピー(心理療法)の代わりをしたりするものではありません。虐待を受けた子どもたちに、打ち明ける勇気を与えたり、回復を助ける考え方を教えたりするものです。
(略)
 物語の核心は、幼い子どものたいへんもろい自画像を回復させることにあります。自分の世話をしてくれるおとなと一緒にこの本を読むことで、男の子も、女の子も、両親やケースワーカー精神科医、そして、虐待を受けた子どもたちが子どものうちに自分たちの権利を取り戻す手助けをする弁護士など、多くの関係者たちにとって、この本が役立つことを願っています。

物語は、ライオンと子どもの会話で進行し、ひらがなとカタカナで書かれています。

子ども「とっても いやなことが あったの。でも、いったい なんのことか、どうしたら いいのか、わからないの。」
ライオンさん「どうか したのかね?」
子ども「あら、ライオンさん、こんにちは!こまっているんだけど、はなせないの。だって、あのひとが、こう いったの。もし、このことを はなしたら、みんなが、わたしを きらいになるって。おかあさんだって、わたしを とおくへ やってしまうって。」
ライオンさん「そうなのか。だけど、よーく きをつけないとね。おとなには、こどもに こわいひみつを まもらせるために、うそをいうひとが いるんだよ。いってることは、ほんとじゃないんだ。きみが、だれかに ほんとうのことを はなすのを こわがっているだけなんだ。もう きみとは ともだちじゃないよとか、いたいめに あわせるよとか、きみがほんとうのことを はなせなくするためには、なんだっていうんだよ」

こうして、子どもはライオンさんに促されて、自分が嫌なことをされたことを話します。ライオンさんは、それは「性的虐待っていうんだよ」と説明して、子どもにはなんの責任もないことを伝えます。自分が暴力を受けたんだと知ってつらくなる子どもをライオンさんは肩を抱いて慰めます。

子ども「ライオンさんに はなしていたら、なんだか、なきたくなっちゃう」
ライオンさん「かなしかったり、つらかったり、おこったりしたら、だれだって、なきたい きもちになるさ。ないてしまえば、きが らくになるよ」

 直接、「嫌なことをされたら言いなさい」と子どもへ伝えるのはとても難しい場合は、こういう絵本を用意しても一緒に読んでもいいかな、と思います。
 私は持っていないのですが、教則本も出ているようです。

『ライオンさんにはなそう』教則本―いやなことがあったことを話すことから

『ライオンさんにはなそう』教則本―いやなことがあったことを話すことから

 作者は小さな子どもたちに向けて書いていますが、小学校高学年や中高生の子どもたちにとっても読みやすい本ではないかと思います。
 でも、中高生くらいになったら、逆に親と性的な話をすることは難しいかもしれません。私は学校の教室の隅や、保健室の本棚で自由に手に取って性についての本が読めるといいなあと思います。読みやすくやさしい文章で、ふりがながついた本も出ています。以下は、性的虐待を受けた子どもに特化しているわけではないですが、自分の性的な問題について考える手引きになる本です。
エッチのまわりにあるもの―保健室の社会学―

エッチのまわりにあるもの―保健室の社会学―

 それから、性的虐待の被害にあう子どもたちは、「無垢」ではありません。中には、親には言えないこと(飲酒や、安全が守られない交友関係、援助交際、万引きや違法薬物など、不法行為もあります)をしている最中に被害に遭うこともあります。また、「いい子」ではない子どもたちが、過去に性的虐待の被害に遭ってきたこともよくあります。辛い過去を忘れたりまぎらわせようとして、暴力や飲酒、過剰な薬物摂取、危ない性行為に至っていることもあります。
 そうした困難に直面している性的虐待に被害に遭った子どもたちに対して、支援はとても重要です。「かわいそうだから」「非がないから」被害者に支援が必要なのではありません。刑務所や少年院にいる人たちの中にも、性的虐待に遭った子ども(元子ども)たちはいます。以下は、そういう人たちが書いた、サバイバルについての本です。
生きのびるための犯罪 (よりみちパン! セ) (よりみちパン!セ)

生きのびるための犯罪 (よりみちパン! セ) (よりみちパン!セ)

 私は被害者に「あなたは悪くない」というのはとても重要だと思うけれど、「たとえ、あなたが悪くても、あなたは傷ついたんだ」ということも重要だと思っています。たとえ、実際に性的虐待の被害者が、悪いことをして、自分がとても後悔していて、周りからも同情されないような状況であっても、やっぱり性的虐待の傷は深いし、苦しいものです。そこに対して、支援は必要です。
 そして、どんなに「あなたは悪くない」と言われても、「私が悪かったんだ」と思う被害者が、たとえ悪者であっても支援に手を伸ばせるような状況を作っていければと思います。「あなたは悪い子ではないし、悪い子であっても、助けを求めていいんだよ」と子どもたち伝えて欲しいな、と思っています。
その後の不自由―「嵐」のあとを生きる人たち (シリーズ ケアをひらく)

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