ヨシダナギ連載/撮影の空き時間

[連載(5)ヨシダナギのココだけの話]アフリカでの膨大な空き時間の過ごし方

(2020年7月30日 更新)

どうも、こんにちは。カメラを使いこなせないフォトグラファーのヨシダナギです。

≪目次≫

※こちらの記事は2017年3月26日に初掲載されました

 

ヨシダナギのアフリカでの空き時間の過ごし方

「アフリカでは撮影以外の時間は何をしているんですか?」という質問をよく受けるので、今回は私が現地でどのように過ごしているのかを少しばかり綴ってみようと思う。

ココだけの話、現地での空き時間は特に何にもしていない。
このコラムを書くにあたって、撮影旅行のオフタイムの過ごし方をいろいろと思い出してみたのだが、本当に何もしていなかったことに気がつき、愕然とした。
(いや待て、本当は何かしらをしていたのにも関わらず、ニワトリと競[せ]るほどの記憶力により、行動を綺麗に忘れているのではないか。)
そう思い、念のため現地ガイドに「私って、そっちで撮影していないとき、何してたっけ?」と、メールしてみたのだが、「寝てるか、もしくは食ってるね!」と即座に返信が来たので、記憶違いではないようだ。

アフリカで何もしていないからといって、“いやー、何もしていないんですよ”と一言で片づけてしまうと「ヨシダ、こんな原稿で金もらってんのか」と言われそうなので、文字数を稼ぐべく、現地での1日の過ごし方(テント泊の場合)をザックリ説明しよう。

 

[撮影日]ヨシダナギのタイムスケジュール

撮影のある日は大体5時前くらいに起床して、モデルをピックアップしてから撮影場所まで移動。
6時頃から90分間程度、撮影を行う。
撮影終了後、テントまで戻って、9時頃からモデルやガイドたちと朝ご飯を食べて、お昼ご飯の時間までひと眠り。
12時半頃に、またガイドたちとご飯を食べて、特にやらなくてはならないことがない限り、テントに戻って再度15時くらいまで昼寝。
15時半くらいにモデルたちをもう一度ピックアップしたら、撮影場所に向かって17時半くらいまで撮影。
撮影終了後は、夕日が沈んでしまう前に急ぎ足で川に行き、お風呂がてら15分間ほど水浴びして、
19時半頃には皆で夕飯を食べて、21時にはテントでストンと眠りに落ちる。

 

ほらね?何もしていないでしょう?
国や撮影ロケーションによっては多少、時間の前後などはあるけれども、大まかにはいつもこんな感じ。現地ガイドが人懐っこい性格の場合は、昼寝の邪魔をしてくるので、その時は一緒に近くを散歩したり、現地の子らのローカルな遊びに参加したりもする。あとは、昼寝から少し早く目覚めてしまった場合は、日本から持ってきたお菓子をバッグから出して、現地の子やガイドたちと一緒に、おやつタイムをたらふく楽しむことも。

 

移動中のヨシダナギは……

こんなふうに滞在中は過ごしているのだが、果たして移動中はどうなのか。
私が向かう撮影場所というのは大体、首都から片道、車で2~3日間かかる場所が多い。
その移動中も基本的に眠っている。悪路で車がガタガタ揺れて、頭や体をどんなに激しく強打しようが、私は一度車内で眠りに落ちたら「ナギ、ご飯だよ。」と、ガイドから声を掛けられるまで眠り続けられるタフさを持ち合わせている。ガイドからは毎回「何で、こんな状況で君はずっと眠っていられるんだ!?!」と驚かれるのだが、何故なのかは私にはわからない。私自身も何故こんなに自分が起きていられないのかと不思議に思う。きっとアフリカの悪路から来る揺れが、ほどよく私の睡眠中枢を刺激するのだろう。それ故に、道中のスナップ写真や世界遺産の写真はほとんど撮っておらず、目的地までのルートや景色も覚えていなくて、帰国後、関係各位に怒られているのだ。

ヨシダナギ連載/撮影の空き時間
出典: FASHION BOX

まあ、こうやって書いていると“現地では、まったく何もしてないんだな”と思われるかもしれないが、どっこい日本での生活も、さほど変わりはない。
日本ではモチロン、写真の編集作業やトークショー、仕事で人と会わなくてはならない日はあるのだけれど、オフの日は“朝起きて、何もせずに、気がついたら日が暮れていた”なんてことがザラに起こる。基本的に私は、世界中のどこにいても、何もしなくていいのなら、本当に何もせずにただただ植物のように太陽にむかってボケーっとしているだけなのだ。だから、マネジメントのキミノから「ヨシダさん、よく口半開きのまま、窓際で光合成されていますよね。」と、嫌味を言われることがある。

 

そんな感じで、今回は特に内容のない私の生態に関するエッセイでしたが、いかがでしたでしょうか。
「何もしてないことを記事にすんじゃねぇ!」と突っ込みたくなった方、ごもっとも。ですので、次の渡航からは少しだけ昼寝の時間を減らして、話のタネになるようなことを探ってみたいと思います。少しだけ。

次回は、何故私が世界中でこんなに眠っているのか、その秘密が紐解かれるかもしれない“現地での撮影”について、お送りいたします。

 

[連載(1)ヨシダナギのココだけの話]フォトグラファー?

[連載(2)ヨシダナギのココだけの話]アフリカは「恋人」ではなく「古女房」

[連載(3)ヨシダナギのココだけの話]アフリカでも常に“受け身” ヨシダ流コミュニケーション術

[連載(4)ヨシダナギのココだけの話]ヨシダの一問一答!~カメラから貧乳まで編~

[連載(6)ヨシダナギのココだけの話]カメラに興味がないフォトグラファーの撮影方法 ~前編~

[連載(7)ヨシダナギのココだけの話]カメラに興味がないフォトグラファーの撮影方法 ~後編~

[連載(8)ヨシダナギのココだけの話]コウモリも美味かもしれない~“食”への飽くなき探求心~

[連載(9)ヨシダナギのココだけの話]ヨシダの一問一答!~蝶野正洋から植田正冶まで編~

[連載(10)ヨシダナギのココだけの話]レタッチ方法だって独学でいいんじゃない。

[連載(11)ヨシダナギのココだけの話]「ヨシダ」は実はデュオだった!? ポンコツ式仕事術

 

ヨシダナギ/Profile

ヨシダナギProfile
ヨシダナギ
出典: FASHION BOX

(nagi yoshida)

1986 年生まれ。フォトグラファー。
2009年より単身アフリカへ。以来、独学で写真を学び、アフリカをはじめとする世界中の少数民族を撮影、発表。
唯一無二の色彩と直感的な生き方が評価され、2017年には日経ビジネス誌で「次代を創る100人」、雑誌『Pen』「Penクリエイター・アワード 2017」へ選出。「講談社出版文化賞」写真賞を受賞。
著書に、写真集『SURI COLLECTION』(いろは出版)、写真集『HEROES ヨシダナギBEST作品集』(ライツ社)、紀行本『ヨシダ、裸でアフリカをゆく』(扶桑社)、エッセイ『ヨシダナギの拾われる力』(CCCメディアハウス)がある。2020年には世界中のドラァグクイーンを被写体とした作品集『DRAGQUEEN ‐No Light, No Queen‐』を発表。
近年は、阿寒湖イコロシアター「ロストカムイ」キービジュアル撮影、山形県「ものづくり」プロモーションのムービーディレクション、タヒチ航空のプロモーションビジュアル撮影など国内外での撮影やディレクションなどを多く手がける。
公式サイト http://nagi-yoshida.com/

Text:ヨシダナギ
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Web edit:FASHION BOX

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