CEATECを語る(Vol.02):スタートアップ企業にとって自社の存在や技術をアピールする絶好の機会 | ceatec experience
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CEATECを語る(Vol.02):スタートアップ企業にとって自社の存在や技術をアピールする絶好の機会

2022年9月28日(水曜日)
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ゲスト:田路 圭輔 氏(株式会社エアロネクスト代表取締役CEO)
聞き手:鹿野 清(CEATECエグゼクティブプロデューサー)

CEATEC 2022が間もなく開催されます。CEATECではこれまで「Society5.0」の実現を目指し、新たな価値と市場の創造・発展に貢献、関係する産業の活性化に寄与することを目的に「CEATEC AWARD」を実施してきました。CEATECに初出展し、CEATEC AWARD 2018の経済産業大臣賞を受賞した株式会社エアロネクスト代表取締役CEOの田路圭輔(とうじ・けいすけ)氏をゲストにお招きし、同社の産業用ドローンの取り組みやCEATECへの思いを、CEATECエグゼクティブプロデューサーの鹿野清が聞きました。

ドローン産業の可能性が
注目されるきっかけに

鹿野 CEATEC 2022は3年ぶりのリアル開催となります。最初に、田路さんにとってCEATECはどんな存在なのか聞かせていただけますか。

田路 はい。2018年にCEATECへ初出展したのですが、産業用ドローンの技術開発と普及を担う当社にとって大変重要な年となりました。機体重心を制御する独自の構造設計技術「4D GRAVITY」がデビューした年であり、専門家以外の一般の方々にも当社の技術を知ってほしいとの思いからCEATECに出展しました。

株式会社エアロネクスト代表取締役CEOの田路圭輔氏(左)と鹿野清CEATECエグゼクティブプロデューサー

そして、思いがけず「4D Gravity搭載360°VR撮影用ドローン『Next VR』」でCEATEC AWARD 2018の経済産業大臣賞をいただき、当社の技術だけでなく、ドローン産業の可能性が注目されるきっかけになりました。CEATEC会場内の展示やコンファレンスでの講演などを通じ、他社との業務提携の話が進むといったようにビジネスが広がり、大きな力になっています。

CEATECは大規模な展示会なので、知名度が高い大手企業が多く出展しており、小さなベンチャー企業が出展しても埋没するのではないかと思われがちですが、むしろ逆です。知名度がそれほど高くないベンチャー企業こそCEATECを利用すべきです。自社の存在や技術をアピールする絶好の機会となります。CEATECは日本でトップレベルの展示会であり、そこに出展しないと何も始まらないと考えていたのです。

鹿野 私もCEATEC AWARD 2018の選考過程を見ていましたが、ベンチャー企業、スタートアップ企業の大臣賞受賞は初めてであり、私自身としても、非常にうれしかったことを今でも覚えています。

ここ数年、スタートアップ企業や大学の研究室などの出展が相次いでおり、今年は国内外から約100社・団体のスタートアップ企業が出展する予定です。主催者としては、スタートアップ企業のビジネスにつながるような機会を提供したいと考えています。田路さんはドローンの専門展示会などにも出展されていると聞いていますが、CEATECの来場者の印象について、どう感じていますか。

田路 私たちの想像以上に展示ブースでの質問のレベルが高く、何を見学するのか明確な目的を持って来場している方が多い印象です。ドローンの専門展示会は出展者、来場者ともに知り合いの関係者が多いのに対して、CEATECは初対面の人が圧倒的に多いので、こちらも質問に対して説明のしがいがあると感じています。

過疎の地方自治体の課題に
ドローン配送で取り組む

鹿野 CEATECでは「Society 5.0の実現を目指し、共創によって未来を描く」ことを掲げています。政府はSociety 5.0の一環として、デジタルの力で地方の社会課題の解決を図るデジタル田園都市国家構想を打ち出しています。エアロネクストは山梨県など地方を拠点に活動されていますが、どんな思いがあるのですか。

田路 当社の産業用ドローン技術には自信を持っていますが、実際に飛ばしてみなければ特徴を理解してもらうのは難しいのが実情です。そこで、飛ばしながら技術を磨ける場所がないか探していたところ、山梨県北都留(きたつる)郡小菅(こすげ)村にたどり着いたのです。

人口700名弱のいわゆる限界集落で、村長の理解を得て村に会社を作りました。そして、村で生活する方たちが買い物に困っていると聞き、過疎の実態を知ったのです。これは小菅村だけの課題ではなく、日本には800以上の過疎の地方自治体があります。小菅村を舞台にドローンの価値、可能性を探り、同じような課題を抱える地方の皆さんに見てもらえるのではないかと感じました。

鹿野 それが、ドローンによる配送ですね。

田路 ええ。ドローンを使った物流の実証実験はさまざまなところで行われていますが、私たちは単にドローンで物を運ぶのでなく、ドローンを使って運ぶ方がメリットのあるものを見つけることからスタートしました。そのため、軽トラックの配送事業の免許を取り、ドライバーが実際にトラックでも配送します。過疎地の場合、トラックでは1軒のお宅に配送するのにも時間がかかり、非効率な場所も少なくありません。

そうした場所はドローンを活用するというように、ドローンとトラック配送を組み合わせています。ドローンで配送した方が効率の良い場所が次第に分かるようになり、実装できたのです。2021年4月から、小菅村でドローン定期配送を開始し、現在は小菅村の協力を得ながら、大手物流会社と連携して新スマート物流に取り組んでいるところです。

地方の方や学生の皆さんも
参加しやすいCEATECへ

鹿野 すでに地方の過疎地でドローンを物流に実装しているところが素晴らしいと思います。CEATECの出展者、来場者はどちらかというと首都圏、都市部に偏りがちです。田路さんが地方自治体と連携しながら新スマート物流に取り組まれているように、Society 5.0に関わる新たな取り組みをCEATECの会場の内外で紹介できたらと考えています。地方に在住の方や学生の皆さんも参加しやすいようにオンラインの形式でもいいので、今後、チャレンジしてみたいと思います。

田路 小菅村のケースに限らず、地方は面白いと実感しています。なぜかと言うと、買い物や医療、教育など課題が明確だからです。都市部で生活している人たちには気づきにくい課題や不便さを感じている地方の方にも、リアルやオンラインの形でCEATECに参加していただく。

それにより、出展者と来場者の双方に新しい発見があり、課題や不便さに対する解決策が生まれる可能性があります。そうした意味でも、CEATEC 2022がリアル開催で復活するのは本当にありがたいことだと思います。

鹿野 田路さんのご指摘のように、CEATECと地方のさまざまな活動がうまく連携できれば、こんなにうれしい話はありません。貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

PROFILE

ゲスト
田路 圭輔(とうじ・けいすけ)

株式会社エアロネクスト 代表取締役CEO
1968年兵庫県姫路市生まれ。大阪大学工学部建築工学科卒業。1991年株式会社電通入社。主にセールスプロモーション領域に従事した後、新規事業開発を担当。1999年、電子番組表(EPG)に着目し、電通と米国ジェムスター社の合弁で株式会社インタラクティブ・プログラム・ガイド(IPG)を共同設立。代表取締役社長として電子番組表サービス「Gガイド」の普及・市場化を実現。2017年7月、ドローン産業の発展を知的財産(IP)で支援する株式会社DRONE iPLAB(DiPL)を共同創業し、取締役副社長に就任。2017年11月、DiPLとの資本業務提携を機にエアロネクストに参画、代表取締役CEOに就任。

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