クロノスイスはドイツの時計師ゲルト・R・ラングが古き良きスイス時計に惚れ込んで興したブランドです。すべての部品をスイスで製造し、クラシックな作品に集中したものづくりは国内外で高い評価を得ており、レギュレーターやスケルトンクロノグラフなど、クロノスイスの代名詞ともいえる銘品も生み出しています。この記事ではクロノスイスの歴史、魅力、代表シリーズ、銘品、おすすめのモデル5選を紹介します。
1.【ドイツ生まれの純スイス時計】クロノスイスの歴史
1-1.1983年ドイツミュンヘンでゲルト・R・ラングが創業
1983年ドイツミュンヘンでクロノスイスは生まれました。創業者のゲルト・R・ラング氏はドイツ北部のブランズウィックという街で生まれました。15歳のときに学校を辞めなければならなかった彼は時計製造が学べる会社に入り、4年間技術を学びました。
その後もっと時計を深く学びたいと考え、本場スイスへ渡りビエンヌにあるホイヤー社に入ることとなりました。28年間ホイヤー社に勤めましたがクオーツショックの影響により、新しい仕事を見つける必要が出てきました。機械式時計が売れなくなってしまった時代でまた仕事を探すことを考えたとき、ラング氏は機械式時計を復活させることを考えました。時代に逆行する彼の思想ですが、ブランパンやウブロを立て直したジャンクロードビバー氏も同じ考えをもっていたとされています。
そこで各社がクオーツショックによって機械式時計の在庫を整理していたものを買い集めました。特にクロノグラフのコレクターとして有名になるほどでした。そうして集めたヴィンテージムーブメントを搭載し、古典的なスイス時計への憧憬を形にしたのがクロノスイスでした。
1-2.2012年スイスの実業家オリバー・エブシュタインがブランドを買収
1988年初めてのバーゼルから好調だったレギュレーターを筆頭に、様々な銘品が生み出されていきました。時分針が中心ではなくそれぞれインダイヤルに配置されている世界初の自動巻きクロノグラフのカイロスクロノグラフ、特許取得済みのスプリットセコンドクロノグラフ、長方形ケースのカブリオ、エナメル文字盤のオレアなど、現在でも語り継がれている銘品ばかりです。
2012年スイスの実業家オリバー・エブシュタインが事業を買収し、新CEOに就任しました。本社兼アトリエはミュンヘンからスイスルツェルンに移し、一般開放しています。ギョーシェ刻印機やエナメル焼成機を備え、現代では珍しい手仕上げにこだわった時計作りに専念しています。ラング氏は相談役として運営にかかわっています。
1-3.2016年フライングレギュレーターの製造を開始
新しい技術の開発にも着手しました。2016年にはレギュレーター式のインジケータが文字盤上を浮遊する3次元のデザインとなるフライングレギュレーターを発表。レッドドットデザイン賞とGQタイム賞を受賞し、世界的に高い評価を受けました。フライングレギュレーターを基本にし、オープンギアやトゥールビヨンと組み合わせることで、さらに新しいデザインをつくりだしています。
運営の主導が代わってからもフライングレギュレーターやオープンギア、レセックなど新しいデザインや機構の開発に力を入れています。また、できるだけ内製化できるように技術の底上げも行っているようで、これからの動きが楽しみなブランドです。
2.クロノスイスの魅力
2-1.ドイツ生まれの古典的な純スイス時計
クロノスイスが生まれたのはクオーツショック全盛期で、機械式時計がクオーツ時計にとってかわられてしまっていた時期でした。そんな中クロノスイスは、スイスの古典的な機械式時計の素晴らしさを多くの人に知ってほしい、後世に残したいといった想い・クラフトマンシップで生まれました。
ドイツ生まれのゲルト・R・ラング氏はホイヤー社で時計師として働いていましたが、独立しブランドを立ち上げました。収集したヴィンテージムーブメントを搭載しており、デザイン・ムーブメント共に古典的なスイス時計となっています。
さらにドイツ生まれの気質も持ち合わせており、機能やムーブメントが最初にあり、それを美しく見せるためのデザインといった時計のつくり方をします。ケースいっぱいのサイズのムーブメントも同様の理由です。クロノスイスは古典的なスイス時計の美しさと、ドイツ生まれの時計としての機能性・実用性も考えられているブランドです。
2-2.レギュレーターやスケルトンクロノといった代表作
クロノスイスは伝統的なスイス時計を残していきたいと考えたゲルト・R・ラング氏により興されたブランドです。伝統的なスイス時計の中でも銘品と呼ばれるような時計を腕時計化、復活させたモデルが多く発表されました。
例えばレギュレーターは元々教会など多くの人が目にする時計のため時刻を見間違えないように開発された機構を腕時計化したものでした。レトログラード表示に注目したデルフィスやデジタル表示のデジターなど、機構の真新しさはないものの腕時計で楽しめる点で注目を浴び、レギュレーターはクロノスイスの代表作となっています。
2012年の買収以降もゲルト・R・ラング氏は相談役としてクロノスイスの運営に携わっています。それまでシリーズ展開せずに1つ1つのモデルで発表していましたが、買収以降はシリーズ化されグループ化と文字盤カラー違いの横展開をされるようになりました。しかし代表作のいくつかは今も継続して生産されていますし、買収以降に発表されたオープンギアはクロノスイスのDNAをしっかり受け継いでおり、今後の銘品の誕生が期待されます。
2-3.手仕上げによる年間5000ケの少量生産
クロノスイスは古き良き時代のスイス時計を継承することを目的として興されたブランドです。大量生産品ではなく機械式時計の最盛期である1950年代に生み出された時計のように一つ一つ職人の手作りによって生み出される時計の素晴らしさを伝えていきたいという想いです。
現在では工作機械や技術の進歩により機械での時計製造がメジャーとなっていますが、クロノスイスは手仕上げにこだわります。エブシュタイン夫妻が事業を買収後、アトリエをミュンヘンからルツェルンに移し、エナメル焼成装置およびギョーシェ彫刻機を備えています。
かつてエナメル文字盤は独特の風合いから特に古典的なスイス時計に好んで採用されていましたが、特殊な技法と設備が必要なことから現在ではエナメル文字盤を制作できるメーカーは数えるほどしかいません。ラング氏もオレアやクオーターリピーターなどに見られるようにエナメル文字盤への強い想いをもっていましたが、現行のクロノスイスはさらに文字盤への強いこだわりを感じさせます。
こうした哲学や製造方法からクロノスイスの年間生産本数は約5000本と言われています。熟練した時計師により、手間と時間をかけて制作されるのはもちろん、ブランド自体がそれらへの強い哲学と想いを持っていることがわかります。
3.クロノスイスの代表シリーズ
3-1.トゥールビヨン
トゥールビヨンは公式HPではトップに位置するシリーズで、クロノスイスにとって集大成ともいえます。デザインのベースはレギュレーターで、12時位置のインダイヤルでは歯車が見えるオープンギアで時針、中心で分針、6時位置でフライングトゥールビヨンが配置されています。
2023年1月時点で文字盤は4種類あり、CVDコーティングが施されたブルー、オレンジカラーのサンセット、パライバトルマリンを再現したパライバ、ブルーとブラックのシックなメテリオットとなっています。それぞれテーマごとにギョーシェを変えており、例えばサンセットは海で夕日を見た時のような鮮やかなオレンジが波打つギョーシェで再現されています。
ケースデザインにはかつてのクロノスイスのDNAが感じられます。ベゼルと裏ブタにはコインエッジ、玉ねぎ型リューズ、足が長くボルト留めのラグなど、一目でクロノスイスだとわかるデザインとなっています。
3-2.スケルテック
スケルテックはクロノスイスによる新しいスケルトンウォッチです。オーパスのようなムーブメントの複雑さと機械式時計の細かさを見せるのではなく、スケルテック用に開発された新型ムーブメントを使い、スタイリッシュなデザインに仕上げています。
このシリーズの開発で最初に行ったのは図面上でムーブメントの部品を可能な限り削減していくことでした。そうして開発された自社製ムーブメントC.304は166ケの部品点数で構成されており、スケルトン化された文字盤側から向こう側が見えてしまうほどです。X型のモノブロック構造で、リングに固定された香箱やてんぷの様子から、まるで宙に浮くようにも感じられます。
DLCブラックコーティングやCVDブルーコーティングなど、表面処理によるカラーバリエーションも豊富で、スタンダードなスケルトンウォッチとは違い近未来感のあるデザインが特徴です。
3-3.スペースタイマー
スペースタイマーは2022年に発表された新コレクションで、12時位置のインダイヤルからギアが見えるオープンギア機構と宇宙をテーマにしたデザインが特徴です。発表されたのはムーンウォークとジュピターの2モデルで、それぞれの宇宙を文字盤で表現しています。12時位置のインダイヤルでは時表示、中心で分と秒表示、6時位置のインダイヤルでは日付とムーンフェイズ表示となっており、レギュレーターのようなデザインです。
ムーンウォークはポップスのレジェンドによるダンスをモチーフに、宇宙空間での月面歩行をイメージした独自のギョーシェがデザインされています。チタン製の半球に描かれたムーンフェイズが目を惹きます。ジュピターは太陽系で最も大きく楽曲のモチーフになるなど、様々な創作活動でも知られる木製を文字盤に表現しています。巨大な木星は実はガスでできているのは知られていますが、エングレービングとナノプリント加工により微細な凹凸を施すことで文字盤にガスを表現しています。
3-4.オープンギア
オープンギアは12時位置に文字盤側からギアを見せるのが特徴のシリーズです。裏ブタからムーブメントの動きが見えるシースルーバックの考案者でもある創業者のゲルト・R・ラング氏らしい機械式時計を楽しむデザインです。12時位置のインダイヤルには時表示、中心で分と秒表示、6時位置でレトログラード式の秒表示となっています。レギュレーターやレトログラード表示を愛するクロノスイスらしさを最新のデザインで表現したシリーズといえます。
ギョーシェの表現が非常に多彩で、様々なテーマを文字盤で表現しています。時にはカメレオンやチョコレート、大波など多岐にわたります。それぞれでギョーシェの表現も変わっており、大波は曲線だけを使い、幅にもバリエーションをつけて海の揺れを表現しています。ジャングルは不規則で、細かい箇所と大まかな箇所にもバリエーションをつけて光の反射もバラバラにするなどジャングルの暗さを表現しています。
3-5.フライング
フライングの名の通り、飛んでいる、浮かんでいるデザインが特徴のシリーズです。レギュレーターのインダイヤルと中心を使った時分針表示のチャプターリング(文字盤外周、インダイヤル2つ)を持ち上げて固定し、宙に浮かんでいるように見せています。リングをビスで固定し、その上を針が動くため、風防にかなり近い位置で針が動きます。
文字盤に立体感を付けるデザインはどのブランドも工夫をこらしますが、針とダイヤルを持ち上げてしまうデザインは唯一無二といえるでしょう。クロノスイスは手ごたえを強く感じているのか、レギュレーターだけでなくオープンギアやトゥールビヨンなど多くのモデルに採用しています。汎用性が高く、どのデザインでも大きな邪魔をせず存在感を出せる機構です。
3-6.クラシック
クロノスイスのクラシックは他ブランドのクラシックとは違った雰囲気をもっています。そもそもクロノスイス全体がクラシックなデザインのため、クラシックの位置づけが異なるというのが正確です。
クラシックシリーズの大きな特徴は、アルファ針のモデルがラインナップされている点とレギュレーターに加え、ビッグデイトとレトログラード秒針のレセックがあることです。レセックはシリウスやかつての3針モデルのカイロスよりもギョーシェを見せることに焦点をあてたモデルで、ビッグデイトとレトログラード表示のクラシックを逸脱しない機能を搭載した一貫したデザインは、シリウスやレギュレーターに続く次世代のベースモデルを意識していると思われます。
3-7.シリウス
シリウスはおおいぬ座をあらわしており、ギリシャ語で光り輝くものといった意味をもっています。クロノスイスにとってのシリウスは時期によって様々な意味をもっています。
創業から2012年の買収までのシリウスはクロノスイスの中でも古典的なテイストを少し抑えめにしたシンプルモダンなデザインをあらわしていました。3針や時にはレギュレーターやクオーターリピーターなど、様々なモデルを発表するクロノスイスの軸足のような存在で、新機構や新しいデザインなどを受け止めて多くのモデルを擁したシリーズです。
2022年時点でのシリウスは少し意味が変わっているようで、かつてのオーパスとルナクロノグラフがシリーズ内にあるものの、シリウスデイトやクロノグラフはヘリテージのシリーズとなっています。クラシックにもヘリテージにも所属しないモデルの行先となっているような印象です。新しくできたシリーズはいずれも名前だけでどんな時計か想像できるようになっており、シリウスにはそれがありません。いずれ、シリーズとしてはなくなってしまうのではないかと思われます。
3-8.ヘリテージ
ヘリテージはクロノスイスの銘品の後継モデルが多くラインナップされているシリーズです。レギュレーターやシリウスなど、それぞれの全盛期よりも現代的にアップデートされたデザイン・ムーブメントで展開されています。
レギュレータージャンピングアワーなど銘品のテイストを色濃くもつ現行モデルもあり、創業初期頃のクロノスイスが好みのユーザーはヘリテージが好みに合うかもしれません。あるいはレギュレータージャンピングアワーを現代的に解釈したモデルもあり、シリーズの中でも幅広いモデルが展開されています。
4.【ドイツ生まれの純スイス時計】クロノスイスの銘品
4-1.レギュレーター
レギュレーターはクロノスイスを代表する銘品の一つです。時針、分針、秒針がそれぞれ別の軸で動くデザインで、多くが12時位置のインダイヤルと中心、6時位置のインダイヤルで時針、分針、秒針の役割を果たすことが多いです。
元々は針が被って時刻の読み取り間違いを起こしにくいデザインとして、教会など公共の時計に採用されていました。視認性の高さから、ダイバーズウォッチのデザインに採用するブランドもあります。ゲルト・R・ラング氏は機能性はもちろん、古典的スイス時計としての品格からレギュレーターを腕時計として開発しました。
クロノスイスの代表作ともいえるレギュレーターRef.1223は、現行でいうところのレギュレーターマニュファクチュールやグランドレギュレーターに近いシンプルなデザインで、ヴィンテージウォッチが現代に蘇ったような美しさをもっています。また、クロノスイスでは多くのレギュレーターを開発しているため、時にはジャンピングアワーが時針の代りになったり、秒針がレトログラード表示になることもあります。
現行では、オープンギアやフライングに見られるようにレギュレーターを基本デザインに展開しており、クロノスイスにとってのレギュレーターの存在感の大きさを感じさせます。
4-2.デルフィス
ギリシャ語でイルカを意味するデルフィスはイルカのように弧を描くレトログラード表示の分針とジャンプする時針が特徴です。6時位置の秒針が一周するごとにレトログラードの分針が一目盛り進み、60分になったときに0まで一瞬で戻ります。同時に12時位置の窓であらわす時針表示は次の時へジャンプして切り替わります。
機構に目を奪われがちですが文字盤全体に施されたギョーシェも圧巻で、スモールセコンドから波紋のように広がっています。ベゼルと裏ブタのコインエッジや玉ねぎ型リューズなど、機構・デザインともに古典的に仕上がっており、伝統的で高い品質のスイス時計を代表する一本です。
4-3.オレア
オレアはホワイトエナメル文字盤を採用したシンプルな3針モデルです。既に廃盤となってしまっているモデルです。最近ではエナメル文字盤のメーカーが激減してしまい、製品化できるブランド・シリーズは非常に限られたものとなっています。オレアはそうなる前の古典的スイス時計としてエナメル文字盤の美しさを伝える伝道師的な時計でした。
コインエッジベゼルは変わらず、リューズは小ぶりな36mmケースサイズに合わせて小さめでカボションが付いています。エナメル文字盤に描かれたローマンインデックスと例るうぇい、ブレゲ針などシンプルな機能ながら、クラシックなスイス時計のスペックを十分に味わえる一本です。ムーブメントは1950年代に活躍していたマーヴィン700を搭載。ゲルト・R・ラング氏が収集していたものをベースに仕上げして搭載したもので、これもまた貴重です。
4-4.オーパス
オーパスはフルスケルトンのクロノグラフモデルです。海外ではオーパス、日本ではヴィータと呼ばれており、文字盤外周の6時位置にはクロノスイスの管理番号、モデル名(OPUSもしくはVITA)、個体番号が書かれています。インダイヤルもスケルトン化されており、12時位置と6時位置はクロノグラフの積算計、3時位置は日付表示、9時位置は秒針となっています。
ブルースチールのブレゲ針、ベゼルと裏ブタのコインエッジ、玉ねぎ型リューズなど伝統的なスイス時計のデザインがベースになっています。ムーブメントがデザインを決めるのが主流のドイツらしい考え方で、エングレービングされたケースいっぱいのムーブメントをフルスケルトンで楽しめます。
4-5.デジター
デジターはデジタル表示が特徴のモデルです。機械式時計のデジタル表示とは針ではなく、窓からの表示をあらわすもので、12時位置の窓では時針をあらわすジャンピングアワー、中央ではダイヤルが回転して時刻を示す分針、6時位置では同じように秒針となっています。
手首に馴染むカーブと長いラグのスクエア型のフレアードなケースを採用しており、文字盤にはデジタル表示だけで装飾はなくともラグジュアリーな雰囲気に仕上がっています。ホワイトゴールド、ピンクゴールド、黒文字盤など展開されていた種類や時期は限定的だったものの、確かな存在感を示したモデルです。
5.クロノスイスのおすすめモデル5選
5-1.ルナ クロノグラフ Ref.CH7523L
Ref.CH7523Lは伝統的なトリプルカレンダームーンフェイズクロノグラフです。古典的なスイス時計の要素がたくさん散りばめられています。12時位置のインダイヤルはクロノグラフの積算計、3時位置には顔が描かれたムーンフェイズ、6時位置にクロノグラフの積算計、9時位置には秒針、文字盤外周にはポインターデイトが配置されています。
時分針は先端手前に丸が付いたブレゲ針、細かく溝が切られたコインエッジベゼル、大ぶりな玉ねぎ型リューズ、文字盤はギョーシェで装飾されておりクラシックなスイス時計の様式が詰め込まれています。コインエッジのベゼルと裏ブタではさまれたミドルケースはヘアライン仕上げになっており、仕上げ方法の差で立体感を見せています。ストラップの固定はボルトで行われているので、精密のマイナスドライバーで交換が可能です。
5-2.レギュレーター 30 リミテッド Ref.CH2813-CB
Ref.CH2813-CBはクロノスイス創業30周年記念に制作されたモデルで、世界限定300本のみの生産となっています。クロノスイスが有名になるキッカケとなったレギュレーターを応用させたデザインで、時針の代わりに12時位置の窓で表示するジャンピングアワーを採用。分針と秒針とそれぞれ独立した軸で動いています。ジャンピングアワーは切り替わりのタイミングをよく見てみると、ばねで制御しているのがわかるハネ感があります。
クロノスイスの特徴である純スイス時計といったデザインで、コインエッジのベゼル、大き目で溝が切られた玉ねぎ型リューズ、ブルースチールの針など王道のデザインを使いつつ、変化型レギュレーターとエッジが効いています。ムーブメントは自動巻きとしては定番のETA2892-Aを搭載しています。
5-3.オーパス クロノグラフ Ref.CH7522SR
Ref.CH7522SRはクロノスイスの代表的なスケルトンクロノグラフモデルです。海外ではオーパス、日本ではヴィータ(イタリア語で生命の意味)と呼ばれており、スケルトン文字盤から見えるムーブメントの繊細さとインパクトが魅力です。インダイヤルもスケルトン化されており、12時位置と6時位置は積算計、3時位置は日付、9時位置は秒針となっています。文字盤外周の6時位置にはクロノスイスの管理番号とモデル名(OPUS)、個体番号が書かれています。
ベゼルやリューズはゴールドで、ミドルケースとラグはステンレスのコンビとなっています。コインエッジのベゼルと裏ブタ、玉ねぎ型リューズ、ブルースチールのブレゲ針などスイス時計らしさがよく出たデザインで構成されています。300ケものパーツ点数で組み上げられたムーブメントをフルスケルトンで観察できる楽しみがこの時計のポイントです。
5-4.スペースタイマームーンウォーク Ref.CH-9343.2-GRBL
Ref.CH-9343.2-GRBLは2022年発表の新コレクションスペースタイマーの一本です。12時位置のインダイヤルでギアを見せるオープンギア機構が宇宙をテーマにデザインされています。12時位置のインダイヤルでは時針、中心で分と秒表示、6時位置では日付表示とムーンフェイズ表示となっています。世界限定生産50本です。
ムーンウォークとはポップスのレジェンドが得意としたダンスのムーンウォークをモチーフに、月面を歩くような独特な凹凸がギョーシェで表現されています。チタン製の月半球型のムーンフェイズにも微細な凹凸が彫られており、宇宙空間を想起させます。12時位置の時表示と6時位置の日付表示のサークルには新素材「ITR2」が採用されています。カーボンナノチューブを使用した機能性樹脂で、ステンレススチールの1/8の重さが魅力です。新素材に注目しているブランドも採用を開始しています。
5-5.オープンギアフライングトゥールビヨンサンセット Ref.CH-3123-ORBL(2022新作)
Ref.CH-3123-ORBLは2022年新作として発表されたオープンギア仕様のフライングトゥールビヨンです。世界限定生産15本のみとなっています。フライングトゥールビヨンはすべてルツェルンのアトリエで制作され、文字盤のギョーシェは職人の手作業にこだわり抜いています。12時位置のインダイヤルが時針、中心が分針となっています。
サンセットの名の通り、沈む夕日を描いた文字盤となっており、オレンジカラーの文字盤に波打つさまが職人の手作業で描かれています。ムーブメントのダークブルーとオープンギアで見える歯車、トゥールビヨンの脱進機がの鮮やかな調和を生み出しています。
6.まとめ
クロノスイスについてまとめました。現在のクロノスイスはラング氏主導の時代よりも現代的なデザインが増えており、一見かつてのクロノスイスとは違っていると思う方もいるかもしれません。しかしよくよく見てみると、かつてのクロノスイスの銘品のDNAを確かに受け継いでおり、ラング氏へのリスペクトを感じさせるデザインが多く見られるのがわかります。クロノスイスのモットーはぶれずに現代的なデザインに力を入れているので、以前のクロノスイスをご存じの方にこそ一度手にとってみてほしいと思います。