| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-268 (Poster presentation)
東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故から10年を迎え、既に事故による避難指示が解除されてから三年以上になる地域が少なくない一方で、帰還困難区域の大部分は未だ避難指示が解除されていない。それらの地域の生物多様性の変遷を追跡し比較することは、避難指示とそれに伴う営農停止などの人間活動の変化が生物多様性・生態系サービスに及ぼす影響に関する知見を得ることにつながる。筆者らは避難指示とその解除がハチ・ハエ類等の益虫・害虫を含む飛翔性昆虫に及ぼす影響を検討するため、避難指示区域内とその周辺の全57地点において、衝突板トラップを主としマレーズトラップを補助的に用いたモニタリング調査を行ってきた。その結果、2015年から2019年にかけて衝突板トラップで合計267サンプル、マレーズトラップで合計72サンプルを得ることができた。2015年時点では避難指示区域内(帰還困難区域、居住制限区域、避難指示解除準備区域)の調査地点は24地点であったが、2019年までに帰還困難区域内の6地点を除く18地点において避難指示が解除されていた。これら5年間のサンプルのデータを統合し、避難指示とその解除の効果をベイズ統計モデリングによって解析した結果、避難指示区域内のみならず、指示が解除された地域でもハナバチ類の密度が高くなる傾向があること、避難指示の効果との差をとってもなお避難指示解除の正の効果が得られること等が示された。本発表では個別の昆虫種への影響等も踏まえながら、避難指示とその解除が飛翔性昆虫群集に及ぼす影響に関して考察する。