小林清親 東京名所図 2012年(平24)二玄社刊。《謎解き浮世絵叢書》の一冊。 幕末の北斎や広重の大人気のあと、明治維新以降の日本の風景画(版画)については、せいぜい文明開化の様子を描いた錦絵ぐらいしか記憶していない。 偶然にもNDLイメージバンクの…
大岡越前守:滴翠軒 1911年(明44)金正堂刊。袖珍講談文庫。 作者名の滴翠軒(てきすいけん)とは京都東本願寺に付属する庭園渉成園にある茶亭と同名であり、版元の都合で便宜的に使われた筆名ではないかと思われる。この本は、大阪の二つの版元(金正堂と…
からみ合い:南条範夫 1959年(昭34)7月~12月、雑誌「宝石」連載。 1959年(昭34)光文社、カッパ・ブックス。 1973年(昭48)講談社、現代推理小説大系 16巻 所収。 1981年(昭56)徳間文庫刊。 巨額の遺産相続をめぐる人間模様を描く、しっかりと構成さ…
怪談驟雨:蛙声堂主人 1889年(明22)吉田博声堂刊。 (くわいだん・にはかあめ)副題として「一名:四つ手の尼」と出ているので最初から化物譚だろうと想像がつく。作者は蛙声庵(あせいあん)主人となっているが、京都の新聞社の作家記者と思われる。当初…
悪霊の群:山田風太郎&高木彬光 1956年(昭31) 大日本雄弁会講談社刊。 これは珍しい山田風太郎と高木彬光の合作推理小説だった。作家が一人だけで書き上げるのとはかなり勝手が違ってくるので、感覚的にはもどかしい点もあっただろうと思う。登場人物の使…
新聞小説の周辺で:川合澄男 1997年(平9)学芸通信社刊。 筆者は全国各地の新聞社に学芸・文芸の分野での記事情報を配信している学芸通信社の二代目社長だった人物。特に新聞小説の連載に関しては、地方紙では個別に作家との交渉をとるよりも、こうした通信…
神変呉越草紙:白井喬二 1926年(大15)衆文社刊。河野通勢・画。 1969年(昭44)学芸書林刊、定本白井喬二全集6、御正伸・画。 1970年(昭45)番町書房刊、日本伝奇名作全集1、小島剛夕・画。 神変呉越草紙:白井喬二、御正伸・画 典型的な伝奇小説だろう…
黄薔薇:三遊亭円朝 1887年(明20)金泉堂刊。 1926年(大15)春陽堂、円朝全集 巻の七 「欧州小説・黄薔薇」(くわうしやうび/こうしょうび)と銘打っての口演速記本なのだが、当時まだ聴衆や読者には西欧の事物について見聞きしたことがない人がほとんど…
裸女と拳銃:鷲尾三郎 1956年(昭31)3月~5月、新聞「内外タイムス」に連載。原題は『地獄の神々』 1959年(昭34)同光社刊。 1959年(昭34)春陽文庫。 この作品は1958年に日活で映画化されたときのタイトルが「裸女と拳銃」であったため、以後の刊行では…
薔薇夫人:竹田敏彦 1952年(昭27)向日書館刊。 1957年(昭32)東方社刊。 旧華族の邸宅を買い取って高級中華料理店「薔薇園」を営む女主人の葉山貴志子の謎めいた行動が興味を引く。しかしながら物語はいきなり戦前の中国に舞台を移す。青島で日系のマッチ…
池田大助捕物日記:野村胡堂 1953年(昭28)同光社磯部書房刊。11篇所収。 1952年(昭27)雑誌「読切倶楽部」一部掲載。 野村胡堂と言えば「銭形平次捕物帳」が代名詞のようになっているが、その外に「池田大助」の捕物帳のシリーズがある。この池田大助も…
新聞小説史(昭和初期):高木健夫 1976年(昭51)11月~1978年(昭53)2月「新聞研究」304号~319号に〈昭和初期〉を連載。 1978年(昭53)3月~1981年(昭56)4月「新聞研究」320号~357号に〈昭和中期〉を連載。 明治篇から通算すると131回の連載だっ…
不思議な巷:大河内常平 1956年(昭31)あまとりあ社刊。 大河内常平(おおこうち・つねひら、1925~1986)は探偵作家として戦後の10数年間のみの活動しかなく、あまり記憶に残る大作もなかったので忘れ去られている。これは初期の短編10作を集めたもの…
犯罪蒐集狂:高木彬光 1955年(昭30)雑誌「小説倶楽部」に「顔のない女」を掲載。 1980年(昭55)桃源社刊。(ポピュラー・ブックス)全6篇。 犯罪蒐集狂:高木彬光、長尾みのる・画 表題作を含め、全6篇の短編集。『犯罪蒐集狂』は侠客を先祖に持つ探偵…
破魔弓伝奇:土師清二 1939年(昭14)12月~1940年(昭15)5月、読売新聞夕刊に連載。 1956年(昭31)東方社刊。 1958年(昭33)雑誌「小説倶楽部」に縮約版を掲載。 江戸中期に勤皇思想を鼓吹した儒学者山県大弐の疑獄事件を絡めて、由井正雪の子孫を自認す…
外相の奇病:神秘探偵、永代静雄 1919年(大8)実業之日本社刊。 永代静雄(ながよ・しずお、1886~1944)は作家としてよりも、明治文学史研究における田山花袋の『蒲団』の登場人物のモデルの一人として注目され、その生涯が「微に入り細に入り」詮索され続…
ミイラの招待:戸川幸夫 1958年(昭33)和同出版社刊。 動物文学者としてのほうが有名な戸川幸夫(1912~2004)は戦後昭和期に幅広い分野で作家活動を行った。この作品は探偵活劇仕立てになっている。 東京の奥多摩にある日原鍾乳洞を見学に行った仲良し三人…
切れ長の眼:田村泰次郎 1958年(昭33)和同出版社刊。 1958年(昭33)2月、雑誌「小説倶楽部」に『昼間の女』を掲載。 1958年(昭33)6月、雑誌「小節倶楽部」に『夏の花』を掲載。 1958年に雑誌「小節倶楽部」や「小説新潮」に掲載された連作風小品をまと…
火焔を蹴る:林禮子 1928年(昭3)改造社刊。表題は『男』、321頁、伏字なし。 1930年(昭5)万里閣書房刊。改訂15版。『火焔を蹴る』422頁、伏字あり。 1948年(昭23)白鯨社刊。表題は『男』、320頁、伏字なし。木村毅・序文。 1957年(昭32)洋々社刊。表…
金四郎桜:山手樹一郎 1957年(昭32)1月~1958年(昭33)7月、雑誌「小説倶楽部」連載。 1958年(昭33)桃源社刊。 いわゆる「金さん」もの。江戸町奉行として歴史に名を残す遠山金四郎が青年時代に家を飛び出して、町屋に住み、遊び人として賭場に出入りし…
美しき果実:十和田操 1947年(昭22)3月~1948年(昭23)5月、雑誌「令女界」連載。 1948年(昭23)、真光社刊。 美しき果実:十和田操、三芳悌吉・画1 終戦直後、大陸からの引揚者たちの群れの中に幼い男の子を連れた若い娘がいた。彼女の名前は美雨(ミグ…
タケノコ夫人行状記:宇井無愁 1955年(昭30)和同出版社刊。 宇井無愁(うい・むしゅう、1909~1992)は戦後昭和期の大阪の劇作家および小説家。筆名がフランス語の「ウィ、ムッシュー」(Oui, Monsieur.=はい、旦那様)から来ているのは誰でもわかる。主に…
浅香主水捕物帳:佐々木杜太郎 1953年(昭28)春陽堂書店刊。捕物小説全集の内の一つ。全17篇。 1949年(昭24)2月、雑誌「富士」に「伝七油地獄」を掲載。 1951年(昭26)桃源社刊、捕物小説傑作集に「心中富士講」を所収。 佐々木杜太郎(もりたろう、1906…
殺人環状線:島田一男 1956年(昭31)東方社刊。 1956年(昭31)1月、雑誌「小説倶楽部」に「東京犯罪地図」を掲載。 1961年(昭36)春陽文庫刊、表題を「信号は赤だ」に変更。 新宿警察署の中老の庄司部長刑事(デカチョー)とその部下たちの活躍を描く7篇…
白い蛇赤い蛇:舟橋誠一 1932年(昭7)11月~ 都新聞連載。 1932年(昭7)有光社刊、「純粋小説全集」第9巻所収。 1933年(昭8)紀伊国屋出版部刊。 1956年(昭31)8月、雑誌「小説倶楽部」に縮約版掲載。 1956年(昭31)三笠書房刊。 白い蛇赤い蛇:舟橋誠…
神出鬼没園田探偵(第一編):森田芝村 1913年(大2年)弘学館刊。 作者の森田芝村(しそん)については生没年不明。明治末期から大正にかけて「美文的模範書翰」などの文章読本の著者だった記録がある。伊藤秀雄の『明治の探偵小説』でも、探偵小説の黎明期…
旅人の喜び:庄野潤三 1956年(昭31)6月~1957年(昭32)3月、雑誌「知性」連載。 1963年(昭38)河出書房新社刊、Kawade paper backs, 28 戦中期の女学生の体験を思い出しながら、戦後の復興期を一家庭の主婦として生きる貞子の目を通して綴られる日常風景…
犬姫様:陣出達朗 1951年(昭26)9月~1952年(昭27)6月、雑誌「小説倶楽部」連載。 1954年(昭29)文芸図書出版社刊。 1958年(昭33)同光社出版刊。『鞭を鳴らす鬼姫』と改題。 犬姫様:陣出達朗、成瀬一富・画 江戸城大奥の中臈夏乃が所有する満月丸とい…
緋鹿子捕物草紙:村上元三 1951年(昭26)新小説社刊、新小説文庫(第109、110)全2巻。 1951年(昭26)桃源社刊、捕物小説傑作集に「まぼろし燈籠」を所収。 1953年(昭28)文芸図書出版刊。『夜叉頭巾ーお吟捕物秘帖』と改題。 これも女捕物帳の一つで、…
鬼神のお松:松林円玉 1899年(明32)今古堂刊。 松林円玉(しょうりん・えんぎょく、1866~1940)講釈師。明治後期に多くの口演速記本を出している。二代目松林伯円の弟子で、1889年に23歳の若さで五代目松林円玉を襲名する。のちに改名して悟道軒円玉とな…