日本は先進国だとされている。しかし実体経済を見た場合、本当にそうなのだろうか。すくなくとも、楽観的な見方をすることは難しいだろう。こうした中にあって、日本は先進国として脱炭素を率先して進めていくことになる。問われるのは、現在の日本が脱炭素社会への移行に対し、十分な実力があるのかどうかだ。日本再生可能エネルギー総合研究所の北村和也氏はどのように見ているのだろうか。
日本の経済力が凋落(ちょうらく)している。
国民にとって、長期にわたる日本経済の停滞は見たくない現実であったが、このところ新聞やテレビなどマスコミが次々と特集を組んで表出している。日経新聞は「安いニッポン」という名の記事で各現場での購買力低下の実態を明らかにして、危機を訴えた。
今回のコラムでは、日本経済の落ち込みが脱炭素実現に及ぼす負の影響を考える。
よく使われる統計の一つにOECDによる各国の平均賃金比較がある。日本の賃金はOECD内の順位がどんどん落ち、OECDの平均以下どころか、先進7ヶ国ではイタリアのギリギリ前の6番目となった。トップのアメリカがおよそ790万円なのに対して439万円(OECD内23位)と、半分強程度にしかならない(現在の円換算1ドル=114円)。また、韓国は478万円で4年前に日本を抜いている。
OECD各国の賃金比較 出典:OECD Average wages Total, US dollars, 2020
先日のある報道番組では、出演した経済学者が「日本はもはや貧乏国である」と断言した。「人手不足解消を外国人労働者でカバーできると勘違いしているがこんな賃金水準の日本に働きに来ることは期待できない。逆に日本人が中国などに出稼ぎに行く時代が来る」と嘆いた。
もうひとつ、わかりやすさからよく用いられる数字が、各国でビッグマックがいくらで売られているかを示す「ビッグマック指数(BMI)」である。ある別のニュース番組でも使われていた。
為替レートで変動するが、7月末時点では、ビッグマックの値段はアメリカで621円、日本では390円で大きな差がある。このほか、ユーロ圏では552円、韓国は440円と高めで、ちなみに中国は380円とほぼ同等であった。
日本はここまで物価の安い国になったのだと経済力の低下を私が感じていると、その番組のコメンテーターがこう解説した。「アメリカは給料が高くても物価が高く、賃金が低くても日本では安く買えるのだから、問題ない」と。
確かに、ビッグマック指数BMIは、各国の購買力平価を見ることによって、通貨が適正に評価されているかどうかを判断するものである。よって、このビッグマックの値段の単純な比較では一応日本の円がかなり過小評価されているという結論になる。
しかし、この問題はそう簡単にはいかない。
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