2024-01-01から1年間の記事一覧 - ecipslla’s diary

2024-01-01から1年間の記事一覧

2024/12/10

女たちの友情なんて、アルミ鍋みたいなものなんですって。ぐらぐらと煮えくり返ったと思う間もなく、ひんやりと冷めてしまったりする。 —ハ・ソンラン「隣の家の女」

2024/11/02(ルヴァン杯決勝)

からっと透き通った青空の下、等々力で観た準決勝2ndレグは一生忘れないだろうと思った。その日を経て、初めて観た決勝戦は、どんなものとも比べることのできない、苛烈な感情と記憶を植えつけられた試合だった。この先何があっても忘れるものか。 声という…

2024/10/21

モーリス・ドニを観に行った昨日。夕映えの中のマルトの前で立ち尽くした。彼女は、親密な関係の中で許される疲労と憂いを帯びた表情で佇んでいる。ブラウスの柄や花瓶に生けられた生花、額縁に至るまで、薄い夕焼けを丹念にまとっている。夕焼けに包まれた…

2024/10/17

低いところでたなびいている雲がぼやぼやと月を隠していた。しばらく見ていると雲の一連はどんどん遠のいていって、月が本当に明るかった。まっすぐ見ていられないくらい眩しい夜。 随分長い時間をかけて自分の振れ幅を見ている。傾いたりあらぬ方向を向いた…

2024/10/15

中島らもの墓を訪ねる。彼は死んでいたけれど死んでいなかった。下の方の、不思議なところから声が聞こえていた。とにかく行かなければいけない、今すぐ出発しなければいけない、という思いに駆られて旅に出ることに決めた。黙って側にいてくれて、一緒に来…

2024/10/10

知らない土地に来て、初めている場所で酔い始めている。色々な風景を見た。日常の延長のような移動。初めて降りる駅前の街並みを歩いて思うことや、盗み聞きをして思うことなど。できるだけ色々なことを、率直に書いておきたい。それが自分を引き受けること…

2024/10/09

iPhoneを縦向きにしたまま、小さい画面でゴールシーンのハイライトを見る。ペナルティエリアの外からミドルシュートを打つ人に見とれる。腕を使ってバランスを取り、右脚を振るモーション。身体全体がしなやかな道具のように見えた。 裸足で床を歩くと冷たい…

2024/10/08

時代は裏切りも悲しみもすべてを僕にくれる。 素敵なものが欲しいけどあんまり売ってないから好きな歌を歌う。 冬みたいに寒かった日。 4年前につくった俳句を見つけた。 ・・・ おしなべて光る葉牡丹夕まぐれ よつゆびの生き物昏き台東区 川沿いに空箱湿り…

2024/10/07

枯れ葉、お湯、焚き火、蝋燭、煙、毛布、バニラ、メンソール、苔、夕方、小雨、そういうものを全部まぜて一緒くたにしたものが秋。甘く重くあたたかい季節。 引き受けることと放り出すことについて考えていた。自分を放り出すような生き方をしていて、それが…

やわらかい生活

あなたは忘れたころにやってきて、私をとりまくやわらかい生活を壊す。少し唇を歪めて、どこか諦めたように笑みを浮かべて、淡々と崩していく。繊細なつくりの部品を緻密に結合させた構築物は、私が日々少しずつ組み立てたものだ。私は生活が破壊される様子…

美術学校を卒業した直後の夏のこと、気持ちが沈み、仕事も無く、今後何をしていったらよいのかもわからないそんな時に、2冊の本を読みました。1冊はシュテファン ツヴァイクの「マリー・アントワネット」、もう1冊はヴィンセント クローニンの「ナポレオ…

皮膚/選択

あばらに刻まれた筆記体にみとれて、思わず人差し指でなぞってみたとき、どうしてタトゥーを入れないのかと、いぶきが不思議そうに聞いてきたことがあった。 「入れたいと思ってから、五年くらいは経ってるかな」 「もう入れればいいじゃん。それ、一生入れ…

初めて読んだのがどれだったのか、もう思い出せないや。 好きな作家を聞かれたら必ず「ポール・オースターと金井美恵子」と答えていた時期があった。 youtu.be 偶然の音楽が映画化されているって教えてくれた人や、一緒に新文芸坐でスモークを観た人は元気だ…

家父長制あるいは権威主義、その他イデオロギーによる暴力に中指を立て続けるためのメモ

権威や暴力や国家に抵抗する力を失くしたときのために、または誰かのために。(随時更新する。気が向いたら感想も書きます) books.bunshun.jp www.heibonsha.co.jp www.hakusuisha.co.jp bensei.jp www.iwanami.co.jp honto.jp www.hayakawa-online.co.jp b…

よく目をこらすと幾層にもベールがかかっていそうだった。そういった重厚な堆積を感じた。そのまま琥珀色の液体に唇をつけると、鼻腔に抜ける華やかさと、鉛のように胃に落ちる重たさが同時にひろがって、眼球が燃えるような、あるいは鮮やかな色がつくよう…

急に大きな出来事の中に放り込まれて立たされると、それまで連綿と考え続けてきたことが急に別の側面を見せ始めるというか、自分の中でパラダイムシフトが起こったような気になる。体験したことと体験していないことの間には多分どうしたって埋められない境…