2021-05-01から1ヶ月間の記事一覧 - ecipslla’s diary

2021-05-01から1ヶ月間の記事一覧

idfjb.

ここであなたのことを何度も書いていることに気づいているでしょう? もっともわたしが見ていたあなたもあなたが見ていたわたしも、それぞれが自分を映した虚像だったわけだから本当にあなたのことを書いているという自信はないけれど。自分を見ているような…

zhboa.

人間は欲深い生き物だ、とはよく言ったもので、あの人の中にはわたしの手で抱えきれないほどの欲しいものが渦巻いていることがはじめからわかっていた。誰ひとり叶えられっこない完璧な夢をすべて手渡されてしまったらたまらない。だからわざと、捨てるわけ…

xwcae.

「コーヒー」と彼女が言うのを初めて聞いたのは京都に降りた早朝だった。安い夜行バスで凝り固まった頭蓋に聞き慣れない抑揚が響いたままひっかかるように残っていた。もしかしたら北の訛りかもしれないと思いを巡らせながら、ふたりとも縁のない土地で、生…

lfhkb.

あと少し手が届けば全部がわかるのに決して到達することのない夜は時折訪れる。昨日から今朝まで夢中になって読んでいたのはウラジーミル・ソローキン『マリーナの三十番目の恋』、男とのセックスでオーガズムを得たことも女を心から愛したこともないレズビ…

egksn.

電車に乗ると隣には若い男女が座り、つい聞き耳を立てる—二人とも関西の訛りがあり、付き合ったり寝たりはしていないがお互いにそれなりの好意は持っている様子。職場の同僚か。男はしきりに寒くはないかだとか女の体調を気遣う。女は声優か何かの推し活に勤…

imfrb.

気が張っていた1週間だった。明るい夕方に仕事を切り上げて天気雨の中を歩いていった。赤信号で立ち止まって見上げると、ぼやけたビニール傘に幾粒も雨粒が乗っていて、灰色の雲が立ちこめて、ぶつ切りになった光の白さがまぶしかった。じっとりと水分を含…

klgob.

変化というものは物事の内部からゆるやかにわきおこる進行なのであり、例えば戦争に敗れたときのようにすべてが翻ることはほぼ起こらないのだろうと考える一日。後者であればわかりやすい—「今日から変わりました」というようないわば公的な報告のようなもの…

dfghj.

暑い日曜日だった。洗濯物を取り込むと茶褐色の蛾がとまっていた。翅は厚く、じっと動かなかった。咄嗟に窓を開けて思い切りふると同じ色をした鱗粉だけが服に残った。その粉も手で叩いて払い落とし、窓を閉めた。 少し前の夕方に玄関を開けると大水青が落ち…

Nocturne Op.9 No.1

Chopin: Nocturne No.1 In B Flat Minor, Op.9 No.1 - YouTube ショパンでいちばん好きなこの曲のはじまりは6つの単音がなめらかに連なったのちに7つ目の音から深い和音になるのだけれど、その瞬間に頭の中が真っ白になって胸がつかえて息ができなくなる。…

Tehillim

youtu.be この曲で行われていることとはひとつのおおきな構成物を解体したのちの素材に新たな側面を見出し編集すること、そしてその行為が脱構築(ミーハーで便利な言葉!『愛がなんだ』を観て以来に言った)といえるだろうか? ひとつの方向に巻きとられな…