AtCoder ABC 107 D - Median of Medians (ARC 101 D) (黄色, 700 点) - けんちょんの競プロ精進記録

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AtCoder ABC 107 D - Median of Medians (ARC 101 D) (黄色, 700 点)

 K 番目の値を求めよ」「メディアンを求めよ」といった問題では、二分探索法が有効なことが多々ありますね。

問題へのリンク

問題概要

長さ  N の数列  a_1, a_2, \dots, a_N が与えられます。

この数列の連続する区間として考えられるものは  {}_{N+1}{\rm C}_{2} 個あります。そのそれぞれの区間について、区間内の値のメディアンをとります。

このようにして得られる  {}_{N+1}{\rm C}_{2} 個の値のメディアンを求めてください。

制約

  •  1 \le N \le 10^{5}

二分探索へ

次の判定問題を解くことを考えてみましょう。この判定問題に対する答えが "Yes" となる最小の  x が答えとなります。


数列の連続する区間  \lbrack l, r) ( 0 \le l \lt r \le N) であって、その区間内の数値のメディアンが  x 以下であるようなものが  {}_{N+1}{\rm C}_{2} / 2 個以上存在するならば "Yes"、存在しないならば "No" と判定してください


判定問題を解く方針

まず、各数列の値に対して、次の変換を施して考えましょう。

  • x 以上の値は、1 に置き換える
  • x 未満の値は、-1 に置き換える

このとき、

区間  \lbrack l, r) ( 0 \le l \lt r \le N) のメディアンが  x 以下
区間  \lbrack l, r) において 1 の個数が -1 の個数より少なくない
区間  \lbrack l, r) の総和が 0 以上

と言い換えられます。よって、数列の値を 1, -1 に置き換えた状態で、「総和が 0 以上であるような区間」の個数を数えて、それが  {}_{N+1}{\rm C}_{2} 個以上であるかどうかを判定する問題へと帰着されました。

累積和をとる

さて、区間の和に関する性質は累積和をとると扱いやすいです。

置き換えた数列を改めて [tex: a_{0}, \dots, a_{N-1}} として、

  •  S_{0} = 0
  •  S_{1} = a_{0}
  •  S_{2} = a_{0} + a_{1}
  •  S_{3} = a_{0} + a_{1} + a_{2}
  •  \dots
  •  S_{N} = a_{0} + a_{1} + \dots + a_{N-1}

としましょう。このとき、数列  a_{0}, \dots, a_{N-1} における区間  \lbrack l, r) の総和が 0 以上という条件は

S[r] - S[l] >= 0
S[l] <= S[r]

と言い換えられます。ここまで来るととても明快です。判定問題は最終的には次のように言い換えられます。


累積和  S_{0}, S_{1}, \dots, S_{N} において、 S_{l} \le S_{r} を満たす  (l, r) ( 0 \le l \lt r \le N) の組の個数が  {}_{N+1}{\rm C}_{2} 個以上であるかどうかを判定してください


これとは反対の  S_{l} \gt S_{r} を満たす  (l, r) の組の個数は転倒数と呼ばれます。転倒数の求め方については

などを参考にしてください。 O(N \log N) の計算量で求められます。

コード

転倒数を求めるのには通常 BIT と呼ばれるデータ構造を活用します。コードは次のように実装できます。

最後に計算量を評価しましょう。数列の値の最大値を  A とすると、二分探索の反復回数は  O(\log A) 回と評価できます。よって全体としては  O(N \log N \log A) と評価できます。

#include <iostream>
#include <vector>
using namespace std;

template <class Abel> struct BIT {
    const Abel UNITY_SUM = 0;                       // to be set
    vector<Abel> dat;
    
    /* [1, n] */
    BIT(int n) : dat(n + 1, UNITY_SUM) { }
    void init(int n) { dat.assign(n + 1, UNITY_SUM); }
    
    /* a is 1-indexed */
    inline void add(int a, Abel x) {
        for (int i = a; i < (int)dat.size(); i += i & -i)
            dat[i] = dat[i] + x;
    }
    
    /* [1, a], a is 1-indexed */
    inline Abel sum(int a) {
        Abel res = UNITY_SUM;
        for (int i = a; i > 0; i -= i & -i)
            res = res + dat[i];
        return res;
    }
    
    /* [a, b), a and b are 1-indexed */
    inline Abel sum(int a, int b) {
        return sum(b - 1) - sum(a - 1);
    }
    
    /* debug */
    void print() {
        for (int i = 1; i < (int)dat.size(); ++i) cout << sum(i, i + 1) << ",";
        cout << endl;
    }
};

int main() {
    long long N; cin >> N;
    vector<int> a(N); for (int i = 0; i < N; ++i) cin >> a[i];
    int low = 0, high = 1<<30;
    const int geta = N+1;
    while (high - low > 1) {
        int mid = (low + high) / 2;
        long long num = 0;
        BIT<long long> bit(N*2+10);
        int sum = 0;
        bit.add(sum+geta, 1);
        for (int i = 0; i < N; ++i) {
            int val;
            if (a[i] <= mid) val = 1; else val = -1;
            sum += val;
            num += bit.sum(1, sum+geta);
            bit.add(sum+geta, 1);
        }
        if (num > (N+1)*N/2/2) high = mid;
        else low = mid;
    }
    cout << high << endl;
}