第1回ドリコムメディア大賞 | ドリコムメディア

【応募総数:2,008作品】
4作品受賞
※大賞は該当作品なし。

金賞

祓い屋令嬢ニコラの困りごと

(応募時『祓い屋令嬢の異世界異聞』より改題)

著/伊井野いと

祓い屋令嬢ニコラの困りごと

イラスト/きのこ姫

DREノベルスより2023年2月10日発売

「お憑かれ様です勘弁してください本当に」
前世は祓い屋。優秀だけど面倒事ばかり。これは人や人外から厄介事を引き寄せてしまう令嬢がいつか幸せになるまでの物語。

作品詳細

※本講評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。

蝸牛くも 小説家/代表作『ブレイド&バスタード』『ゴブリンスレイヤー』

ニコラが可愛かった。クールでサバサバ、好意を向けられ面倒がるけど素直になれない理由もあり、自業自得でなければ見捨てられないお人好し。そしてジークもアロイスもエルンストも、しっかり一個人として描かれ、そうした描写が終盤に繋がるのが良い。前半の勢いが少し足りないが、終盤はグイグイ行くし、「1冊の本」としての完成度と満足感は高い。ただ黒幕が誰かについては、もう少し事前情報が多くても良いかも。あと呪術師養成学校の設定については、ちょっと浮いてて気になってしまった。

橘 由華 小説家/代表作『聖女の魔力は万能です』

異世界転生、祓い屋、一見すると合わなさそうな二つの要素が上手に組み合わされていて、とても新鮮に感じられました。祓う対象がよく知られているものが多かったのは、読者の期待を煽る、いい装置になっていたと思います。
また、主人公が問題を解決していくお話が連なっていましたが、その場限りで使われた要素かと思いきや後に活用されていたりと、各話にちりばめられた伏線が後半に至るにつれて回収されていく様は爽快で、綺麗にまとめられていたと思います。

松倉友二 アニメプロデューサー/株式会社ジェー・シー・スタッフ 執行役員 制作本部長

全会一致の金賞です。入口はいつもの転生物かと思いつつも「祓い屋」が転生って部分が新鮮でした。お話もテンポ良く一気に読ませて頂きました。
途中で少しストーリー的な中弛みを感じる部分もありましたが、キャラクターが生き生きと描かれていて楽しかった。全て最後に向けての積みだったんですね。ラストに向けての盛り上げや伏線の回収は見事でした。

小倉充俊 アニメプロデューサー/株式会社グッドスマイルフィルム 取締役

異世界転生はいまや一般的ともいえるフォーマットだが、祓い屋という役割が新鮮さと興味を引かれました。伏線の貼り方もほどよく完成度の高い作品。一読者として楽しく拝読しました。序盤にもう少し引き込んでくれる仕掛けがあればより良かったと思います。

小原 豪 DREノベルス・DREコミックス編集部 編集長

現代の祓い屋が異世界に転生するという設定が独特かつミスマッチ感もある本作。が、終盤にそのあたりのミスマッチ感さえもしっかり生かされてきて唸らされました。
本文内にちりばめられた小さな伏線がしっかり機能しており、使い捨てかと思った序盤のエピソードが思ったよりも生きてきたりと、いちいち展開が快かったと思います。
主人公の誰に対しても物怖じしない言動も好印象だし、終盤のしっかりとした盛り上がりもよかったです。

間坂元昭 DRE STUDIOS webtoon編集部 編集長

webtoon制作の観点からすると、西洋風の異世界にローカルな祓い屋という職業を重ね合わせるのは必然性がなく“タブー”かなと、あらすじを読んだときには思いました。ですが、そんな心配を軽々と飛び越える面白さが作品に宿っており、ささやかな謎解き要素を丁寧に詰め込んだ良質の小説でした。
主人公ニコラの一挙手一投足に説得力があり、彼女の周りで起こる違うエピソードをもっとたくさん読んでみたいと思わせられました。

銀賞&DRE STUDIOS賞

婚約破棄のその先に
~捨てられ令嬢、王子様に溺愛(演技)される~

著/森川茉里

婚約破棄のその先に

イラスト/ボダックス

DREノベルスより2023年5月10日発売
DRE STUDIOSより2023年webtoon化予定

「私は、お金に負けたのね」偽りの愛は回避不可能!? 
婚約破棄から始まるシンデレラ・ストーリー!

作品詳細

※本講評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。

蝸牛くも 小説家/代表作『ブレイド&バスタード』『ゴブリンスレイヤー』

ていねいに中世貴族社会が描写されたファンタジー恋愛小説。キャラの描写もしっかりしていて、エステルは応援したくなる良いヒロインだったと思う。
ただweb小説の常で大長編の一部なため「1冊の本」として読むと終盤部分がちょっと勢いが足りず、諸問題がほぼ解決しなかったのが残念だった。
個人的には「婚約者を奪われた令嬢」同士であるエステルとオリヴィアの関係が面白いと思ったので、評価範囲での交流はあっさり終わってしまったが、今後に二人の絡みがある事を期待したい。

橘 由華 小説家/代表作『聖女の魔力は万能です』

キャラクターの持つ背景からの性格設定等がとてもよくできていて、それぞれの行動にも説得力がありました。
ただ、よくできている分、登場するキャラクターによって好みが分かれそうな作品だなとも思います。
個人的な感想になりますが、第一印象を強く引きずったせいでしょうか、印象が良くなかったヒーローやヒーロー周辺のキャラクターに好感が持ちづらかったです。キャラクターの魅力は続きを読みたいと思う気持ちに影響を与えるので、少し工夫が必要かなと感じました。

松倉友二 アニメプロデューサー/株式会社ジェー・シー・スタッフ 執行役員 制作本部長

面白く読ませて頂きました。ただ、面白かったのですがスタート段階でキャラクターの行動原理に理解できない部分があり、そこが残念に感じました。
キャラクターの行動原理が理解できないと物語は全て設定をこなすための御都合にしか読めなくなります。その辺りがもう少し整理されてキャラクターに厚みが出ていればもっといい評価になったと思います。

小倉充俊 アニメプロデューサー/株式会社グッドスマイルフィルム 取締役

ファンタジー世界の恋愛小説ですが、キャラクターの描き方によって非常にわかりやすく世界観に入っていけます。ただ、登場人物のわかりやすい思惑が作品の盛り上がりや深みに繋がっていかないともいえ、終盤に向けての勢いが欲しかったです。作品全体を通して非常に丁寧に描かれていて非常に好感を持ちました。

小原 豪 DREノベルス・DREコミックス編集部 編集長

ロマンスファンタジーの世界を舞台に各陣営の思惑がしっかりと描かれ、政治的な暗闘なども面白い作品でした。
ヒーローの王子が強引で俺様気質なのは、好みの分かれるところかもしれませんが新鮮に感じました。また、そのヒーローの背景が見えてくるあたりから面白さも加速してくる印象です。
全体的に丁寧に書かれているぶん起伏が少な目に感じてしまったため、もう少しテンポアップをしてみてもよいかもしれません。

間坂元昭 DRE STUDIOS webtoon編集部 編集長

兄弟による王位継承権を巡るサスペンス、否応なくその騒動に巻き込まれたヒロインと癖のあるヒーローの恋愛模様の二軸がバランス良く描かれていました。
王族や貴族が絡むスケールの大きなイベントと、そこに放り込まれたヒロインのストレスにギャップがなく、ヒロインの心情に寄り添いながら読み進めることができ、小説作品としての完成度が高いと感じました。
加えて、画面映えのする主要人物達の特殊能力設定や軽妙なキャラクターの掛け合い、鮮明にビジュアルが想像できる世界観構築の観点から、webtoon原作としても高いレベルにあると思い、DRE STUDIOS賞の授賞を推しました。

銀賞

月花の少女アスラ
~極悪非道の傭兵、転生して最強の傭兵団を作る~

(応募時『月花の少女アスラ ~極悪非道の戦争好き傭兵、異世界転生して最強の傭兵団を作る~』より改題)

著/葉月 双

月花の少女アスラ

イラスト/水溜鳥

DREノベルスより2023年4月10日発売

戦場で活き活きと死ぬ。最高の人生じゃないか。
戦場に花びらを散らし地獄を魅せる、異世界戦記×ダークファンタジー。

作品詳細

※本講評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。

蝸牛くも 小説家/代表作『ブレイド&バスタード』『ゴブリンスレイヤー』

アスラがしっかりと自身や仲間の能力を把握し、戦術で戦っていく部分はとても良いと思う。最初は転生要素は不要では? と思ったが、クライマックスでしっかり前世記憶が蘇ったフォローされていたのも好感。
とはいえアスラが魔法兵という新兵科で大暴れするのに対し、魔法が世界観的に軽視されるほど弱い存在に思えなかったため、「魔法兵が未知の発想である」という理由付けはもうちょっと欲しかった。
またアスラが圧倒的に強いため、「1冊の本」としては終盤があまり盛り上がらなかったのも残念。ただキャラは立っているし、ストーリーも面白かった。

橘 由華 小説家/代表作『聖女の魔力は万能です』

個性あるダークなキャラクター達はそれぞれ魅力があり、キャラクターが持つ秘密が徐々に明かされていく様子は話の続きを読みたくさせる良い要素だと思います。
しかし、少し引っ張り過ぎだと感じる部分もあり、秘密を匂わす場面をもう少し後に持って行くか、公開される情報を少し増やすかした方が良いのではないかと感じました。
所々過激過ぎるかなという描写が見られましたが、ダークファンタジーとして概ね楽しく読ませていただきました。

松倉友二 アニメプロデューサー/株式会社ジェー・シー・スタッフ 執行役員 制作本部長

文章力も高くレベルの高い作品でした。ただ設定として万人受けする物ではなく人によっては拒絶感がある内容だったと思います。
自分は拒否感があった人間です。転生した人間の中身はどうあれ、子供が人を殺す話は好きになれませんでした。アニメ業界の人間としては映像化出来ないかな……。

小倉充俊 アニメプロデューサー/株式会社グッドスマイルフィルム 取締役

表現方法がビジュアルとして想像しやすい作品です。アスラの活躍と世界観の繋がりに必然性が薄いと感じられ、残酷描写も含めキャラクターへの共感がしづらい点が最後まで引っかかりましたが、それらの要素を薄くするのではなく、特徴や魅力の出し方としてとコントロールできると、より引き込まれる作品になると思います。

小原 豪 DREノベルス・DREコミックス編集部 編集長

戦争好きの魔法兵少女アスラが仲間を率いて傭兵として活躍する本作。主人公アスラのキャラクターが非常に鮮烈で魅力に感じました。
敵対する者は手段を選ばず屈服させ、その身内は固い絆で結ばれた悪党ばかりという、ろくでもない設定にもかかわらず、読んでいて大変楽しい作品でした。
アスラがどこまでも戦い続けようとする理由・モチベーション的なところを序盤でもう少し見せてもらえると物語への共感性が増すかもしれません。

間坂元昭 DRE STUDIOS webtoon編集部 編集長

一読、「凄くオシャレな作品だな」と思いました。空から降って来る桃色の花びらが爆発するという美しい演出が目に浮かぶようで、少女たちによって構成された傭兵団の儚さと強かさを端的に表現していると感じました。
残虐描写が続きすぎる点が今のトレンドとの乖離していると思われましたが、このあたりは読む人によって感想が違うでしょう。群像劇であることも原因のひとつですが、主人公の目的・行動原理がわからず共感がしづらいような印象を抱きました。

銀賞

魔術の果てを求める大魔術師
~魔道を極めた俺が三百年後の技術革新を期待して転生したら、哀しくなるほど退化していた……~

(応募時『覇王となった最強魔術師、永遠に魔術を研究するため転生するも、三百年後の治安が悪すぎて激怒する ~まずは世界を再征服するところから始めてやろう~』より改題)

著/福山松江

魔術の果てを求める大魔術師

イラスト/Genyaky

DREノベルスより2023年3月10日発売

「貴様らに“本物”の魔術というものを見せてやろう」
三百年後、魔法技術が衰退した世界に転生した最強の魔術師は蹂躙を開始する!

作品詳細

※本講評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。

蝸牛くも 小説家/代表作『ブレイド&バスタード』『ゴブリンスレイヤー』

カイが優れた魔術師であり王であった事がレレイシャの絶賛と地の文で繰り返し語られるが身体能力と攻撃呪文で暴れる以外に評価に見合う行動が少なく、多くのキャラが登場するけれど敵も味方もほとんど掘り下げられず活躍しないのが残念だった。
ただスカラッドは敵ながら相手を侮らず全力で戦いを挑み、求道者としての敗北と死を選ぶなど、一貫していて魅力的。
呪文詠唱の描写は格好良いし、終盤で明かされる帝国が弟に対して行った事などは「おお」と思ったので、次回は世界観やキャラをしっかり作ったダークファンタジーを読んでみたい。

橘 由華 小説家/代表作『聖女の魔力は万能です』

人気のある要素を上手に組み合わせてあり、絵にしたときに見栄えが良さそうなシーンが多く、楽しく読ませていただきました。
繰り返される歌詞は主人公の登場シーンを印象付けるのに、敵が使う術に関するギミックには今後の展開の広がりを予想させられ、良い要素だと思いました。
キャラクターも魅力がありましたが、背景について少し説明不足かなと感じる部分があったので、もう少し説明を増やした方が良いかと思います。

松倉友二 アニメプロデューサー/株式会社ジェー・シー・スタッフ 執行役員 制作本部長

基本設定である吸血鬼の部分がちゃんと活かせればもっと面白く書けたのではないかと思います。
入口のキャッチーさに対してお話の起伏が小さく小振りな印象を受けた&キャラクターの魅力を引き出しきれてないのも残念。メディアミックスの企画が動いた時に色々と困りそう……。

小倉充俊 アニメプロデューサー/株式会社グッドスマイルフィルム 取締役

全体としてシンプル、でも展開もあり非常に読みやすい作品でしたが、キャラクター造形や世界観にもっと特徴を付けていくと魅力の増す作品です。文章力は高く、より複雑な構成や世界観でも読者に届く作品を作れると感じます。

小原 豪 DREノベルス・DREコミックス編集部 編集長

主人公の無双ぶりが楽しい作品でした。ストーリーラインはややシンプルで平板に感じられるところもありますが、味のある敵が登場したり、予想外の存在が立ちはだかったりと、単純なインフレバトルにとどまらず読者を飽きさせない展開となっていました。
魔術関連の設定やその発動ギミックなどが凝っており、状況をイメージしやすい描写力の高さとあわせて、作品の魅力的な雰囲気づくりに貢献していました。

間坂元昭 DRE STUDIOS webtoon編集部 編集長

卓越した引き込まれる文章で、ぐいぐいと読み進むことができました。吸血鬼のモチーフは世界的に受け入れられやすく、グローバル視点から見たときに発展可能性が高いと感じました。
主人公である最強の魔術師カイ=レキウスの目的もはっきりしており、すっきりした読み味でしたが、それが逆に、やや一本調子なストーリー展開に繋がってしまったように思います。多数の女性キャラの登場と交歓は見ものでしたが、webtoon化は市場のトレンドからしづらいストーリーだったように思います。

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