EVの時代はこない…かも
ちょっと前のことになりますが、トヨタ自動車が開発戦略を転換することが話題となりましたね。。
トヨタ「EV計画」大刷新の衝撃
https://toyokeizai.net/articles/-/576308
現在に至るまで、EV戦略の妥当性について騒ぎは続いていますが、まあ、あきらかにEVへの取組みでは日本の自動車産業は遅れを取っていましたから、ようやく失敗を認めて、スタート台に立った、というところでしょうか。正直なところ、EVシフトにおくれを取っただけでなく、まだ、水素、とか合成燃料とか云っているので手遅れ感が強いですが。
おそらく、数年内に日本の自動車産業は終焉を迎えるでしょう。家電、半導体、PC、携帯電話等に続く失敗の典型例です。
しかし、EVがモビリティの主役となるか、といえばそうならないかもしれない、と私は考えています。別に、内燃機関車が存在感を保つ、という話ではありません。
ちょっと前にですが、国連が世界の都市圏人口増加に関するレポートを出していました。
いわく、
世界の都市圏の人口割合は年々増加傾向にあり、都市人口は2015年の約40億人から2030に50億を超え、2040年には60億人まで増加すると推定されている
(United Nations "World Urbanization Population Prospects 2018" https://population.un.org/wup/ より要約)
ということで、都市部への、それも大都市部への人口集中が続き、人口の約3分の2が都市へ居住するようになる、という予測です。
さて、そうなると居住環境の他、過密化する都市交通とはどうあるべきか、が問題となります。
そこで、先進国、特にヨーロッパの諸都市では、都市空間を大きく占有し、渋滞等の問題を引き起こすクルマを追放する動きが活発化しているのです。
日本でもオランダやデンマークの自転車利用については知っている人も多いでしょう。しかし、現在、もっともラディカルにクルマ排除を進めているのはパリです。
パリ市長、アンヌ・イダルゴはコロナ禍以前から「徒歩や自転車で生活できる街」「車を使わず、日常生活を自転車で15分でアクセスできる街にする」を掲げ、パリ市内交通の主役を自動車から自転車へシフトさせる政策を実行してきました。
(youtubeで 「paris+bicycle」 と検索するといろいろ出てきます)
(https://www.youtube.com/watch?v=sI-1YNAmWlk)
こちらの動画を見て貰えば、かつては自動車で溢れていたパリ市街が歩行者や自転車が安心して通れる空間に変貌していることがわかります。しかも、どんどんその領域は拡がっています。
パリだけでなく、ヨーロッパの諸都市も同じです。自転車先進国のオランダやデンマークだけでなく、ロンドンやベルリン、バルセロナなど、特にバルセロナは自動車の排除を積極的に進めています。自動車大国アメリカでさえ、ニューヨークやサンフランシスコやポートランド等の東西海岸部の都市では自転車利用が進んできています。アメリカでも海岸部の都市が人口の大半を擁していますから、Z世代の意識と相まって自動車の利用が減る日も遠くないかもしれません。
そうなると、世界各国諸都市で交通変革とその成果を取り入れることになるでしょう。
e-bikeやe-scooterは使用する資源もエネルギーも占有面積もインフラも大気汚染も騒音も少なくすることができる。自動車が必要、欲しい、という呪縛から解かれれば、都市緒問題の解決手段として自動車排除が進むことになるでしょう。
日本の自動車メーカーがそうした認識を持っているか判りませんが、世界の自動車メーカーはその問題に気づいているようです。各社はe-bikeの開発・製造・販売に乗り出しています。
都市内交通の望まれる形が、徒歩、自転車、小型モビリティ、公共交通(バス、タクシー、鉄道)のシームレスな連携、つまりMaaS(Mobility as a Service)となるわけで、自動車の存在を疑問に思わないと各社の戦略が理解できないのです。
自動車は交通の主役から滑り落ちようとしています。EV化しても、その存在は都市間交通の補完的役割か、地方の足、好事家の娯楽ということになるでしょう。その視点が無いと、どういうEVを造るべきか、で誤ることになります。というか、日本メーカーは勘違いしているようですが。
日本でもSDGsだGXだと叫ばれる状況なのですから、交通のあり方を考え直す時ではないでしょうか。
参考
世界の「MaaS」新潮流を読み解く 第14回
道路は誰のもの? 歩行者優先、オープンレストラン出店、NYの今
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00582/00014/