原子力消極的賛成派の方々へ その2 - シートン俗物記

シートン俗物記

非才無能の俗物オッサンが適当なことを書きます

原子力消極的賛成派の方々へ その2

前回の続きです。原子力消極的賛成派のよく使うテンプレ意見に応えていきます。

ビルゲイツ原子力に注目しているぞ


ビルゲイツが作るんじゃ、Reactor3.1くらいじゃ安心できなくて、ReactorXPかReactor7まで待たないと、というお約束はともかく、注目しているというTWR(Traveling Wave Reactor)自体が、どうにも問題。
このTWRと同じ原理のCANDLE炉というのが日本でも研究されているそうですが、


革新的原子炉CANDLEの研究
http://www.spc.jst.go.jp/hottopics/0905nuclear_e_dev/r0905_sekimoto.html


このタイプの原子炉には大きな問題が4つあります。

1.臨界状態を保つのが困難で、暴走したら止めようがない
この炉は初期の核反応によって生じる高速中性子で、U238→Pu239へ変換。その反応を続ける事で熱エネルギーを取り出すことになっています。しかし、よほど精密に核燃料濃度を制御しないと、U238→Pu239変換量が減少したり増加したり臨界を維持しにくい。減少なら消えていくだけだからいいが、増加するという事は、Pu239生成量が増す→核反応が増加→Pu239がますます増加 だから、暴走といって差し支えない。制御棒が無いから外部から反応を制御する術はない*1


2.熱拡散から考えてすぐに熔解が始まる
U238をPu239に変換するには減速しない高速中性子が必要だが、減速しない状態で核反応を起こすには高速中性子密度(核反応密度)が高い必要がある。これほど高密度の核反応が起きると、発生した熱の(伝搬)拡散は中性子拡散より遙かに遅いため、熱が反応中心に籠もる事になる。つまり、反応中心から融け始める。融けた場合核燃料濃度の調整が無意味になるため、反応がどうなるかわかりません。


3.熱の取り出しが難しい
原理的に減速しない中性子を反応に使うということは、冷却材として水(軽水、重水)が利用できないということ。液体ナトリウムなど液体金属やヘリウムやアルゴンのような希ガス類を利用するとなれば、漏れが生じた場合手の施しようが無くなる。高速増殖炉なら制御棒を挿入できるが、この場合反応が止められないから(内部で反応するためカドミウムやホウ素を注入しても反応が止まらない)、メルトダウンの可能性が高い。

4.部材の耐久性に問題
この原子炉、一度稼働したら止められない状態なのに、反応は最低で数十年単位です。となると、高速中性子を含む高強度放射線と高熱に部材が曝され続けます。これほど過酷な耐久試験は聞いたことがない。


原理的に多大な損害を与えるものは、多重防護によって何とかなる、と考えない方がいいです。なぜなら、一旦状況が悪化した場合、さらに悪化する方向に働く(ポジティブ・フィードバックが掛かる)。

核融合は期待できないの?

これについては、以前書いたけどアップを忘れていた原稿を掲載します。
「史上最大の詐欺 核融合」お楽しみに。


何度と無く繰り返さなくてはならないのにウンザリですが、持続可能性のある社会としたいのなら自然エネルギーへのシフトは必然です。でなければ、エネルギーの無い状態にハードランディングすることになります。
よく、「原発が無いと江戸時代」みたいな脅しを掛ける連中が現れますが、むしろ話は逆です。化石燃料にしろ、原子力にしろ永続性はありません。自然エネルギーへのシフトは必要であり、それが可能なのは化石燃料が利用できる現在だけです。もし、化石燃料にしろ原子力にせよ行き詰まったら*2、シフトする原資すら無くなります。


(参考):自滅する文明と自滅した池田信夫
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20080626/1214469991

自然エネルギーなんて不安定じゃないか

風任せ、という言葉が気まぐれ=不安定を指すほどに風というのは“不安定”とされていますが、多数の風車を分散設置し、その出力を足し合わせる事で平均化されるのです。これは、「ならし効果」と呼ばれます。太陽光発電に関しても同じです*3


太陽光発電工学研究センター 環境・エネルギー分野 出力変動と緩和策 「お天気まかせ」でも大丈夫(産総研
http://unit.aist.go.jp/rcpv/ci/about_pv/output/fluctuation.html


荻本和彦「低炭素エネルギーシステムの将来像」
第9回 太陽光発電の大量導入で電力システムに起こること
http://tinyurl.com/3j4r44t


ちなみに、この日経の環境関連コンテンツはレベルが高い。その中でも荻本氏は長短所併せて取り上げつつ、ビジョンが明確で優れています。


再生エネ引っ張る太陽光・太陽熱と風力 地域の特色を開発に活かせ
http://premium.nikkeibp.co.jp/em/column/ogimoto/03/06.shtml


考えれば判る事ですが、ドイツやデンマーク、スペインはもちろん、アメリカや中国などでも風力や太陽光は急速導入されてきたわけです。それが可能であったのなら、日本で進まないのは本質的に技術的な問題などではない事の証拠といえるでしょう。


参考:京セラ、太陽電池の中国生産増強 天津工場6倍に
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110121/biz11012116120133-n1.htm


停滞深刻、日本の風力発電 昨年、中国の75分の1 国際団体が調査
http://sankei.jp.msn.com/science/news/110307/scn11030722380009-n1.htm


Googleが6000MWの洋上風力発電に投資
http://smart-grid.hotcalpis.com/news/633

そうはいっても、日本には台風もあるし

中国にも台風は来ますし、アメリカにはハリケーンも台風より気まぐれで危険なトルネード(竜巻)もありますよ。


本当の問題は、日本において「原子力村」*4が「自然エネルギー」をスポイルし続けたことで、日本の風土に適した「太陽光発電」や「風力発電」の研究開発が進んで来なかった、ということです。結果として、風力発電関連メーカーは海外をメインターゲットにし始めます。


MWT62/1.0 風力発電設備 累計受注台数2,000基を突破
米国カリフォルニア州のマウンテンビューIVプロジェクト向け49基を受注
http://www.mhi.co.jp/news/story/1103015038.html


しかし、日本でだって状況は変わりつつあります。


鹿児島向けに1万400kWの大型風力発電設備を受注 〜IHI初の風力発電事業へ参画〜
http://www.ihi.co.jp/ihi/press/2003/2003-12-182/index.html


2000kW風力発電システム
http://www.hitachi.co.jp/environment/showcase/solution/energy/wind_velocity.html


スバル風力発電システム
http://www.subaru-windturbine.jp/windturbine/index.html


東レ 風力発電装置向け炭素繊維トレカ
http://www.ecodream.jp/products/nature/html/nat_b016.html

低周波問題やバードストライクはどうする?

この問題は決して無視して良い問題ではありませんが、原子力維持に伴う夥しい犠牲を無視したがる“現実的な”方々が強調したがるのはウンザリしますね。
まず、低周波問題ですが、風切り音などはブレードの表面形状制御で低減されます。ゴルフボールのディンプルみたいなものですね。それから、大型風車の方が羽の回転スピードが遅いので相対的に影響は小さくできます。


もう一つ。私はもともと風力発電適地に人が住むような事が問題だと思っています。東伊豆は風力発電に対する反対運動が盛んな地域ですが、彼らの住むような場所は古くからの住民がいる地域ではありません。風光明媚な地域を別荘地として開発し住み始めたものです。この地域に暮らすためにわざわざ電力も水道も引かれましたし、車も必需です。あまり、環境的にいい暮らしとは言い難い。こういうところに暮らしながら風力発電に反対するのは都会人のエゴというやつでしょう。風力発電機は古くからの集落などからは離れています。


バードストライクに関して云えば、天敵である猛禽類の姿や声を流すだけで、近寄らなくなると思いますね。

太陽光発電は日中しか発電が出来ないじゃないか


電力需要は日中に偏っています。

電力需要の負荷平準化 より引用
http://www.fepc.or.jp/present/jigyou/juyou/index.html


これを見れば、太陽光発電で全需要を賄おうというのでない限り、日中しか発電できないというのは欠点に成り得ない事が判ります。
曇りや雨に関して云えば、風力発電でも紹介した「ならし効果」で平準化できます。
ちなみに引用したグラフからは火力発電に需給調整の負担が掛かっていることが判ります*5。火力も定常運転が望ましいですから、原子力が出力調整の出来ないツケが廻っているんですね。原子力比率を下げ、太陽光発電を拡大していくことで、火力発電も効率的運用が可能になります。

太陽光発電はエネルギー密度が低くて大面積が必要だ

何度も述べてますが、面積が必要なことは欠点にはなりません。建築物各戸の日照を受ける部分に設置すれば良く、そこは大概デッドスペースです。光が差し込んで欲しい場合には次のようなものもあります。


シースルータイプ(カネカ太陽光創電システム)
http://www.a-sic.kaneka.co.jp/j/lineup/index.html


原子力がエネルギー密度が高い、というのは、燃料棒になった場合の話です。ウラン鉱山から採掘し、精錬し、濃縮する部分が見えないだけです。そうして出来た高エネルギー密度のものを利用して発電するより、遍在する太陽光を利用して分散的なエネルギー利用する方が優れていると思いますよ。


規模拡大や効率向上に関しては、また別個に紹介します。

自然エネルギーを導入すると電力網に負担が掛かる

風力や太陽光発電を導入した場合の不安定性は「ならし効果」によって平準化出来る、というのを説明しました。むしろ導入量が少ないことが不安定を招いています。こうした変動する供給と需要調整のための手段が「スマートグリッド」です。


自然エネルギーもですが、日本では企業生産現場での自家発電があまり進んでいない。これは、大口需要に対する電力会社のダンピングもありますが、余った電力を売ることが出来なかった事も効いています。企業も定常運転の方が効率が高いので、需要の少ない時は外部に電力を売りたいわけです。現在は、一応は電力自由化が進められましたが、電力会社が送電網をガッチリと押さえているため、自由な売買にはほど遠い。このため、企業が自家発電を行うにはメリットが薄く、リスクが大きかった。


参考:電力自由化FAQ
http://www.shikoku.meti.go.jp/soshiki/skh_d6/9_info/top/e-faq.htm


これが送電分離されれば、企業による自家発電が進むでしょう。規模に合わせたLNGガスタービンコージェネによる熱電利用も可能となる。事業所単位ぐらいだと、弾さんも紹介していた発電効率の高いSOFC(固体酸化物型燃料電池)が利用できるし、太陽光だってそれなりに活用できます。


電力会社に全部独占させておくから問題が生じるのです。運用上の制約を取り払えるかどうかは技術上の問題ではありません。

自然エネルギーなんて補助金漬けじゃないか

補助金がどうたら云うと、原子力はどうなの?という話になりますが、それはともかく、既に述べてきたように日本では「自然エネルギー」をキチンと伸ばす体制が整っていません。うわべを取り繕うために進めたことが、良くないと思いますね。


ちなみに、ドイツでは「自然エネルギー」関連産業の伸長によって雇用創出までされています。


2010年、独の再生可能エネルギーの割合は17%へ、雇用は37万人へ増加(日刊 温暖化新聞)
http://daily-ondanka.com/news/2011/20110322_1.html


雇用創出に悩む日本にとって、自然エネルギーへのコミットは好影響だと思いますがね。せっかく基礎技術では競争力があるのですから。

ドイツは原子力大国フランスの電気を買っているじゃないか

これもよく見る意見ですね。我々が着目しているのは自然エネルギー導入の伸び率です。ただ、それ以外にも「ドイツはフランスの電気に頼っている」という話には問題があるのです。


オーストリアには原発がありません。過去に進められた原発国民投票によって廃止が決定。


原発ゼロ、オーストリアの選択
http://webronza.asahi.com/global/2011032900001.html


そのオーストリアに対しても、「フランスから電力を買っている」という批判があります。


参考:オーストリアの電気事情
http://itokeisyu.blog119.fc2.com/blog-entry-315.html


イタリアも同じ。

イタリア、原発再開計画1年間停止へ
同国では、1986年の旧ソ連チェルノブイリ原発事故後、国民投票で当時の原発関連法を廃止。すべての原発が廃止され、建設計画も凍結された。

http://www.asahi.com/international/update/0323/TKY201103230115.html


これに対しても、「フランスから電力を買っている」という批判があります。


イタリアの電力事情
http://lavita.ciao.mepage.jp/eguide/it/beans/it_beans18.html


調べてみると、イタリア、オーストリア、ドイツ、デンマーク、オランダ、ベルギー、スペインに関して同じ事情がありました。フランスから電力を買っている、という話です。周辺国全てに電力を売りつつ、でも、フランスの電力供給で原子力は8割。


つまり、話が逆なのです。「フランスから電力を買っている」というより、「フランスが電力を売らざるを得ない」状況なのです。電力需要の伸びを見込んで発電所を造りすぎたため 原子力は構想から数十年単位掛かりますから 過剰供給になってしまった。原子力の欠点、出力調整が難しい事により、他国に売らなくては成り立たなくなった訳です。自然エネルギーが伸びて困るのは、むしろフランスの方でしょう。


実は、日本でも同じ状況がありました。90年代の電力需要は現在の6割である事を以前示しましたが、原子力発電所の増設が進められました。そうなれば、需給ギャップが問題になる。その解決手段が原発の「出力調整」でした。ちょっと前にいしだ壱成さんのブログが話題になりました。


今だからみんなで考えたいこと。(いしだ壱成オフィシャルブログ)
http://ameblo.jp/isseiishida/entry-10819818986.html


この時出力調整実験が行われたのが伊方原発。多大な反対があった中で強行されたにもかかわらず、その後出力調整が他で行われることはありませんでした。
手間が掛かる割には効果の少ない出力調整よりも、夜間電力需要を伸ばすことにしたのです。それがつまり「オール電化*6。もともとヒートポンプシステムを利用しようとも60℃程度の温水を電気で作る自体がエネルギーの無駄遣いというものです。
日本のエネルギー(=電力)政策には色々と問題があります。その源泉を探れば、原子力問題に帰着する事が珍しくありません。


電力需要がかつてより増加している一方で、家電などの電力消費は確実に減っています。家庭における電力需要はエアコン、冷蔵庫(と給湯)が大きな割合を占めていますが、どれも90年代よりも効率が向上して消費電力は減っています。家庭の電力需要が伸びているのは、「オール電化」策による影響が大きいでしょう。
しかし、大きなウェイトを占めるエアコン(特に暖房)と給湯は、かつて助成制度のあった「太陽熱」が利用できます。であれば、電力供給に不安があるのなら、太陽熱利用に再び補助制度を復活させる事も効果があるはずです。


というよりも、現在の電化製品には必ずしも「電化」の必要があるのかどうか。ちょっと前に話題になった「非電化工房」というのがあります。電化に頼らず、ほどほどに便利な生活をおくる事は可能だと主張しています。


Atelier Non-Electric 非電化工房
http://www.hidenka.net/


その各々の主張が妥当かどうかはともかく、我々の生活において必要な家電を選択してもいいのでは無いでしょうか。

原発を止めて電力供給が滞ったら、(経済)弱者が死ぬる!

今までだって、経済弱者は死地に置かれてきた(置かれてきている)のですが、こう云う時だけ弱者の味方、ですか?もし、弱者が死ぬ可能性があるとしたら、それは「原発を止めることによる電力供給不足」などではなく、「社会における福祉制度運用」の問題でしょう。
だいたい、この夏に電力供給が滞るのは原子力政策に邁進してきた結果以外の何物でもないのですけどね。極めて資本主義的な対応策だってあります。電力料金を使用量に応じて累進的に課金すればいいのです。現在はむしろ大電力需要者が有利な料金体系になっています。


企業が「電力問題に耐えかねて」海外に出て行ってしまう?バカ云っちゃいけません。企業の「出ていく出ていく」詐欺は毎度の事ですが、彼らが出ていくぞ、と主張する国の多くが電力供給が安定していない国です。
税金の話もそうですが、そんな単純なレベルで海外移転する企業はありません。市場としての魅力や成長性の問題なら、脱原子力による新産業振興と雇用創出の方が期待できるというものです。

原発を止めると江戸時代になる!


そもそも相手にする話でもありませんが、私自身は「江戸時代に戻ってもいいじゃない」と思っています。が、それ以前に江戸時代とは知識レベルで問題になりませんから、江戸時代とは条件が違います。例えば、江戸時代の死因の多くには感染症がありましたが、感染症予防に必要な知識が欠けていました。今ではエネルギーが無くてもある程度の感染症予防が可能です。

というより、江戸時代に回帰するほどの資源不足なら、電力しか作れない原子力があっても無駄というものでしょう。むしろ、持続可能性のあるエネルギーへのシフトが必至、という結論になってしまうのでは?


というわけで、一応応えておきました。まあ、別に原子力消極的賛成派が納得する事を期待しているわけではありません。脱原発にコミットしないための言い訳を探しているのだ、と考えていますから。ただ、原子力に限らず、現実を変えよう、という動きに対して困難さを説いてシニカルな態度を取るのは現実的態度というより勇気の無さを示すだけです。ハッキリ云ってみっともないだけ。
では。

大江戸神仙伝 (講談社文庫)

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JIN―仁― 1 (ジャンプコミックス デラックス)

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5/13 追記

バードストライクに噛みつく人が多くて驚きました。皆様、それほど鳥類保護に関心があったとは。


はっきり云っておきます。本文中にあるように、無視すべきでは無いと思ってはいても、もともと低周波問題もバードストライク問題も大した障害とは考えておりません。


日本野鳥の会は、風力発電に関するバードストライク問題についてこう述べています。

風力発電は、地球温暖化対策のための有力な自然エネルギー源として世界各国で導入が進められており、日本でも政府による推進策がとられていますが、調和のとれた風力発電の導入を図ることが世界的な課題となっています。
 当会は、できるだけ早急に地球温暖化対策を施さなければ、将来的には多くの生物の命を危険に晒し、広範に生物多様性が失われてしまうと考えています。そのため、現状では広く導入可能な技術である風力発電を、国内でも受容可能な範囲で導入していくことには賛成しています。ただし、風力発電の導入にあたり、野鳥など野生生物の生息に悪影響を及ぼすようなことがあれば、自然保護の観点からみると本末転倒です。そのため、科学的視点から野鳥に悪影響があると考えられる風力発電の導入については、当会としては設置反対の姿勢をとっています。
 欧米の先進諸国とは異なり、わが国では風力発電事業は目下、環境影響評価法の対象外であり、ガイドラインによって自主的に行われる環境影響評価も事業者の自主努力に負う部分が大きく、中には十分機能しているとは言えない例もみられます。事故発生のメカニズムの研究や回避方法の研究も緒に就いたばかりという状態です。
 そのため当会は、日本でも風力発電による自然環境や鳥類への環境影響を評価し、悪影響を回避、最小化するための制度と方法論を確立することを目指し、2001年以来、活動してきました。


日本野鳥の会 風力発電施設建設問題
http://www.wbsj.org/nature/hogo/others/fuuryoku/


日本では、風力発電を本格導入するのではなく、RPS(電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置)制度に伴う、いわばアリバイ的に進められてきました。ですから、環境アセスメントなどが蔑ろにされてきたわけです。ですから、日本でも風力発電計画を本格導入するなら、環境アセスメントは必需であるべきです。その一方で日本では環境アセスメントが骨抜きというかアリバイ工作的に使われてきました。風車のバードストライクに詳しいらしい方々はこうした話を知ってます?


高尾山天狗裁判
http://www.takaosan.info/kendou25.htm

「高尾山天狗裁判」とは、東京都下では、初めて行なわれる「自然の権利」訴訟です。
自然人(私たち人間)1060名(1次提訴分)と、高尾山をフィールドとする6つの自然保護団体、そしてオオタカ、ムササビ、ブナ、高尾山そのもの、八王子城跡の5つの自然物が原告となって「高尾山にトンネルは掘らないで…」と国・道路公団に訴えたのです。


別に圏央道に限りません。我が静岡県では第二東名の建設で山間部が切り開かれていますし、静岡空港建設ではオオタカ生息地が失われました。「(オオタカなど)追っ払ってしまえばいい」と発言した県議もいましたし、実際、空港建設後オオタカはいなくなりました。日本全国、野生動物は開発に伴う環境破壊で生息地を逐われましたが*7、「風力発電バードストライクがあるからダメ!ゼッタイ!!」と云う人が、その状況にどれほど注意を払ってきたか。まったく注意など払ったとは思えませんね。原発被災後でさえ、「経済のために原発やむなし」と云う人たちが、野生動物保護のための環境保護(開発放棄)を認めるとも思えませんから。


ですから、バードストライク問題は“ためにする難癖”に過ぎない。低周波問題も同じです。それほど近隣住民の健康問題が気になるなら、鉄道、道路、空港、工場周辺住民はどうなのよ?という事になる。


この問題に関しては(原子力消極的賛成派に対し)まともに取り合う気などありません。本当に、バードストライクや健康問題を本当に気にする人なら、原子力に賛意を示す、なんて事はありえませんから。

*1:高速中性子で核反応を起こす場合、ドップラー効果による反応減少は影響を受けにくい

*2:すでに行き詰まっているともいえるが、資源を使い果たした場合を指す

*3:日照条件を不安定の根拠に挙げる人がいるが、気象予報を見れば判るが、日照状態は地域ごとにばらついており、平均化することは可能

*4:こういう言い方は好きではないが、政産官学が共依存した原発推進システムを巧く表している言葉だと思う

*5:全体の変動率と火力の変動率を比較のこと

*6:揚水発電」も進めている

*7:実は野生動物が最も多種で豊かなのは里山環境で、それが郊外開発で失われてきた