迷走する浜松 自滅する地方
なかなか書き進まなかったエントリーなのだが、trivialさんからのTBがあったので、ちと纏めてみました。
浜松に2階建てLRTは必要か、というか2階建てLRTが必要なところなんてあるのか?(一本足の蛸)
http://d.hatena.ne.jp/trivial/20090517/1242566457
浜松に2階建てLRTを 都市交通研が提案、模型公開
市民と大学が協働で浜松型の新交通システムを検討する「都市交通デザイン研究会」(川口宗敏会長)は16日、浜松市中区の静岡文化芸術大で研究成果を中間発表。世界初というダブルデッキ(2階建て)の次世代型路面電車(LRT)を提案し、模型を初めて公開した。 (石川才子)
LRTはライトレールトランジットの略。動力源はリチウムイオンでエネルギー効率が高く環境に優しい。同研究会はLRTを幹線交通軸として提案。1階を車いすやベビーカー、高齢者用、2階を通常の座席としユニバーサルデザインを意識。車両の色や図柄などは今後の研究材料だが、地域色を大切に洗練されたデザインを考えるという。
ほかにも▽中遠都市圏で運輸連合を構成し、既存のバスや電車と乗車券を共通化▽接続するバス路線を新設▽車より割安感のある運賃設定▽地域の二酸化炭素排出量を削減▽利便性で市街地に客を呼び戻し、観光地も活性化−など、多くの研究内容が報告された。
研究会は2008年4月に発足し、10年4月に市と市議会に最終提案する計画。LRT総事業費は900億円と想定され、半分は国の補助、半分はPFI(民間資金活用による社会資本整備)方式で賄うとしている。
http://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20090517/CK2009051702000148.html
…なんてこったい。わざわざ“LRTはライトレールトランジットの略”まで書いているのに、「2階建て」が“ライト”かどうかも考えなかったんだろうか、とガックシ。結局のところ、都市内交通について何も判っていないのか、判っていても知らぬふりをしているのか何れかなんだろうな。
どんな公共交通機関を導入しようと、“都市”自体が自動車使用を前提とした設計である限り、または自動車使用を便利にしようとする限りは、自動車に勝る移動手段は無い訳で*1、公共交通機関は衰退していくのは、今までに散々に指摘してきたとおり。
浜松市は現在でも道路整備とそれに伴う郊外開発を行っているわけで、その点を考慮していない「LRT計画」などまったくの無意味だ。総事業費900億も掛けて「ムダもの」を造ろうというのだから、いかれているとしか言い様がない。
世界中、LRTのような「次世代公共交通システム」を巧く活用しているところは、
・郊外開発の抑制
・都市内主要街路のトランジットモール(カーフリー)化
を進めており、逆にいえば、「車(および車に依存した郊外)からの脱却」無しにはLRTだろうと何であろうと巧くはいかないだろう。
ちなみに福耳先生が
・クルマいらずの地域が形成されつつある?
ショッピングモールへの送迎バスが地方都市の駅前から発着している。よく、自動車は都心ならともかく地方ではまだ必須だというが、要は通勤と買い物兼娯楽用であるなら、職場とモールが送迎バスを出せばたいていはすむことになりはしないか?それでは収まらない時々の利用は、レンタカーの方が安いのではないか?かくして地域社会は自動車がないならないでなんとかできる環境を整えつつあるのではないか?
社会と自動車の整合性が下落しつつあるとすれば、自動車産業はこの先どう組織能力を磨いても、社会の制約をどれだけ克服できるのだろうか。
http://d.hatena.ne.jp/fuku33/20090520/1242787239
なんて事を書いていて驚いた。
いやぁ、この人「邪悪」なだけじゃなくて、学者としてもまるでダメダメじゃないの?
“職場とモールが送迎バスをだせば”って書いてるけど、その昔の企業の事業所(工場)などは、従業員用のバスを結構持っていた(まだ持っているところもある)。そうした通勤手段は自家用車の発達と維持の困難さゆえに減少していったのだし、地方における民間バス交通なんて補助金を注ぎ込んでも崩壊寸前だ。バス会社が撤退した地域では地方自治体による自主運行バスを出していたりするが(「自主運行バス」「コミュニティバス」で検索してみるといい)、その運営に伴う赤字に耐えきれず、自主運行バスの廃止、なんてのは割と聞く話だ。
ショッピングモールがバスを出すのは、過去指摘した「交通弱者」さえも囲い込むための手段であって、それが代替的な交通手段になるわけもないだろ。
それにしても移動が「職場とモール」で済んでしまう、ってどんだけ貧しい生活なんだよ。
むしろ事態は地域社会は自動車が無ければどうにもならない環境に追い込まれているのであって、自然現象のような成り行きなどではなく、行政による積極的な施策がその状況を生み出している、事が問題なのだ。
以下、次回。
*1:実際には自動車による移動能力は大したことがない