抄録
ストロンチウム化合物の反応特性は,原子力発電所の事故等で発生した放射能を含む廃棄物を焼却炉や溶融炉で処理する際のストロンチウム-90 の挙動を考える上で重要な情報であるが,同族元素であるカルシウムの化合物に比べて実測の情報が不足している。本論文では,焼却施設の炉内および排ガス冷却過程において生成が予想されるストロンチウム化合物の反応性について,水酸化ストロンチウムと炭酸ストロンチウムを中心に2種類のラボ試験を用いて検討した。バグフィルタの温度である 180 ℃ では,水酸化ストロンチウムは 1 時間の塩化水素ガスの通気によってさまざまなストロンチウムの塩化物を生成することが明らかになった。また燃焼温度である 850 ℃ では,1 時間の加熱で炭酸ストロンチウムと石英,コロイダルシリカ,ベントナイトはそれぞれ反応してストロンチウムのシリケート Sr2SiO4 を生成することが確認された。