2019 年 15 巻 2 号 p. 188-198
インドネシアではオンサイト型の生活排水処理システムとして、家庭、産業施設ともにseptic tankが広く普及しているが、環境負荷が高いことが懸念されている。そのため大手工場等の産業施設が先駆けとなり、従来式のseptic tankの代替システムとして、日本の技術である浄化槽の普及が始まりつつある。本論文の目的は、インドネシアの工場を対象に、従来式のseptic tankと、日本で開発され同国に導入されている浄化槽のライフサイクルアセスメント(LCA)を行い、それぞれのシステムがBOD量の除去に要する温室効果ガス(GHG)排出量を比較することにより、排水処理システムに係る環境効率の向上を検討することである。排水処理工程で排出される亜酸化窒素(N2O)、メタン(CH4)は地球温暖化係数(GWP)が高いため、これらのガス排出量の把握は重要であるが、同国では有用な実測データがない。そこで本調査では、ジャカルタ市内の工場においてseptic tank、浄化槽それぞれのガス分析を実施した。その結果、septic tankの運転時に直接排出されるGHG排出量は44.8 kg-CO2eq/ 人 ・ 年、浄化槽の運転時は5.9 kg-CO2eq/ 人 ・ 年と、約7.6倍の差があった。ライフサイクル全体では、septic tankのGHG排出量は、浄化槽と比較して1.8倍高い結果となった。また水質分析の結果、septic tankのBOD除去量は20.4 kg/ 人 / 年、浄化槽は105.3 kg/ 人・年であった。これらの結果から環境効率を比較した結果、従来式のseptic tankの環境効率は0.4に対して、浄化槽は4.0と10倍の差があった。