2023 年 72 巻 6 号 p. 227-232
東京電力福島第一原子力発電所の事故によって環境に放出された放射性Csは,その周辺の家屋内にも侵入しており,高濃度の放射性Csを含む室内ダストを形成している.室内ダストを住民が吸引することによる内部被ばくを計算する上で,放射性Csの可溶性,粒径,分布特性,放射能などの情報が重要となる.居住中の家屋調査では,住宅部材を採取することができないため,現場測定が必要となる.放射性物質の分布を画像として情報化するイメージングプレート(IP)の利用により,現場観測において放射性Csの分布特性と放射能に関する情報が得られる.比較的放射線量の高い現場測定において,IPを用いた定量測定を行うための条件(線源の選択,信号減衰補正,バックグラウンド評価など)を検討し,設定した条件で測定したところ,避難中の家屋の天井裏床面において0.1–0.7 Bq程度の粒子と考えられる放射性物質が点在していることが示された.