2018 年 44 巻 1 号 p. 54-58
未利用な最低品質廃油脂類であるトラップグリースの油分を重油代替として利用するには,油分に含まれる高融点の飽和脂肪酸とトリグリセリドの濃度を低減し,室温における油分の固化を防止する必要がある.本研究では,晶析を用いた油脂類の濃度制御法に関する基礎データの取得のため,トラップグリースの高融点成分である飽和脂肪酸(ステアリン酸,パルミチン酸,ミリスチン酸)とそれらのトリグリセリドについて,A重油との混合系における液相線(固液共存線)を示差走査熱量計を用いて測定した.飽和脂肪酸の炭素鎖が同じ条件で比較すると,脂肪酸よりもトリグリセリド体の方が液相線の温度が高く,また,炭素鎖が長いほど液相線の温度が高いことがわかった.液相線を推算する方法として,A重油を擬似的に1成分として仮定し,今回の混合系を2成分系単純共晶系と見なして,Schröder–van Laars式に理想溶液およびDortmund-UNIFAC活量係数推算モデルを導入したモデルの適用を試み,その有用性について評価した.