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ワークライフバランスを確保しやすい耳鼻咽喉科医の年収事情とは?|医師の現場と働き方

ワークライフバランスを確保しやすい耳鼻咽喉科医の年収事情とは?

耳鼻咽喉科は、耳や鼻、咽頭や喉頭などに生じる病気の治療や検査を行う診療科です。扱う疾患の幅が広く、サブスペシャリティとして細分化された専門性が求められることもあります。また、軽度な咽頭炎から命に関わりかねない咽頭がんや喉頭がんまで、扱う疾患の重症度も様々です。今回は、耳鼻咽喉科医の働き方と年収事情について解説します。

<この記事のまとめ>

  • 耳鼻咽喉科医の年収は、全診療科の平均年収と同等~やや低め。育児との両立のために時短勤務を選択する医師も一定数いる。
  • 給与への満足度は比較的高く、仕事内容やワークライフバランスなどと給与のバランスがとれていると考えている医師が多いことが推測される。
  • 耳鼻咽喉科医が年収を上げるには、多忙な総合病院に転職する、医師が不足している地域で求人を探す、スポットアルバイトを取り入れながら収入を増やすなどの方法がある。

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1. 耳鼻咽喉科医の年収事情

医師・歯科医師・薬剤師統計」(厚生労働省、2018年)によれば、医療施設に従事する全医師数は31万1,963人であり、そのうち耳鼻咽喉科医は9,288人(3.0%)です。いわゆる「マイナー科」のなかでは比較的多くの医師を擁しているといえるでしょう。また、耳鼻咽喉科医の平均年齢は52.3歳。全医師の平均年齢49.9歳よりも高めであることから、高齢になっても働き続けている医師が多い可能性が考えられます。

こうした状況から、耳鼻咽喉科では医師が充足していると考えられがちですが、耳鼻咽喉科が扱う疾患は幅広いため底堅い求人ニーズがあります。地域によっては耳鼻咽喉科医が不足し、その募集に四苦八苦している医療機関もあります。

必要医師数実態調査」(厚生労働省、2010年)によれば、求人倍率は1.15倍であり、調査対象となった全診療科の中でやや高い水準(全科の平均は1.12倍)となっています。したがって、耳鼻咽喉科医として転職を希望する場合は、条件に特別なこだわりがなければ比較的容易に全国で職場を探すことができるでしょう。耳鼻咽喉科医が扱う疾患は幅広いため、求人を探す際には収入面の条件のみならず業務内容についてもしっかりと確認しておくことをおすすめします。

勤務医の就労実態と意識に関する調査」(労働政策研究・研修機構、2012年)によれば、「眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科」の平均年収は1,078.7万円となっています(4科をまとめて集計)。これは調査対象となった全診療科の中で最も低い水準です(全診療科における平均年収は1,261.1万円)。ただし、これら4つの診療科の中でも耳鼻咽喉科は年齢・性別を問わず需要が高く、がんなどの急性期疾患を扱う医師も多いことから、この水準よりももう少し高めの年収になることが予想されます。

■診療科別・医師の平均年収

順位 診療科目 平均年収(万円) (計n=2,876)
1 脳神経外科 1,480.3 (n=103)
2 産科・婦人科 1,466.3 (n=130)
3 外科 1,374.2 (n=340)
4 麻酔科 1,335.2 (n=128)
5 整形外科 1,289.9 (n=236)
6 呼吸器科・消化器科・循環器科 1,267.2 (n=304)
7 内科 1,247.4 (n=705)
8 精神科 1,230.2 (n=218)
9 小児科 1,220.5 (n=169)
10 救急科 1,215.3 (n=32)
11 その他 1,171.5 (n=103)
12 放射線科 1,103.3 (n=95)
13 眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 1,078.7 (n=313)

(独立行政法人 労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」2012年をもとに作成)

年収帯別にみると、最も割合が高いのは1,000~1,500万円未満(33.2%)であり、1,500~2,000万円未満は22.0%、2,000万円以上は4.2%となっています。一方で、年収500万円未満も10.9%おり、他の診療科と比べると高い割合となっています。これは、前出の4診療科では泌尿器科を除いて女性医師も多く、出産や育児と両立させるために短時間勤務を選択している医師の割合が高いことなどが原因と考えられます。

■眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科の年収階層別の分布

主たる勤務先の年収 割合(%)
300万円未満 2.6
300万円~500万円未満 3.3
500万円~700万円未満 6.6
700万円~1,000万円未満 10.9
1,000万円~1,500万円未満 39.8
1,500万円~2,000万円未満 29.6
2,000万円~ 7.2

(独立行政法人 労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」2012年をもとに作成)

 

2.耳鼻咽喉科医の働き方と給与の特徴

前出の「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によれば、「眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科」の自身の給与に対する満足度については、「満足している」「まあ満足」との回答が60.8%で、満足寄りの回答が他の診療科と比べて多い傾向がありました。このことから、業務の内容や質、ワークライフバランスが給与水準に見合っていると感じている医師が比較的多いことがうかがえます。

前述したように耳鼻咽喉科医の業務は多岐にわたり、どのような業務に主として携わるかによって給与水準も変わってきます。ここでは、耳鼻咽喉科医が活躍する職場と仕事内容、給与の特徴をみていきましょう。

2-1.診療所での外来や簡単な処置

耳鼻咽喉科を標榜する診療所は多数あります。主に花粉症などのアレルギー性疾患、咽頭炎、副鼻腔炎といった比較的軽度の疾患を扱っています。このような軽症患者の外来やレーザー治療などの簡単な処置を行う業務の場合、一般的に給与水準は低めになる傾向があります。しかし、アレルギーなど特定分野の治療に長けており集患力が高い医師は高額の報酬で迎えられることもあります。

2-2.総合病院での勤務

耳鼻咽喉科で扱う疾患には、咽頭がんや喉頭がんなど命に関わるものもあります。そうした疾患を扱う総合病院の勤務医は、手術や術後患者の管理などで時間外労働が多くなることもあります。緊急性が極めて高い現場は少ないものの、総合病院の耳鼻咽喉科医の多くは外来、病棟管理、手術と多忙な毎日を送っています。その分、給与水準は上がりますが、ワークライフバランスの充実度は、その医療機関で働く耳鼻咽喉科医の人数などにより異なるでしょう。地方部ではいわゆる「一人部長」として勤務せざるを得ないケースも多く、ほぼ毎日オンコール対応をしなければならない耳鼻咽喉科医もいます。

2-3.健診などのアルバイト

耳鼻咽喉科医は、健診などのアルバイトでも一定のニーズがあります。春や秋などの健診シーズンには多くのスポットアルバイトが発生するので、通常の業務とうまくスケジュールを調整して効率よく収入を得る医師もいます。スポットアルバイトは高額な報酬を得られるケースが多いため、連日アルバイトを行えば一般的な医療機関の常勤医よりも高額の月収を得ることも可能です。現在はコロナ禍の状況で、アルバイト医師の求人状況が変動しているため、転職エージェントなどに問い合わせて最新の求人状況をチェックすることをおすすめします。

3.耳鼻咽喉科医が年収を上げるには?

他科と比較してワークライフバランスを確保しやすく、年収への満足度も高めの耳鼻咽喉科医が年収を上げるためにはどのような方法があるでしょうか。

ハードな勤務環境をいとわない医師であれば、総合病院に勤務して幅広い疾患を診療し経験と技術を積むのもひとつの方法です。また、耳鼻咽喉科医が不足傾向にある地域での勤務を視野に入れてもいいかもしれません。

ワークライフバランスを維持したまま効率よく稼ぎたい場合は、通常の勤務とスポットアルバイトをうまく組み合わせながら収入を増やすという方法もあります。

多様な疾患を扱い、専門性の高い耳鼻咽喉科のキャリアには多岐にわたるキャリアの可能性があります。今回ご紹介した年収の傾向を参考にしながら、ご自身のキャリアの方向性を検討してみてはいかがでしょうか。

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PROFILE

執筆/成田 亜希子(なりた・あきこ) 
 
医師・ライター。2011年に医師免許取得後、臨床研修を経て一般内科医として勤務。その後、国立保健医療科学院や結核研究所での研修を修了し、保健所勤務の経験もあり。公衆衛生や感染症を中心として、介護行政、母子保健、精神福祉など幅広い分野に詳しい。日本内科学会日本感染症学会日本公衆衛生学会に所属。

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