著作権の保護期間延長に関して様々な議論があるが、おおまかに言って「死後にまで金を貰っても意味ない」対「著作物が永く保護されることで創作意欲が促進される」とまったく噛み合わない。
「知名度と名誉の方が金銭より重要」とか色々と言いたいことはあるが、それはともかくちょっと気になったのが「死後の権利」である。
著作権はあくまで著作者に与えられる権利であり、譲渡されたり相続されたりするようなものではない*1が、にも関らず作者の死後も存続する権利である。私の知る限り、死後も存続する権利など他にない*2。
家庭の主たる稼ぎ手が創作により収入を得る立場である場合、家人の生活はその著作権使用料などで支えられることになる。それが創作者の死によって即時無効化されてしまうと、その瞬間から家庭は収入源を失ってしまう。著作権をある種の「財産」と捉えるのであれば、これは財産が瞬時に消滅することに当たるもので、由々しき出来事だ。一般サラリーマンで言えば貯金口座が没収されたとか土地の権利を取り上げられたようなものにも思える。
しかし著作権は財産の類ではない。これは著作権が課税対象になっていないことからも理解できる。
著作権が財産ではない以上、この状態は実際には「財産が消滅した」ではなく「収入源を失った」、即ち失業に近いものと考えるべきだろう。であれば失業手当以上の保護はどう見ても過保護だ。
ただ、死後ただちに権消失するというのは危険でもある。著作権は作品の人気次第で莫大な収入を生む可能性のある代物だ。巨額の金が絡むと色々と面倒が起こり得る-----例えば、著作権切れを狙った殺人のような。
それに、少なくとも現在では死後50年にわたり保護されているものを、直ちになくすわけにも行かない。その存在を前提に生活設計しているものが一瞬で崩れてしまうからだ。
といった事情を鑑みるに、やるべきことは
- 現在よりは短期の死後権利保証(具体的には死後せいぜい20年程度までの)
- 発効より以前の著作物については50年保証
といったところではないか。暫定的保護期間については徐々に切り下げ、最終的には「存命中あるいは発表から20年の長い方」ぐらいに落ち着くのが適正だと考えている。