スノーボード愛好者なら、夢中になるのは何と言ってもパウダー・ライディング! 一度でもその感覚を味わった者は、きっとスノーボードから離れることなど考えられません。まさに、極上の快感が広がり、素晴らしい冒険の世界に誘ってくれます。
しかし一方で、「パウダーを滑るのが難しい」と感じている方も多いことでしょう。新雪での滑走に不安を感じたり、つま先側のターンでバランスを崩してしまったりと…、課題は尽きません。
そこで、そんなお悩みを抱えるあなたに、上達するための6つのポイントをお伝えしましょう。これらを実践すれば、パウダー・ライディングの楽しさと自信が飛躍的に向上すること間違いなしです。
ハウツー内容協力:Sigmund Chan(CASI Level 3 Instructor)
ライダーモデル協力:薬師寺 亮 yaku1992ryo
目次
POINT 1 スタンスをセットバックさせよう!
パウダーを慣れていない人は、滑っている時にボードの先(ノーズ)が埋まりやすいです。
そこで、パウダーの日になったら、スタンスをセットバックさせましょう。
セットバックとは、ビンディングの付いている位置をテール(後ろ側)に移動させることです。
とても簡単です。プラス・ドライバーがあれば、どんなボード、ビンディングの組み合わせでも、できます。
オススメは、2センチ~4センチほど。それ以下では効果がほぼありません。また逆に4センチ以上もセットバックさせると、違和感が出て来ると思います。まずは、いつも立っているスタンスよりも、気持ち2センチほどセットバックさせて、パウダーを滑りやすくなったか、確かめてみましょう。
それでも、かなり深いパウダーの日は、ノーズが埋まりやすいので、さらに3センチから4センチほどセットバックしても良いと思います。
予備知識:長いボードと太めのボードはパウダーに最適!
そもそもあなたが、パウダー用ボードになっていれば、それほどセットバックのことを考えなくても大丈夫です。
パウダーボードとは、主に長めのボードであったり、太めのボードであったりします。
もしもボードをレンタルする場合には、こうした予備知識を持っておけば、役立つこともあると思います。
例えば、「今日はパウダーになったので、いつもよりもちょっと長めのボードを選んでみよう!」などという考え方ができます。
海外の有名なゲレンデでは、ハイパフォーマンスのレンタルボードを取り揃えており、今後、日本でもそうした流れは来ると思います。いつも自分が使用しているボードは、パウダー向きでないけど、多くの雪が降ったら、「パウダー用ボードをレンタルしよう!」ということもできそうですね。
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【2020-21年版】オススメのスノーボード・パウダーフリーライド系 8選
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POINT 2 後ろ足に体重をかける割合
パウダーを滑るときには、後ろ足に体重をかけるといいと聞いたことがある人も多いと思います。
たしかに、そのことは間違っていませんが、実際にはケース・バイ・ケースになります。
それでは、どのようなケースでどれくらいの割合で体重を後ろ足に掛ければ良いのでしょうか?
それはコースの斜度、また滑っている時のスピード、また新雪の状況に委ねられます。
一概に「絶対にこの割合!」とは言い切れません。
速度が速ければ、後ろ足にあまり乗る必要はありません。一方、速度が遅くなる可能性の緩やかな斜面では、後ろ足にもっと乗る必要があります。
また、雪質が軽いほど後ろ足に乗る必要は少なくなりますが、新雪が深い場合は後ろ足に体重を乗せていきます。
2種類の体重の比率をご提案!
そうかと言っても具体的な体重の掛け方を知りたいか、と思います。
そこで、2種類の前後の体重の比率をご提案しましょう。
前40:後60
新雪になったら、ちょっと後ろ足に乗って前足に40%、後ろ足に60%の割合で体重を掛けるようにしましょう。
中級者コースから上級者コースを滑る時には、これくらいの割合でOKです。
ですが、極端な急斜面を滑る時には、あまり後ろ足に体重を乗せることを考えないで、前足と後ろ足の体重の割合は、50:50で大丈夫です。
また、パウダーの日には、滑った跡により凸凹になったりする時もありますが、そんな時もほのかに後ろ足に体重を掛けるこの感覚は有効でしょう。
前30:後70
パウダーを滑っていると、スピードが遅くて返ってスタックしそうで心配になる時があります。
多くの初中級者にとっては、スピードが出ることでプレッシャーを感じるものですが、むしろパウダーでは遅過ぎる方が止まってしまいそうでプレッシャーが掛かることがあります。そんな時には、おもいきって後ろ足に体重を乗せましょう。
事前に体重移動の感覚をつかもう
いざ、パウダーになってから、以上の伝えた体重の比率を調整しようと思っても、なかなか身体は覚えていないものです。
そこで、ぜひ事前にフラットなところで、後ろ足に乗る体重の感覚をつかんでください。
レストハウスの前やゴンドラ乗り場の降りたところなど、フラットなところを見つけましょう。
そこで、後ろ足に体重を乗せて、パウダーでの姿勢を確認しておいてください。
また体重を後ろに掛ける時には、上から見て身体がボードから外れないようにしましょう。
後ろに体重を乗せ慣れていない人は頭が下がり、上半身が前の方に外れ気味です。しっかりとボードの上で操作し、その上でテールに乗せる感覚とつかんでほしいのです。おそらく、後ろの手がテールの真上あたりに来ていれば大丈夫です。
身体が前の方にはみ出すと、つま先側のターンでバランスを崩し、ターン内側の方に転倒する可能性があるので、気を付けてください。
POINT 3 前足ではなく後ろ足で舵取りをしよう!
通常の状態でスノーボードしているときには、主に前足首でステアリングガイド(舵取り)させます。だけど、パウダーを滑っているときには、 前足ではなく後ろ足をもっと使いましょう。
車のアクセル操作のような感覚で、後ろ足首で操縦します。
つま先側に曲がるときは、後ろ膝と足首をしっかりと曲げましょう。ポイントは、スネを雪面に押し付けているような感覚にすること。
カカト側に曲がるときには、つま先を胸の方に持ち上げること。
こうして、後ろ足で舵取るするようにすると、よりパウダーが滑りやすくなるでしょう。
サーフィンでは、常に後ろ足でコントロールして、上半身をリードしてターンしていきますが、そのような感覚ととても似ています。
以上のような足首の動かし方は、雪上に出る前、今、家の中やオフィスでも練習できます。
ぜひ試してみてください。
POINT 4 エッジではなくベース面を意識して滑ろう!
通常の圧雪されたバーンを滑る時には、エッジを使って滑ってコントロールしています。
実際に、スノーボードのベース面を見ると、エッジから5センチまでのエリアをよく使っていて、その部分のワックスの消耗が激しいことがわかります。
しかし、パウダーでは、エッジではなくよりベース面を意識して滑りましょう。
ここは超大事なポイントなので、くわしく解説していきます。
上の写真は、実際に僕がパウダーを滑っている時に、意識しているベース面のエリアを示したものです。
僕は左足が前に来るレギュラースタンスなのですが、つま先側のターンの時には、レッドの部分を意識してターンしています。
またカカト側のターンの時には、ブルーの部分を意識してターンしています。
バターナイフのように、まるでボード全体を雪面に押し付けていくような感じで滑ります。
特に気を付けてほしいのは、つま先側のターンです。パウダーがうまく滑れない原因は、フロントサイドターンあると言っても過言ではないでしょう。
多くの人は、フロントサイドターン(=つま先側のターン)の時に、身体がターン内側に倒れ過ぎてしまって鋭角なターンをしがちです。すると、ノーズがパウダーに埋もれて転倒しやすくなります。
滑走面全体に抵抗を受けるパウダーでは、「く」の字のような鋭角なターンをしたとたんに、ノーズの先が引っかかって転倒します。より「C」の字のようなきれいな弧を描くようなターンが必要があるのです。まるでバナナのような形のターンですね。
そういうきれいなターン弧を描くためには、目線を徐々に送ることが大切。
というのも、フロントサイドターンを鋭角に回ってしまうという方は、やたらに目線の先行が早いのです。結果、ベース面でなく、エッジ部分を使ってターンしてしまいます。
左の方は、理想的なきれいなターン弧をするスノーボーダーの目線を示しています。
右の方は、鋭角なダメなターン。
きれいなターン弧の視線は、常に今、自分がいる位置よりも3時方向ほど先を見続けています。そのなめらかな視線に導かれるように、ボードもスムースに進むわけです。
一方ダメな鋭角ターンでは、バックサイドターン(カカト側ターン)最後のところで、だいたい目線はフォールライン谷側にいっている。
それからボードが谷を向いたところでは、目線が6時方向というとんでもなく強過ぎる先行視線を行ってしまうのです。まるでフォールライン(谷側)に行くのが嫌々するように一度も谷側に目線を送ることはない。このフロントの目線先行き過ぎる重症患者の方となると、ボードが谷側に行ったとたんに、目線を山の方に見上げてしまう方もいます!これでは、高速道路でやや右方向に曲がりながら、目線を助手席に向けてしまっている、いやそれどころか後部座席に向けているようなものです。
パウダーでのフロントサイドターンでは、勇気を持って「待つ」という感覚が必要なのです。具体的にはボードの先がフォールライン(谷側)に向くところをいつも以上に長く保つようにしましょう。すると、円くきれいなパウダーのターン弧が描けるようになります。
自分の身体を軸にして、コンパスで円を書くようなイメージも役立ちますよ!
パウダーでは慌てて急に曲がるのではなく、大きめに回るようにしましょう。エッジではなくベース全体を使って、ゆったりと回るようにしましょう。
POINT 5 視線を先へ送ろう
人はあまり慣れないところに立つと、視線が下がるものです。
しかし、視線が下がったままでは、うまくパウダーを滑ることができません。車の運転同様に、スピードに応じてできる限り遠くを見ることが大切です。
まずパウダー斜面に立ったら、闇雲に滑る始めるのではなく、ゆっくりと深呼吸でもしながらこれから自分の滑るラインを、思い描きましょう。「あそこで、ヒールサイドターンしたら、トゥサイドターンはあのへんで」という感じで、なんとなくイメージするだけでも、ずいぶんと楽にパウダーが滑れるようになるものです。
そして、視線を先へ先へ送るように心がけて滑り始めます。
スタックしないように、常に自分が滑りべきところに視線を送り続けましょう。
この視線を先へ送るという意識は、ひじょうにシンプルなことですが、実際に雪上に立って意識する上ではもっともてっとり早く有効なコツです。
ここで学んだことを忘れそうな人は、ともかく「視線を先へ送ろう」という意識だけは覚えておいてください。
この意識だけでも、パウダーに慣れていない人は圧倒的に滑りやすくなるでしょう。
POINT 6 スピードは友達
パウダーを滑るということは、通常のバーンよりもずっと遅く滑ることでもあります。
というのも、パウダーというのはボード面全体に新雪が絡んでくるので、通常のバーンよりも失速しやすいのです。
スピ―ドが速いことは怖いイメージがあるかもしれませんが、むしろパウダーではスピードが遅くなりやすいし、またスピードが遅いことでスタックしやすくなります。だから、パウダーではいつも以上にスピードを出すことが大切です。
そもそもパウダーでは、転んだところで痛い思いもしないものです。まるで海で行うサーフィンのように、転倒した際には新雪があなたを包んでくれることでしょう。だから、パウダーでは、「スピードは友達」と考え、挑むようにしましょう。
最後に友人である薬師寺 亮の気持ち良いパウダー滑り動画をご紹介します。
ぜひ、この素晴らしいパウダー世界を味わってください。この感覚を知れば、あなたは一生スノーボーダーとして素晴らしい人生を歩むことになることでしょう。
●関連リンク
パウダーを滑るには、その基本的なライディングであるカービング大回りを習得ことも大切です。以下のハウツーでそのことを確認しましょう。
スノーボード HOW TO カービングターン 5つのステップアップで誰でも簡単にできる!
https://dmksnowboard.com/e-feeling-how-to-carving-turns/
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飯田房貴(いいだ・ふさき) プロフィール
@fusakidmk
東京都出身、現在カナダ・ウィスラー在住。
スノーボード歴39シーズン。そのほとんどの期間、雑誌、ビデオ、ウェブ等スノーボード・メディアでのハウツーのリリースに捧げている。
90年代を代表するスノーボード専門誌SNOWingでは、「ハウツー天使」というハウツー・コラム執筆。季刊誌という状況で100回以上連載という金字塔を立てる。またSnowBoarder誌初期の頃から様々なハウツー・コーナーを担当し、その中でも一般読者にアドバイスを贈る「ドクタービーバー」は大人気に!その他、自身でディレクションし出演もしたハウツービデオ&ハウツー本は大ヒット。90年代のスノーボード・ブームを支えた。
現在も日本最大規模のスノーボード・クラブ、DMK Snowboard Clubの責任者として活動し、レッスンも行っている。
普段は、カナダのウィスラーのインストラクターとして、世界中の多くの人にスノーボードの楽しさを伝え続けている。2016-17シーズン、ウィスラーのインストラクターMVPを獲得!!
著書に『スノーボード入門 スノーボード歴35年 1万2000人以上の初心者をレッスンしてきたカリスマ・イントラの最新SB技術書』、『スノーボードがうまくなる!20の考え方 FOR THE LOVE OF SNOWBOARDING』がある。