本作は、「楽園」を共通のテーマとした2作品を収録しております。
『楽園の守護者』 そこは、20年も前に放棄された、廃墟の町。 イース=カリィオード中佐率いる第12ASB大隊は、 ボロボロで人気のないダウンタウンの中を進軍していた。 彼らの敵は、たった1人。 ただそれだけの相手を倒すため、イースは大勢の部下を引き連れて進む。 『センサーにSB粒子反応!13時方向、距離800メートル!』 「おいおい、いきなりバニッシュブラストかよぉ!?」 「勘弁してくれぇ、ダンナァ………」 「総員っ、対ショック姿勢っ!!」 閃光と同時に、町を激震が襲う。 「勘弁してくれっ、俺はまだ死にたかねえぞぉっ!!」 周囲の建物が吹き飛ぶ中、兵達はただ祈りながら身を伏せていた。 やがて、再び静寂を取り戻した闇の中で、彼らは口々に安堵の声を漏らした。 「は、はずれたっ!?」 「けどよ、無事には済んだが………生きた心地がしねえ………」 「まったくだ………まるで容赦なしだぜ………」 そこに、戦術支援コンピュータを通じて、オペレーターから通信が届く。 『中佐、目標を発見しました』 「よくやった」 画面に送られてきた男の姿を確かめる。 その大柄な体は装甲服に包まれ、胸部装甲には15個の勲章が並ぶ。 幾多の戦場において多くの武勲をあげた、歴戦の勇者である証だ。 男は、小さなビルの屋上に立ち、静かに町を見下ろしていた。 「総員、戦闘態勢。ここからは一瞬も気を抜くな。敵は地球最強の男なんだからな」 『マリーベルは死んだとパパに伝えて』 「バカな……嘘だろ」 それは突然の出来事だった。 ある日、着の身着のまま、見知らぬ異世界に放りこまれる。 一生のうちにたった一度でも、そんな体験をした人間はおそらくごく僅かだろう。 そして、結果訪れた世界では、人型をした怪物(モンスター)が我が物顔で山野を跳梁し、 中世のような城壁都市では魔法使いが手もふれずに病を癒す、となれば、心身ともに衝撃を感じるのはあたりまえだ。 正直、それは中学生が作文に描く安易な物語的世界のようで、語る自分でさえ気恥ずかしさを覚える。 僕、草薙悠也はそれまで、れっきとした理系の学生であるだけでなく、自他共に認める重度のサイエンスフリークだった。 だからもし他人からそんな話を聞かされたら、大笑いしつつ内心でそいつを愚かな妄想家と軽蔑したに違いない。 けれどそんな異常現象がいざわが身に降りかかってみると、これは一種異様なインパクトがある。 そして、僕はそういった、常識から外れた出来事には激しく動揺するタイプだった。 なまじ科学を信奉しているぶん、とにかく理屈ぬきにダメなのだ。弱いのだ。 だから、 こうしていまになってみれば理解できる。翠や子供たちの存在に、あの頃の僕は間違いなく救われていたのだと。 予告もなしに、この世界へと落ちてきたその日から、僕は翠と二人、 幼い子供たちをかかえ、ただひたすらに必死だった。 「あり得ない……けど、認めるしかない、か」 わたし、片瀬翠は本来ならば、この春ようやく教養課程を終えたばかりの、平凡な一女子大生にすぎない筈だった。 あたりまえのように、ちょっとだけ格好いい先輩に恋をして……そして振られて。 しかし、運命のいたずらの結果、わたしはなんの因果か、他の五人と一緒に、 この異世界に――この世界の表現でいうならば、落下(フォール)して――きてしまった。 それから、短い期間に幾つかの出来事があって、話し合いをくり返して。 わたしと悠也は、共同で、子供たちの面倒をみようと決めた。 哀れで惨めな失恋をしたばかりのわたしにとって、その後すぐにこの子たちと異世界に落とされたのが、 幸運だったのか不運だったのかはまだよくわからない。 けれど、この突拍子もない現実に、やわな失恋気分などどこかへ吹き飛んでしまった事だけは確かだ。 怪物に殺されかけ、空腹と寒さで震えている最中に、色恋沙汰など頭の片隅にも浮かばなかった。 自分でも浅ましいと思うけれど、そういう時に、死にたくないとか、お腹すいたなどとしか浮かばない、典型的な俗物なのだわたしは。 他に考えられることといえば数学……自分の好きな理系の知識による、我が身に起こった現象についての空想じみた推測くらいだ。 だからこの子たちを抱えて、私たちがこれから先、この世界でうまくやっていけるかどうかは無論、わからない。 さらに、運命がこれ以上わたしをもてあそぼうというのなら、 わたしは、ええいいわよ、煮るなり焼くなりもうどうとでも好きにしなさいよ、とでも言い放ちたい気分だった。 そんなふうに、ぼくとわたしと、子供たちは出会い…… ……異世界での、『生活』がはじまった。
サンプル画像
![]() |
ご購入はこちらから ダウンロード 通常価格 1,100円キャンペーン価格 550円 獲得DMMポイント 12%還元
60pt
2025/02/27 23:59まで
本商品を利用するためには、最新版のソフト電池ランタイムが必要です
※価格は全て税込み表示です ![]() |
対応OS | Windows:10 |
---|---|
動作環境 |
Core2Duo 1.8GHz必須 / Core2Duo 2GHz以上推奨 メモリ:512MB必須 / 1GB以上推奨 グラフィック:1280×720pix DirectX:9.0以上 |
並び替え
近未来SF小説が好きならお薦め
これだけの文章量があってこの値段なら下手な小説よりずっとお得です。
内容もハリウッド映画もかくやというストーリーです。
ボイスがなくとも十分楽しめます。
時間は1シナリオ3時間程度ですから暇つぶしにも最適です。
デジタル小説に抵抗がないなら買って損はしませんよー。
りぽD さんのレビュー -2017/02/02 -PCゲーム(PCゲーム/ソフトウェア) 購入・利用済み
5人中、5人が参考になったと投票しています。
ネタバレ 恐ろしいコストパフォーマンス
「楽園の守護者」については、かつての同僚との戦いを「現在の戦闘状況等」→「かつての話」を順序良く導入することにより、世界に非常に引き込まれてあっという間に物語の終焉に到達する。プレイ時間の目安は4時間程度
「マリーベルは死んだとパパに伝えて」については、異世界にこの世界の住人がトラベルするという、エロゲに多い話である。主人公含む6人のこの世界の住人が異世界でどのように生きていくかという流れである。途中で、各人の行動が別視点で語られるので6人の対立がなぜ起こってしまったのかといったことが、疑問なく物語を進めることができる。プレイ時間の目安は4時間程度
共に選択肢はなし。
正直地雷を期待していたが、1000円程度ならいいかと思い買ったが、サウンド等ついていれば3000円ぐらいの価値は十分あると思います。気になった人は、安さに任せて買うのもありだと思います。
レビューを表示する
jinny frasco さんのレビュー -2016/01/04 -アダルトPCゲーム 購入・利用済み
6人中、6人が参考になったと投票しています。
過去に評価の高い作品を出しているライター2名の作品。
どちらも、過去に評価の高い作品を出しているライターさんの作品。
ボイスは無いけれど、1000円にしては結構なテキスト量、CG枚数があって、内容も面白かったのでお勧めできる作品だと思う。
ねむれす さんのレビュー -2015/03/02 -PCゲーム(PCゲーム/ソフトウェア) 購入・利用済み
8人中、8人が参考になったと投票しています。