『マジック・イン・ムーンライト』 マジシャンがはまった“恋のマジック”
監督・脚本ウディ・アレンの最新作。今回の舞台は1920年代の南フランス。
有名なマジシャンであるスタンリー(コリン・ファース)は、数少ない友人に頼まれ、美人占い師のトリックを見破る約束をする。しかし、その占い師ソフィ(エマ・ストーン)はスタンリーのマジシャンという正体を見破り、彼の叔母の秘密まで言い当てることになり……。
前作『ブルー・ジャスミン』はケイト・ブランシェットにアカデミー賞をもたらしたものの物語としてはなかなか苦々しい後味だったが、本作『マジック・イン・ムーンライト』はウディ・アレンらしい軽いロマンチック・コメディとなっていて、肩ひじを張らずに楽しめる作品だと思う。
いつも旬な俳優と組んで、毎年のように作品を送り出しているのは、ウディ・アレン作品ならば俳優の誰もが出演したいと思われているからで、この作品もコリン・ファースとエマ・ストーンという旬な役者が揃っている。
コリン・ファースは『アナザー・カントリー』(1984年)でも注目されてはいたが、他の面々(ルパート・エヴェレットやダニエル・デイ=ルイス)と比べると地味な印象だったわけだが、『英国王のスピーチ』(2010年)でアカデミー賞を受賞している。エマ・ストーンは『アメイジング・スパイダーマン』シリーズのヒロインで、このブログでも前回取り上げた『バードマン』にも登場している。
エマ・ストーンは『バードマン』では不自然なくらいの目の大きさが目立ったが、それはやはり彼女のナチュラルなものだったようだ(CGで修正を加えているのかとも疑ったけれど)。『マジック・イン・ムーンライト』でも、エマが演じるソフィを形容するのに“ビッグ・アイズ”という言葉が選ばれていた。ただ『バードマン』の役柄は元麻薬中毒者であり、父親にも素っ気なくて険がある印象だったわけだが、『マジック・イン・ムーンライト』ではだいぶ柔和な印象になっている。
※ 以下、ネタバレもあり。
スタンリーはシニカルで口が悪く、会う人のほとんどから嫌われている。マジックは見る者を驚かせるが、それには必ずトリックがある。その種明かしをすれば誰にでもできるかもしれないし、驚きは納得に変わる。スタンリーはマジシャンとしてそれを知っているからこそ、占いや霊媒師の類いのまやかしを信じることができない。
理に適っていないソフィのインチキを見抜けなかったのは、スタンリーがどこかでソフィに惹かれていたからなのかもしれない。しかも彼は霊能力を認め、新しい世界が開けたことに喜びを感じる。もしかするとそうした高揚感は恋の悦びだったのかもしれないのだが、スタンリーは鈍感なのかそちらには気がつかない。
途中で当然のようにソフィのインチキはバレることになる(その黒幕については伏せておくとして)。新しい世界の展開という洗脳はあっさりと解け、それを見抜けなかったスタンリーは恥をさらすことにもなるが、もうひとつの洗脳は解けない。それが“恋のマジック”なのだが、スタンリーは天邪鬼なのかそれをすぐには認めようとはしない。
スタンリーの叔母はそうした彼の性格を知り尽くし、彼との掛け合いのなかで、彼が自分の恋心に気づき、ソフィと結ばれる方向へと導いていくところがおもしろい。最後はなかなかベタな展開だが、わかっていてもそれなりに楽しい。ウディ・アレンはもう80歳に手が届くというのに、ヌケヌケと“恋のマジック”みたいなことを言ってのけるだから……。
有名なマジシャンであるスタンリー(コリン・ファース)は、数少ない友人に頼まれ、美人占い師のトリックを見破る約束をする。しかし、その占い師ソフィ(エマ・ストーン)はスタンリーのマジシャンという正体を見破り、彼の叔母の秘密まで言い当てることになり……。
前作『ブルー・ジャスミン』はケイト・ブランシェットにアカデミー賞をもたらしたものの物語としてはなかなか苦々しい後味だったが、本作『マジック・イン・ムーンライト』はウディ・アレンらしい軽いロマンチック・コメディとなっていて、肩ひじを張らずに楽しめる作品だと思う。
いつも旬な俳優と組んで、毎年のように作品を送り出しているのは、ウディ・アレン作品ならば俳優の誰もが出演したいと思われているからで、この作品もコリン・ファースとエマ・ストーンという旬な役者が揃っている。
コリン・ファースは『アナザー・カントリー』(1984年)でも注目されてはいたが、他の面々(ルパート・エヴェレットやダニエル・デイ=ルイス)と比べると地味な印象だったわけだが、『英国王のスピーチ』(2010年)でアカデミー賞を受賞している。エマ・ストーンは『アメイジング・スパイダーマン』シリーズのヒロインで、このブログでも前回取り上げた『バードマン』にも登場している。
エマ・ストーンは『バードマン』では不自然なくらいの目の大きさが目立ったが、それはやはり彼女のナチュラルなものだったようだ(CGで修正を加えているのかとも疑ったけれど)。『マジック・イン・ムーンライト』でも、エマが演じるソフィを形容するのに“ビッグ・アイズ”という言葉が選ばれていた。ただ『バードマン』の役柄は元麻薬中毒者であり、父親にも素っ気なくて険がある印象だったわけだが、『マジック・イン・ムーンライト』ではだいぶ柔和な印象になっている。
※ 以下、ネタバレもあり。
スタンリーはシニカルで口が悪く、会う人のほとんどから嫌われている。マジックは見る者を驚かせるが、それには必ずトリックがある。その種明かしをすれば誰にでもできるかもしれないし、驚きは納得に変わる。スタンリーはマジシャンとしてそれを知っているからこそ、占いや霊媒師の類いのまやかしを信じることができない。
理に適っていないソフィのインチキを見抜けなかったのは、スタンリーがどこかでソフィに惹かれていたからなのかもしれない。しかも彼は霊能力を認め、新しい世界が開けたことに喜びを感じる。もしかするとそうした高揚感は恋の悦びだったのかもしれないのだが、スタンリーは鈍感なのかそちらには気がつかない。
途中で当然のようにソフィのインチキはバレることになる(その黒幕については伏せておくとして)。新しい世界の展開という洗脳はあっさりと解け、それを見抜けなかったスタンリーは恥をさらすことにもなるが、もうひとつの洗脳は解けない。それが“恋のマジック”なのだが、スタンリーは天邪鬼なのかそれをすぐには認めようとはしない。
スタンリーの叔母はそうした彼の性格を知り尽くし、彼との掛け合いのなかで、彼が自分の恋心に気づき、ソフィと結ばれる方向へと導いていくところがおもしろい。最後はなかなかベタな展開だが、わかっていてもそれなりに楽しい。ウディ・アレンはもう80歳に手が届くというのに、ヌケヌケと“恋のマジック”みたいなことを言ってのけるだから……。
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