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Back To The Spectrasonics ~ Spectrasonics社製品の使用法を徹底チェック ~ vol.1

第1回:Omnisphereはココを押さえておこう

ソフト音源の定番製品は数多ありますが、Spectrasonics社の各製品はリリースされてから今日に至るまで長きに渡って使い続けられています。

同社製品に限ったことではありませんが、インストールしたものの使い方がよくわからず、何となく音色を選んで使っている方も少なからずいるようです。

改めて同社の各製品を更に活用するために、それぞれの機能や設定方法などを改めて理解を深めていこう、というのが本連載のテーマです。

まずは、Omnisphereから見ていきましょう。

Omnisphereの基本構造を理解しよう

Omnisphereは、8パートの異なるサウンドを演奏させることができるMULTI音源で、各パートではオシレーターを最大4基までレイヤーして音色を構成することが可能です。

実際のパートではレイヤーAからレイヤーDのそれぞれで個別に1基のオシレーターを使ったシンセサイジングが可能で、それらを適宜組み合わせて音色を作成します。大まかに例えるなら、1オシレーターのシンセサイザーを4台使って1個の音色を作っていると考えるとわかりやすいでしょう。

図1:OmnisphereのPART構造

Omnisphereの構造的な最上位階層となるMULTIは、前述のような構成を持ったパート8個を1つのセットにしたものです。

図2:OmnisphereのMULTI構造

例えば各パートをすべて異なる音色を割り当て、DAWのMIDIトラックに打ち込んだMIDIデータでそれぞれを個別に演奏させれば8パートのマルチティンバー音源のように使うことができますし、これらの8パートを全て組み合わせて複雑な設定を持った1つの音色のように扱うことも可能です。

MULTIモードの基本的な活用例:

(1)マルチティンバー音源のように使用する場合

例えばDAWにCUBASE PROを使用し、Omnisphereをマルチティンバー音源的に使用する手順を見ていきましょう。

まず、Omnisphereを1台立ち上げ、GUI上部中央のセレクトボタンでMULTIを選びます。

図3:黄色の枠線で囲んだ部分をクリックしてMULTIモードにする。

各パートに音色を割り当てたい場合には、パッチ名が表示される部分をクリックします。

図4:黄色の枠線で囲んだ部分をクリックするとパッチブラウザーが表示される。

PATCH BROWSER(パッチブラウザー)が表示されますので、そこでカテゴリーやタイプなどで絞り込んでいくと右側にパッチ名がリストアップされます。それらの中から使用したいパッチ名をクリックするとパートに割り当てられます。

図5:GUI中左部分の各カラムで絞り込みを行なっていくと、黄色の枠線で囲んだ部分に該当するパッチ名がリストアップされ、そこから任意のパッチ名をクリックするとパートに割り当てられる。

以上の手順を使用するパートで設定することでOmnisphere側の設定はオーケーです。

続いてCUBASE PROの設定を行ないます。

Omnisphereの各パートで演奏させるフレーズを打ち込むMIDIトラックの作成と設定は以下の手順となります。

プロジェクト → トラックを追加で“MIDI”を選択し、

図6

→ 表示されたダイアログ上でMIDI出力にOmnisphereを選択、グループとチャンネルにOmnisphere上の各パートで設定しているチャンネル数と同じ番号に設定します。

図7:黄色の枠線で囲んだ部分が設定を行なう場所となる。

これを使用するパートと同数回の設定を行なえば設定完了となります。

マルチティンバー音源のように使用したい場合のポイントはズバリMIDIチャンネルの設定です。パッチを割り当てているパートのMIDIチャンネルとDAW上で打ち込むMIDIトラックのMIDIチャンネルの数字を同じになるようにするのが重要です。

(2)8パートを組み合わせて1つの音色として使用する場合

Omnisphereには、LiveモードとStackモードという機能を持っていますが、ここではシンプルにMULTIモードの状態でパッチをレイヤーしたい場合の設定を解説したいと思います。

例えばDAW上で打ち込んだMIDIトラックのフレーズをレイヤー音色で演奏させたい場合などには、Omnisphereの各パートのMIDIチャンネルを受信したいDAWのMIDIトラックで設定されているMIDIチャンネルと同じ数字に合わせることで複数のパートのサウンドを同時に鳴らすことが可能です。

図8:黄色の枠線で囲んだ部分が各パートにおいてMIDI情報を受信するチャンネル番号となる。

ちなみにLiveモードやStackモードとは、それぞれのパッチの発音域や詳細な演奏設定なども含めて1つのセットにしたものだと考えておいてください。これらについては次回以降に追々解説したいと思います。

内藤朗

キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、サウンドクリエーターなど様々な側面を持ち、S.E.N.Sのレコーディングサポート、安部OHJIの様々なプロジェクトでのレコーディング、ライブなどに関わるなど、作編曲からレコーディング制作、ライブ演奏など多方面で活動中。MIDIやDTM関連の分野では黎明期から今日に至るまで長きに渡り関わっており、多様な経歴を持つ。また、音楽制作系のライターとしても広く知られ、近著に「音楽・動画・ゲームに活用! ソフトシンセ 音作り大全」(技術評論社刊)、共著「ミュージッククリエイターハンドブック 2023年改訂版」(ヤマハミュージックエンターテインメントホールディングス刊)などがある。有限会社FOMIS代表取締役、一般社団法人日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ(JSPA)正会員、MIDI検定指導研究会会員。