延長保証サービスの設計・運営を行うテックマークジャパンから、同社が保有する修理データをもとにした「西暦2000年以降の修理費用変動」および「修理費用と延長保証の関係」に関するレポートが発表されたので、同社リリースを元に、その概要をお伝えする。
平均修理単価の推移
■テレビ
図1:テレビ平均修理単価 単位:円(税込)
集計対象:液晶、プラズマ、4K、有機ELなどテレビ全般(複数メーカー製品を含む)
テレビの平均修理単価は、2000年時点の1万9928円から2014年頃まではほぼ横ばいで推移しているが、2015年より急激に上昇し、2020年には6万円を超えた。
そこから少し低下するが、2023年時点で3万6349円となっており、23年間で1.8倍も上昇している。(図1)
市場の状況として、2013年頃からメーカー各社で液晶パネルのインチサイズを大型化する流れがあり、2017年は有機ELテレビ元年、続く2018年は4K放送開始という流れがあった。
テレビの大画面化ならびに高画質化、Android OS搭載などの多機能化が進んだことが修理費用に影響を与えた可能性が考えられる。
■冷蔵庫
図2:冷蔵庫平均修理単価 単位:円(税込)
集計対象:冷蔵庫全般(複数メーカー製品を含む)
冷蔵庫の平均修理単価は、2000年時点の1万1679円から増減しながら微増している。2023年時点で1万3771円となっており、23年間で約1.2倍の上昇となっている。(図2)
市場の状況として、特定低温室や急冷機能の制御を付加価値として備える高級機種が登場し、操作パネルの多機能化や付加機能が続々と追加された。
平均修理単価の上昇が緩やかであることから、物価や消費税の変動による部品代や技術料の定期的な更新が修理費用に影響を与えた可能性が考えられる。
■洗濯機
図3:洗濯機平均修理単価 単位:円(税込)
集計対象:縦型、ドラム式、乾燥機能付含む洗濯機全般(複数メーカー製品を含む)
洗濯機の平均修理単価は、2000年の1万2910円から徐々に上昇し、2023年時点で2万449円となっており、23年間で約1.6倍上昇している。(図3)
市場の状況として、この期間にドラム式洗濯機のシェアが大幅に拡大。ドラム式洗濯機は乾燥機能の高性能化が進み、縦型洗濯機よりも修理費用が1.5倍程度高くなる傾向にある。これらに加え、操作パネルの高機能化が修理費用に影響を与えた可能性も考えられる。
■ガス給湯器
図4:ガス給湯器平均修理単価 単位:円(税込)
集計対象:ガス給湯器全般(複数メーカー製品を含む)
※ガス給湯器は2000年代のデータが乏しく、正確性を担保するため、2010年以降のデータ
ガス給湯器の平均修理単価は、2010年時点の2万5604円から2023年時点は4万978円となり、13年間で約1.6倍に上昇している。(図4)
市場の状況として、2010年以降に排熱循環方式が採用され、給湯熱効率が大幅に向上した。これに伴い関連部品が増えたことや、点検時期等を連携する自主制御機能が追加されたことが、変動に影響を与えている可能性が考えられる。
■エアコン
図5:エアコン平均修理単価 単位:円(税込)
集計対象:冷蔵庫全般(複数メーカー製品を含む)
エアコンの平均修理単価は、2000年時点での1万3991円から2023年時点で2万2612円となっており、23年間で約1.6倍の上昇となっている。(図5)
市場の状況として、2010年以降に新冷媒R32が登場し、その制御機能が追加され、近年ではフィルターの自動清掃機能が標準搭載されるようになった。これらの機能追加に加え、夏場の猛暑も修理単価に影響を与えている可能性が考えられる。
修理費用の内訳
修理にかかる費用は大きく分けて(1)部品代(2)工賃(3)出張費(配送料)の3つに分類される(※)。それぞれが原材料費や人件費、物流費など様々な要素の影響を受けて変動していることが想定される。
修理対応を行なう各メーカー等も部品代や工賃テーブルの改定を数年に一度実施しており、販売価格と同様に修理費用にも随時反映されている。
※内容によってその他諸経費が発生する場合があります。
図6:住宅設備機器における各費用平均の変動 単位:円(税別)
集計対象:給湯器、エアコン等の住宅設備機器全般
表2:住宅設備機器の修理費用内訳推移 単位:円(税別)
集計対象:給湯器、エアコン等の住宅設備機器全般
※2023年の金額÷2010年の金額
テックマークジャパンの住宅設備機器全般における修理データ上でも費用の上昇が顕著に表れており、部品代の平均は2010年時点の4936円から2022時点では1万1293円となっており、13年間で約2.3倍上昇している。
また、部品代ほどではないものの、工賃や出張費の平均価格も同様に1.5倍以上上昇しており、全体として上昇傾向にあることがわかる。(図6)(表2)
調査結果まとめ
今回の調査により、様々な製品の修理費用が上昇傾向にあることがわかった。修理費用は様々な市場の影響を受けるため、明確に要因を特定、言及することは困難だが、上昇傾向にあることは消費者・エンドユーザーの購買意欲に対して大きな影響を与えていることが想定される。
突発的な高額修理を含め、修理費用の上昇・変動に対して、延長保証を活用することで事前に備えることは可能だ。現在では、購入から10年間などの長期保証も市場に浸透してきており、長期的な修理費用の変動にも備えることができる。
数年後の買替えまでの間は安心安全に製品を使うために、延長保証をうまく活用することも、一つの方法と言えるだろう。
データについて
対象データ/テックマークジャパンが保有する、2000年1月から2023年12月の間に実施された修理情報
対象修理/テックマークジャパンへ申請された修理のうち、延長保証の対象となる不具合
カテゴリー/家電・住宅設備機器など電気的・機械的な製品群
修理費用/部品代、工賃、出張費を含む修理費用総額(消費税を含む)
出典/テックマークジャパン保有データより
関連情報
https://www.techmark.co.jp/
構成/清水眞希