EOS Rシステムのメリットを強く引き出したレンズ
筆者は、広角レンズに関しては、ズームを持っていても結局のところどちらかの端でしか使わない……ということに気が付いてRF16mm F2.8 STMを選んだ。
まぁ、それはそうとして『予算』という制約を取り払った時に、どういった世界が広がるのかを見てみたい気もする。
まずは、このレンズの概要を解説しよう。
筆者は使ったことはないが、このレンズは、EFシリーズの超広角ズーム『EF11-24mm F4L USM』の後継製品という想定で開発されたようだ。
EOS Rシステムの大口径ショートフランジバックというメリットを活かして、EF11-24mmと比較して大幅な軽量化と小型化が図られており、重さは約1,180gから約570gへと半分以下に減少している。また、全長も約132mmから約112mmに短縮され、持ち運びやすさや取り回しの良さが大きく向上している。
このレンズの最大の特徴は、焦点距離10mmから20mmの超広角域をカバーしつつ、ズーム全域での高画質を実現している点にあるのだそうだ。
焦点距離10mmという広い画角により、限られた空間や建物内での撮影においても、周囲を広く写し込むことができる。さらに、風景写真においては、ダイナミックな遠近感を生かした迫力ある表現が可能。また、焦点距離20mmまでカバーすることで、フットワーク良く多彩な画角の中からフレーミングをチョイスすることができる。このあたりが単焦点レンズと違うところ。
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高画質の実現には、12群16枚のレンズ構成が貢献している。特に、スーパーUDレンズ1枚とUDレンズ3枚を効果的に配置することで、ズーム全域において色収差を補正し、色にじみの少ないクリアな描写が可能となっている。
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また、3枚の非球面レンズを採用することで、広角レンズ特有の歪みを最小限に抑え、自然でシャープな描写を実現。広角撮影においても、建造物や自然風景を忠実に描写することができる。
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RF10-20mm F4 L IS STMは、手ブレ補正においても優れた性能を発揮する。レンズ内光学式手ブレ補正機構により5.0段の補正効果を持ち、さらに、EOS Rシリーズのカメラとの協調制御で、最大6.0段の補正効果を実現している。特に、広角特有の画像周辺のブレを改善する『周辺協調制御』が新たに搭載されて、夜景撮影などの手ブレが発生しやすいシーンにおいても、安定した撮影が可能。光量が不足する室内や薄暗い環境での撮影でも、手持ちでの撮影が安心して行える。
部屋の取材などでとても便利そう
筆者の使い方でいえば、狭い部屋の中の様子をレポートする時に一番役に立ちそうだ。
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取材では、対象物と場所をひとつの画角に押し込んで、その場の雰囲気を見せるのにも役立ちそう。
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とにかく、これだけの超広角ズームなのに、縦横の線が歪まないからとてもスッキリした絵が撮れる。住宅関係の仕事の方は、狭い部屋でも広く見せられるからメリットは大きいと思う。
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これ1本で、作品に強い主張を込められる
大きくデフォルメする面白さもある。
たとえば、巨木に寄って撮れば、こんなバオバブみたいな極端なフォルムにすることもできる。
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遠近を強調して、自然の空気間を演出することもできるし、
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水の流れと、景色を一緒に入れ込んだりすることもできる。
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建物のコーナーに寄れば、こんなに極端な絵も撮れる。この角は普通に直角なのだが、どうもそうは見えない。しかし、人間の視界はこのぐらい横に広くもあるから、標準レンズでは捉えられない、人間の視界っぽさを得ることができる。
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人物と組み合わせると、ドラマが生まれる
最後に人物を撮ってみよう。
ワイド端を活かして、風景との一体感を表現してみた。
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実像と虚像、両方を1枚の絵に収めるには、標準レンズでは難しい。ズームレンズだからこそ、適切な画角を探れた絵でもある。
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1本あれば、とても面白そうなのだけど……
安いレンズではないので、おいそれと『欲しい』とは言えないが、やはり価格相応の『スーパー』な性能である。画角が極端なので常用はできないし、たとえば、筆者の取材であれば1日に1カットか、2カットしか出番はないと思う。
しかし、ほかのレンズにはないユニークな表現が可能であることは確かなので、作品作りなどに取り組んでいる人は、このレンズが1本あれば、強い個性を主張することができるのではないだろうか?
(村上タクタ)
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