ディズニーの「パークチケット値上げ」が話題です。しかし、ディズニーが注力している動画配信サービス「ディズニープラス」の最低料金は月額990円(税込)のままです。なぜ、値上げをしないのでしょうか。そこには深いワケがあるのです。(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)
>>前編『こんなん、高すぎて行けないよ!ディズニーの「富裕層シフト」は正しい戦略なのか?』を読む
ディズニーのブランド価値を上げたのは
「庶民の顧客」
ディズニーの「富裕層シフト」が止まりません。
詳細は前編の記事『こんなん、高すぎて行けないよ!ディズニーの「富裕層シフト」は正しい戦略なのか?』に譲りますが、需要と供給で考えれば経済学的にはディズニーが世界のパークの価格をさらに値上げすることはまだ正しい戦略だという結論になります。そしてこれは、野球やサッカーなどのエンタメでも言える話です。
さて、一方で社会学的に考察したときにこの「富裕層頼りの値上げ現象」は社会の在り方として正しいのでしょうか?
まず、なぜディズニーや野球やサッカーの価値が上がるのかを考えてみます。
歴史的に見ればこんな社会がエンタメコンテンツの価値を上げてきました。たとえばアメリカの都市部では、生活が苦しい庶民の子どもが、お母さんに買ってもらったディズニーのTシャツを嬉しそうに着て毎日を過ごしていました。そしてブラジルの街角では子どもたちが楽しそうにサッカーボールを蹴って遊んでいたのです。
つまり、ディズニーもサッカーもそれ以外のエンタメもすべて、庶民の人気の支えがあることで、プレミアムな存在になっているのです。
だとしたら、パークにしてもスタジアムにしても富裕層にしか需要供給曲線が合わない世界は、長期的に社会学的に見たらサステナブルなあり方ではないのでしょうか。
実はディズニーにしてもMLBにしてもサッカーのFIFAにしても、こういった問題構造はよく理解しています。
ディズニーに関しては昨年の記事で詳しく書いたのですが(詳細は『ディズニーチケット1万円超え「高すぎる!」と憤る人が見落としている“3つの視点”』を参照)、ディズニーという会社は企業哲学として顧客を見捨てることはしません。