テザリング組手

テザリング組手

火を見て森を水

throwcurve元ネタ探訪

00年代のバンドthrowcurveの楽曲のうち、元ネタを推測出来たものを列挙します。
2023.10.09 渋谷LOFT9にて開催されたトークイベント、『スロウカーヴは語れない(that made me nasty)』にて出演者が語っていた内容も含みます。
記事の着想は液晶くん(100LCD)のブログSTILL WE CRAWLの記事"ART-SCHOOL元ネタ集"。
およびりょーさんのブログ嘘八百万画素の記事"Base Ball Bearの元ネタ"。

別途、補足できる情報については小文字にて補足。

また、UNISON SQUARE GARDENのインスパイア元とされている楽曲についても元の曲に併記する。
(トークイベントにも出演なさっていたUNISON SQUARE GARDEN田淵智也氏が言及していた。田淵智也氏はthrowcurveが所属していたサークル・早稲田MMTの後輩であると同時に、throwcurveの熱烈なファンでもある。)

OVERUSED (2001)

ブリキ

・イントロからsyrup16gのYou Say 'No'を想起

フレッシュ

・イントロギターは学校のチャイムのメロディ

Manic Street Preatures - Ifwhiteamericatoldthetruthforonedayit'sworldwouldfallapart のアウトロをアウトロとして引用?

UNISON SQUARE GARDEN - スロウカーヴは打てない (that made me crazy) の1サビ終わりのギターは上記チャイムのオマージュかも

前未来 (2003)

ステレオ

XTC - Science Frictionのイントロ(0:00-0:12)
ピアノによる短音の連弾とその後のごちゃっとしたギターの引用
短音はだけでなく、アンディのめちゃくちゃなギターを丁寧にコピーしたギターがリフに流れ込む際のアクセントになっているのが良い

MEAT EATERS - 昆虫
ベースの短音連弾 こちらもXTCの引用?
中村遼氏曰くMEAT EATERSが元ネタと言及していたため、throwcurveが孫引きしている可能性あり
(余談: MEAT EATERSの昆虫は真空メロウの虹色くずの元ネタでもないかと思っている)

UNISON SQUARE GARDEN - デイライ協奏楽団
ステレオのイントロをフィーチャー
XTCの孫引きの引用だとしたら曾孫引きなのか?

レディオフレンドリースローカーヴ (2003)

ステレオ (家庭用ver.)

シングル版とはバージョン違い
・「時に涙にじませて」>「時に涙潤ませて」
・鍵盤(ギターかも)の音が足されている
・3:30ごろ大サビのコーラスが変わっている

tea and mote

タイトルの元ネタはユニリーバの商品「ティモテ

万年床

・1サビ後1:20辺りのギターは、
Radiohead - Airbag冒頭のギターを短調にした雰囲気がある

・3:33ごろのギターのフレーズが鉄腕アトムのオープニング冒頭のジングル(~0:05)

3番線

XTC - When You're Near Me I Have Difficultyのリフフレーズの遅回し

無音ノート/ハッピー (2004)

無音ノート

Unwound - Arboretumの間奏フレーズの引用

・無音ノートの名称は「無音の音」とのダブルミーニング
Mr.Childrenのアルバム「シフクノオト」をオマージュしている可能性がある

・「無音ノート」は音ゲーにおける用語の一つでもあるようだ
一部音ゲー(pop'n musicなど)では、落ちてくるノートに合わせてボタンを押下した際に効果音が鳴るが、その効果音が鳴らないノートを「無音ノート」と呼ぶ、らしい

ハッピー

UNISON SQUARE GARDEN - スロウカーヴは打てない (that made me crazy) の1サビ後のギターはこの楽曲で暴れまわっている関山さんギター意識かも?

Retro Electric Mother (2004)

ドーナツと魔法と針

・曲中で歌われる、「カモン、カモン」のリフレインはThe BeatlesのPlease Please Meからか
この楽曲で歌われれる「カモン、カモン」のメロディは、The Beatlesのそれのネガコピーな音階に聞こえる
LP主流の時代に該当しそうな楽曲が多い
言うほどPlease Please Meのギターって狂ってるかな…?
UNISON SQUARE GARDEN - スロウカーヴは打てない (that made me crazy)に引用があるとトークイベントで中村氏が指摘していたようだ
「アイズワイド~」の部分のリフレインが少し似ているか…?
「凸凹溝を埋めています」はレコードの溝の話だろうから、共通するかも

無音ノート

シングル版とバージョン違い
いわゆるエクステンド
・シングル版開始3秒間の鼻歌ラフがオミット
・代わりに約55秒のイントロが追加
・次のghost noteに繋がるアウトロが追加

ハッピー

次曲のイントロに繋がる部分がアウトロに追加

nice parade

mice paradeのもじり

841

アナログフィッシュ Living in the Cityのサビのリフレインが似た印象
2004年リリースのこのCDよりも、アナログフィッシュの方が2006年と遅いので、throwcurveの方が元ネタかも、よくあるメロディとも思うので同じ参照元かも
両バンドは交流があるようなので記載
ボーカル中村氏とアナログフィッシュの作曲の二人はいずれも長野出身である

ミライエコーE.P. (2005)

フレッシュ!

OVERUSEDの楽曲の再録

ニューワールド ハートビート (2005)

サーモ

・イントロの高音はPavementのStereoを意識している(トークイベントより)

UNISON SQUARE GARDEN - 夕凪アンサンブル

UNISON SQUARE GARDEN - スロウカーヴは打てない (that made me crazy) の間奏ギターに引用があるとのこと 2:20辺りのギター?

せかいのまど

XTC - My Bird Performs のギターリフ 

連れてって

Cap'n Jazz - Take on Meが元ネタ?
throwcurveはライブの出囃子がCap'n JazzのTake on Meである

UNISON SQUARE GARDEN - スロウカーヴは打てない (that made me crazy)にて引用されている
イントロと歌詞の一部、「テイクミーアウト」等

アルファ

前未来の楽曲の再録
・「放映したって」→「オンエアしたって」
(サブスクリプションの歌詞ではどちらもオンエアだが、歌詞カードでは前未来の方が「放映」である)
・軽快だったリズムからスネアの音数が引かれよりゆったりとした雰囲気に
・次のRemix楽曲までの無音区間が45秒ほどある

リコール (2007)

表現は自由(that made me mad)

UNISON SQUARE GARDEN - スロウカーヴは打てない (that made me crazy) にて引用されている
見ての通りサブタイトルも引用である
サビの後半部分「I must doubt~」の部分にて引用

動物

P.J. HARVEYのRid of Meを参考にしている(トークイベントより)

XTC - The Smartest Monkeys の雰囲気もある

UNISON SQUARE GARDEN - WINDOW開ける
 P.J. HARVEYの孫引きとなる

UNISON SQUARE GARDEN - スロウカーヴは打てない (that made me crazy) の1サビ後のギターはこの楽曲で暴れまわっている関山さんギター意識かも?

マスターテープに起因するノイズ

・イントロの環境音、「コーヒー」に関する歌い出しから、
Mr. Childrenの友とコーヒーと嘘と胃袋をインスパイアしたと推測

・ベースから XTC - Living Through Another Cuba を想起

Recalled

都会の生活の間奏部分がサンプリングされている

201X (2010)

N.I.P

XTC - Making Plans for Nigelイントロのカッティングギターを想起

DEEP CUT IN THE DUGOUT 2006 - 2010 (2023)

世界のはじまり (2023 Remaster)

第3世代compilation album vol.2に収録されていた
一時期動物のデモ版と共にMySpaceで聞けた…ハズ

都会の生活

・「生活がしたいんだ」のラインはMr.Children - 渇いたKissの「性格を少し呪うんだ」の引用か
曲全体のメロディもどことなく似ているかも

UNISON SQUARE GARDEN - いつかの少年

エーとビー

ビバリーヒルズ青春白書のオープニング(トークイベントより)
分かるわけないでしょ!

・この録音バージョンとこの後に収録されているShibuya PLUGでのライブ音源では、ラストの展開で思いっきりMr.Children - Tomorrow Never Knows(Oh Oh Tomorrow Never Knows)を歌っている
(ということは、ラストの「オッオ~」を繰り返す一連はTomorrow Never Knowsの「オッオ~」である)

UNISON SQUARE GARDEN - メッセンジャーフロム全世界
イントロを引用、孫引き。
UNISON SQUARE GARDENの演奏のほうが元ネタのビバリーヒルズ青春白書に近づいてるのは面白い
隔世遺伝的

ブラックバード

AIR CATALOG 2006 STEREOGLIDER SAMPLERに収録されていた

3番線 (new version)

AIR CATALOG 2006 STEREOGLIDER SAMPLERに収録されていた、3番線の新録版
・アルバム版にはなかった3連フローが追加されている(3:24~)

No Fantastic

イントロで BURGER NUDS - 空気清浄機 のソロ部ブレイクが引用?

21世紀の退屈

Pink Floyd の楽曲"21st Century Schizoid Man" 邦題「21世紀の精神異常者」のもじり

ブラックフライデー(黒い金曜日) [from studio rehearsal tracks "EVERYWEEK MONDAY & THURSDAY 8-11PM"]

これもMySpaceで聞けたバンド演奏版…AudioLeafかも?
・201X収録版と違い、打ち込み主体の電子音は少なく、バンド演奏
・ライブだとこちらのバージョンで演奏してる?合いの子かも

ダインシングクイーン・イズ・デッド (from studio rehearsal tracks "EVERYWEEK MONDAY & THURSDAY 8-11PM")

スネアから始まる部分はTalking HeadsのOnce in a life time (こじつけ気味)

動物 (studio session #04)

一時期世界のはじまりと共にMySpaceで聞けたバージョン

メリークリスマス

・3:57~からのスキャット(ルトゥルル…)のメロディはAPOGEE - Slowmotionのサビのスキャット(ラララ…)と重なる

 

以下テテから僕らについてすべてまでは、実現しなかったアルバムのデモ音源
中村氏のNOTEにて各曲の解説があるので、そちらを見ると良いです

 

テテ (demo session for unrealized album "all about us")
表現は自由 (demo session for unrealized album "all about us")

アレンジと歌詞が一部違う
・「尖り始めた活字がこの眼を刺した」→「尖り始めた活字でその夢(眼)を刺した」
・ギターソロの前半部分が半拍(?)後ろにずれている
・「編集されている 見てるもの全部」→「編集されている 見て来たもの全部」
・「手に入れたいけど見つかんないものばっかりさもう諦めろ」→「手に入れたいけど入れらんないものばっかりがまたあふれ出す」

オールアバウト ミュージックチルドレン (demo session for unrealized album "all about us")

ミスチルタブ譜「オールアバウト ミスターチルドレン」がタイトルの元ネタ?

革命のマナー (demo session for unrealized album "all about us")

アレンジと歌詞が一部違う 氏のNOTE通り歌詞があまりできていないのが分かる
大サビ前の「バンザイ!」は健在 どころかボーカル二人で叫んでる こちらも良い
・「中指を立てろ」→「中指を立てる」

・サビの折り返し地点(ばしばしハイハットの開閉をするところ)のリズムが食っている
・「行き場も知らないないこんな感情のこと」→「名前も付かないこんな風景のこと」

エーとビー (demo session for unrealized album "all about us")

歌詞が一部違う 上手く聞き取れず
・「だって明日はまたリセットされるから」→「だって僕らまたリセットされるから」

僕らについてすべて (demo session for unrealized album "all about us")

歌詞が一部違う
・「できるだけ僕らに」→「そうだ僕らに」
・「なにもないつづきがはじまって」→「さっきまでがまたはじまって」
・完成版「君とつないだ手から~」の一連が未完成
・「だから僕を呼ばないで いつの間にか忘れちゃったらいいよ」→「だけどほんのちょっと待って さっきまでがまたぶつかったんだ」
・「そうすれば思い出せる 忘れたこと思い出せる」→「僕はなにを告げる 今僕はなにを出来る」
・「取り戻すたびに無くして」→「取り戻してまた無くして」
・「だからちょっとさよならです」→「だけどほんのちょっと待って」
・「立ち上がって急にふらついて」→「立ち上がって歩き出したって」
等々

 

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情報や誤情報の訂正があれば適宜連絡下さい。

Tractor Rape Chain (Guided By Voices) 拙訳

Why is it every time I think about you
あーいつも目に浮かぶのは君なんだ

Somethins that you have said or implied makes me doubt you?
思わせぶりな言動にうんざりしてるけど

Then I look into your cynical eyes and I know it
気だるげな目のうちを覗けば

As if never meant anything to me
なんてことはなかったんだ

 

Parallel lines on a slow decline - tractor rape*1 chain
わだちは引きずられ トラクター・レイプ・チェイン

Better yet*2, let's all get wet on the tractor rape chain
すべてを 濡らしつくせたなら トラクター・レイプ・チェイン

Speed up, slow down, go all around in the end
フラフラ 転がり続ける

 

In the first place, it's probably just paranoia
言ってしまえば ただの妄言だよ

But there's a ghost in my room and he says I better run
頭に声が響くんだ 「逃げれば?」

It's a thing I know, it's athing I believe in
言われなくとも いつだってビビってる

Won't you tell it to go away?
黙らせてくれないかい?

Parallel lines on a slow decline - tractor rape chain
わだちは引きずられ トラクター・レイプ・チェイン

Better yet, let's all get wet on the tractor rape chain
すべてを 濡らしつくせたなら トラクター・レイプ・チェイン

Speed up, slow down, go all around in the end
フラフラ 転がり続ける

Speed up, slow down, go all around in the end
のらくら 転がり続ける

Speed up, slow down, go all around in the end
フラフラ 転がり続ける

 

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多作で有名なRobert Pollard(曲爺)*3率いる、アメリカのインディ・ロックバンド、Guided By Voicesの7枚目のアルバムBee Thousand*4収録の一曲、Tractor Rape Chainを拙訳しました。1994年6月21日リリース。

セイヨウアブラナの種を蒔くトラクターの車輪の跡(わだち)を人間関係になぞらえた楽曲です。
後述の通り元楽曲を辿れば、おおかたの予想通りに恋愛の楽曲なんだけど、"beautiful"が"cynical"になっていたり、(頑張れば)悪友について歌ってるようにも読めるのでそう訳しました。(立ち行かない)人間関係って、性別関係ないですし。男同士でも難しい間柄はありますもんね。好みじゃないし。
わだちを交わらない平行線として捉えて歌詞にしているのが肝要のようで、でこぼこ道を進みながらも近づけない決して交わらない二本のわだちが二人ってことなんですね。交わらないままずーっとぐるぐる回ってる。
Better yet~の歌詞は元楽曲の頃からある一節ですが、急に「全部濡れちまえ~」となっているのが自暴自棄な雰囲気あります。散水も一緒に行われてる農場なのかな。

 

海外の楽曲・歌詞・まつわる情報のウェブサイトGENIUSを調べると、この楽曲には二つの下敷きとなった楽曲が存在しています*5

ひとつは、Guided By Voicesの前身バンド・Coyote Callの"Tell Me"。どなたかの違法アップロードで視聴できちゃう。サビ以外のメロディと歌詞がほとんどそのまんまTractor Rape Chain。
Beautiful eyes, Love's Dilemma等々の歌詞に読めるように、男女の恋愛を描いてるよなあ*6
面白いのが、二番のサビ前"And don't you tell me to go away" 「(僕に)消えろなんて言わないよね?」という部分が、Tractor Rape Chainでは頭の中の声(ghost)に対しての言葉と読めるように改変されていること!省エネだ。

ふたつめは、5枚目のアルバムPropellerにて未収録となった楽曲"Clean It Up"。こちらはTractor Rape Chainの印象深いサビ"Parallel lines~"が聞けます。
人間関係の難しい局面を森林の獣道(Trackless rat)になぞらえて喩えて、そこから人為的なわだちに繋げている雰囲気。最終的には片づけろ(Clean it up=あきらめろ?)と繰り返して終わる2分ぐらいのデモ楽曲。


未だ年間3枚のアルバムとか出している精力的なモンスターバンドGuided By Voices。初期の曲からぽつぽつ聞いていてもいい曲が沢山あります。何故なら曲が沢山あるからです。
曲爺長生きしろよ~~!!!!

 

歌いました:

soundcloud.com

ギターも打ち込んだので大変でした。シンプルだけどとてもいい楽曲ですね。
宅録・短時間でレコーディングされた」というインタビュー通り、かなり演奏がスラックでワロタ*7

コード等を参考にしました: 

https://www.youtube.com/watch?v=XjQbfrym39g

サンキューJovian

*1:Rape: セイヨウアブラナ(菜の花)を示す英単語です

*2:Better yet~: いっそのこと~、~ならいいのに

*3:曲爺は仲間内における敬称

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本業は教師らしいのだが、ライブ映像なんかでビールガブガブ飲みながら名曲をちゃらんぽらんに歌い上げる白髪のおじいちゃんからは想像もつかない

*4:ロックマンX6の最初のステージのボス、D-1000ってこのアルバム名から来たりしてない?

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とてもいいアルバムです
Tractor Rape Chainの後には大体The Goldheart Mountaintop Queen Directoryという楽曲が入っており、明るくも切なく終わる楽曲の後に飛び込んでくる暗くて落ち着いたシンプルなアルペジオ
流れで聞いてみて欲しいです

*5:Guided by Voices – Tractor Rape Chain Lyrics | Genius Lyrics

*6:Coyote Call – Tell Me Lyrics | Genius Lyrics

*7:Bee Thousand - Wikipedia

の"Recording"の項目下部。アルバム全体で3日、リハなしの短距離走レコーディングだったらしい。

アコー浪士スティック

2024年も7月に入り、折り返しを迎えました。期間って概念、クソっすよねえ。廃れて欲しいです。

落ち着いたモードでよく聞いている、今年リリースされた音源をまとめます。
フォーク・アコースティック・ソロワークスの雰囲気が通底している。
アコースティックな音源!とまとめたかったのだが、残念ながら、アコースティックギターの響きなのか、クリーンギターの響きなのか、僕の耳では判断付きませんわ。ほな。

 

Tapir!

"The Pilgrim, Their God and the King of My Decrepit Mountain"
(Jan 26th)

テイパー*1。バクの意味。
サウスロンドン出身の、サックスやコルネット、チェロの演者を擁する、フォーク・アートポップの楽曲を演奏する6人組。

1月26日に発売されたデビューアルバムは、2023年にリリースされたAct 1 (Pilgrim)とAct 2 (Their God)の2枚のEPと、続くAct 3 (The King of My Decrepit Mountain)をまとめた、各面4曲ずつ、計12曲44分の音源。

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アコースティックな楽器は、デジタルなリズムマシーンに乗って鳴らされる。的確なテンポの中でふんわりと合奏している雰囲気が心地よいです。鼻にかかったクセのあるボーカルが、コルネットが、たまに裏返ったりトチったりしながら演奏され、そのまま音源化されてるブレが何度も聞いていると楽しい。

Act 1の3曲目から、Swallowのライブ映像。生ドラム仕様!
音源よりはっきりした緩急がスタイリッシュ!かっこいいです。
生ドラム演奏の音源も作ってくれないものか。
ライブ盤とか…AudiotreeでもKEXPでも招聘してくんないかなー。

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Katy Kirby

"Blue Raspberry"
(26th Jan)

Katy Kirbyはアメリイリノイ州ナッシュビル出身、ブルックリン在住のシンガーソングライター。クィア*2

今作Blue RaspberryはANTI- Recordsに所属してから初めての音源。
ストリングスやピアノを過不足なく取り入れた楽曲は、クィアにとってのロマンスの探求をテーマにしているそう*3

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表題曲である10曲目Blue Raspberryに至るまでは、ゆったりしたリズムでふくよかな音像の楽曲が並んでいる。
表題曲の荘厳なシンガロングが終わった後に差し込まれるのが、11曲目Table。スタートから今までの楽曲と一線を画すラフさ、一節を歌った後にすかさず飛び込んでくるエレキにドラムは、今作で最も前作のエッセンスが感ぜられる楽曲です*4

話題に挙げたTableの、2022年のライブ映像。
この段階では音程が音源よりも高かったんですね。
Katy Kirbyは1stのジャケットにも本人が写っていますが、たたずまいがとてもかっこいい。

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Itasca

"Imitation of War"
(9th Feb)

アイタスカ。アメリカはイリノイ州の街の名前です。同名の湖が由来。
Itascaはロサンゼルスで活動するギタリスト、Kyla Cohenによるプロジェクト*5

5枚目のアルバムであるImitation of Warは、Pitchfolkには「ポストパンク・(デュアル)ギターロックを背景とする」「忍耐強くトンネルを掘るような演奏」と評されている。
ギター主体で進む楽曲が、Cohenの歌、オーバーダブされた二本目のギター、バンドサウンドを携えて10曲収録。

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1曲目Milkから、決して明るいとは言えない、落ち着いた演奏と歌が始まる。最後の最後で明るいメロディを弾いたギターからなだれ込むのは、ど頭からのバンドサウンドが特徴的な表題曲、Imitation of War。
その後も、ギター主体の楽曲が続き、8曲目に繰り出されるのが名曲Easy Spirit(やすらかな心)。9分に及ぶこの楽曲は、今作の中でも抜きんでてリズムに重きを置いており、バンド全体が刻むリズムが心地よい。歌詞の途中からなだれ込むコーラス部分には、歌が先導してステップを踏んでゆったりと突入、遅回しのテンポでタイトルを歌う。

表題曲Imitation of Warのミュージックビデオ。レトロな雰囲気の映像は楽曲の雰囲気と合致します。楽曲・歌声には70年代の女性SSWに通底する静謐さがある*6YouTubeに上がっているライブの映像は今作の楽曲を演奏しているものが無く、今後に期待。*7

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Blue Bendy

"So Medieval"
(Apr 12th)

イングランドスカンソープで活動する2017年結成の6人組*8
同郷のSquidとの共演経験がある、クラウトロックやエレクトロニックを経由した、ピンボーカルのバンドです*9

今作"So Medieval"は、2022年の前作Motorbike EPの自作、Blue Bendyにとって初のアルバム。10曲入り、軽妙なArthur Nolanの歌詞と歌、そこに寄り添うバンドの演奏を携えた36分。

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10曲、余すことなく、ピンで自由自在に語り歌うArthur Nolanのボーカルが、バンドサウンドを巻き込んで縦横無尽に暴れている。

彼の喉にかかった癖のあるボーカルは、「粘りがある」とか「Robert Smithに匹敵する艶*10」などと評されていますが、私が想起するのはThe Smithsモリッシーモリッシーってラッパーじゃないの?
歌い方は語り口調から癇癪起こしたような歌唱、スキャット、口笛、熱唱、絶叫まで幅広く楽曲の心地よい緩急に寄与しています*11。まさに演劇的。ある意味分裂的?
狂気的に精緻な録音は、Arthur Nolanの舌が口蓋に触れる音まで収録しており、アルバムの珍妙さ、居心地の悪さ演出しています。非常に評価したい部分の一つ。

バンドの演奏は基本的にはボーカル本意を貫いています。軽妙・軽薄で意識の散らばった歌詞と歌がバンド演奏のグルーブと渾然一体になって結実するのが、アルバム最終版、9曲目のCloudy*12。2023年末ロンドンでのライブ映像、非常に熱いです。
にしても天使の羽付けてライブする人、七尾旅人さん以外にもいたんスねえ。

www.youtube.com

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youbet

"Way To Be"
(10th May)

アメリカはフロリダ州の南の生まれ、ブルックリン在住であるNick LlobetとJojo Quinn、Micah Prussackによるスリーピースバンド*13
ニューヨークに出て来るも意気消沈していたNickは、駅で偶然出会ったPatti Smithとの接近によって再度創作活動に打ち込むようになった、という逸話があるそうです*14

今作Way To Beは、2020年のデビューアルバムから4年ぶりの2ndアルバム。甘くポップな楽曲が並んでいた前作とは異なり、Nick曰く「自分の魂の奥底」からの、陰影の濃い楽曲が12曲。

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1曲目のCarsickはギターの轟音から火蓋が切られる名曲。轟音からすぐに飛び込んでくる歌声の儚い美麗さ、メロディの温度差が心地よい。表題曲Way to Beに散見される、半音を噛ませた音運びはこの作品の自己探求の雰囲気に合致している部分。

陰影の濃い作品とは言うものの、スリーピースバンドとしてJojo, Micahが生むどっしり構えたグルーヴは内向的な作品の足取りをしっかりと前に進めています。

(6曲目Doは混沌、悪夢的な音像で他の楽曲とは一線を画しています。この曲神経過敏なからはMemory MapのDark Freshmanを想起。)

中性的でハスキーな声は、草野マサムネというよりかは初期の七尾旅人スガシカオに近い。近しい所で言うとCorner of Kanto*15のボーカル・音楽スタジオさんにとても似ていて、youbetを発見した時には興奮しました。Corner of Kantoのファンは是非聞いてみてほしい。共演してくれ~。

5曲目、Alive To Youのスタジオライブ映像。音源だと淡々としたリズム、爪弾かれるギターが落ち着いた印象を抱かせる楽曲ですが、このライブ映像では音程を下げ、よりエネルギッシュな歌唱、演奏が見られます(Jojo Quinnは音源だとあんまりシンバルぶっ叩かないんですよ!)。コーラス後に挟まるNickのギターもたぎりまくっている。

youtu.be

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Asher White

"Home Constellation Study"
(28th Jun)

アメリカはロードアイランド州州都プロヴィデンス出身、2000年生まれのシンガーソングライター、マルチプレイヤー、プロデューサー。She/ Her。
立体物なんかも作っているみたいです。ホームページでは日々の習慣について語る動画や作品などが紹介されている。

今作Home Constellation Studyは…数えると15枚目のアルバムらしい?サックス・トロンボーン奏者、サンプリングプログラマーを招いています。それ以外は全部Asher Whiteが演奏!ミックスまで一人。ジャケットもAsher Whiteの作品だそうです。Bandcamp下部に演者詳細が書かれています。読んでみるとユーモラスで面白い。
ジャンル横断的ながら手造りの雰囲気満載な11曲を収録。

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開幕、Asher Whiteの綺麗なコーラスが明けた先に待っているのは底抜けに明るいサンバ、Theme From Leaving Philladelphia。
フォークの雰囲気がある2曲目の次には、ロック・ポップな楽曲Dream Design House。
5曲目には凶悪なノイズ、ハードコアを携えながらリズムを刻むバンジョーの音が箸休め的に心地よいDownstate Prairie。するりと落ち着いたパートに着地するのも面白いです。
歌で聞かせる名曲、You Are ForgivenとSlow Wheel of the Yearを抜けた先には速いロックHynm。こちらは前作にもバージョン違いで収録されています。
最後には1曲目を想起させる明るく軽快なリズムのSymposium。

明るく勢いよく聞き始められ、明るい入り口と出口以外には多彩な楽曲を抱えた、聞いていて飽きない、じわじわ沁みてくるとても良い作品です。

アコースティックギターとベース、バンジョー、その他の小物で演奏される7曲目Slow Wheel of the Year。穏やかな名曲。

www.youtube.com

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ジャンルってムズイな!な~んも分からんわ。ほな。

 

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*1:タピアーという発音をする人もいるとか。ブラジル先住民のトゥピ語が由来。
バンドを調べる過程で、バクの動画が沢山サジェられるようになったのでおすそ分けします。

youtube.com

*2:Katy Kirby's 'Cubic Zirconia' Is Entrancing | News | Clash Magazine Music News, Reviews & Interviews

"the track dwells on queer identity, love, and the narratives we build for ourselves."
"I've been trying to write this song for nearly four years, but it only came into focus for me when I fell in love with a girl for the first time."
「この楽曲にはクィアとしての自己認識、愛、(我々が自身で作り上げる)物語が宿っている」

「ほとんど4年間の間この楽曲に取り組んでいたのだけど、初めて女の子を好きになった時にようやく焦点が合ったんだ」

*3:Katy Kirby Interview: 'Blue Raspberry' And Queer Love Songs

*4:前作Cool Dry Placeは歌だけでなく楽曲で聞かせる、ポップやロックの要素も感ぜられる楽曲が多くとても聞きやすい雰囲気です。結構話題だったみたい。知らなかった…教えてくださいよ。こちらも聞いていきたい。

*5:ITASCA – Paradise of Bachelors

*6:Judee Sill, Hendrickson Road House, 70年代じゃないけどRebecca Gates(The Spinanes)の曲を想起します。

ところでRebecca Gatesのソロの"&&&"は音源のバンド編成じゃなくて動画の弾き語りバージョンのほうが断然いいわな。弾き語りってなるだけ楽器少ないほうが良いってことがあると思うよ。

*7:実はItascaは丁度先日7月9,10日に来日して演奏していました。
渋谷は7th Floorと京都のUrBANGUILD。京都の方は行ったことが無いけど、7th Floorにはバチバチにハマるでしょうね…。名演だったこと必至。もっと早くに知れていればなあ。Twitterなんかで検索かければ有志の挙げた映像が見れます。撮ってよかったんかな。

*8:Blue Bendy: So Medieval Album Review | Pitchfork

*9:ORM - Interview – Blue Bendy

*10:ORM - ロンドンのアートロックバンドBlue Bendy。デビューEPのリリース発表&新曲公開!

*11:似たボーカルで思いつく現行のUKバンドだと、TV PriestFEETなんかが想起されます。どちらもとても大好きなバンドです。
こちらの記事も参考 Blue Bendy - So Medieval | ele-king 
昨今ポストパンクシーンで流行ってる歌い方なんですね。
しかし、今回書きたかったことは全部ここの記事に書かれているし、何なら一番最初に紹介したテイパー!まで紹介されている始末。

*12:大仰・演劇的な歌唱、それに呼応する楽器隊の、混沌としたアンサンブル、されど胸を熱くする展開は、ちくわさんがドラムとして所属していた頃のPot-pourriを想起します。2018年ごろ?Pot-pourriはピンボーカルじゃないけども。

今の編成になってからだと、YUNOWAとのライブの際の演奏がなかなか混沌に振り切っていた覚えがあります。プログラマーとして在籍している(仮)ズの液晶君が、リアルタイムで行う音のグリッジがもたらすめまい・死角からの投擲、是非体験して欲しい。

2ndアルバム収録のComic。静かなブレイクを終えた後の、心地よい伸びやかなアコースティックギターのリズム・ボディの鳴りが容赦なく切り刻まれるカタストロフィたるや。

www.youtube.com

*13:youbet: 2024 | WFUV

*14:youbet – Hardly Art

*15:

 www.youtube.com

多様性 記憶喪失の

解離症を発症しました。2024/2/1~7あたり。
2021年の6月にも経験済み、今回が二回目です。

例えるならば解離症は脳・記憶の脱臼。
落ち着いた後に起こるのは記憶のデフラグ
記憶障害(喪失)は起こるけど、自分が自分であるという確信はあります。

備忘録としてブログ記事として以下にまとめます。
文字通り本当にまた忘却した場合に備えてんだよ。

 

症状・所感

以下に予想される要因と、その結果起こる具体的な症状を羅列していく。

浮遊感・夢見心地+不安感

  • 現実感の欠如・瞬間的意識(連続性の喪失)・コミュニケーションの欲求
    気づいた時、たった今、居眠りから起きたかのような感覚
        突然その場に出現した感覚(ワープとかスポーンのような)
        =実存の連続性を確信できない
        気付いた瞬間の意識ははっきりしている
    過去の出来事が定期的にフラッシュバックする
        想起に頭が使われ続ける そのため、思考の阻害が起こる
        3歳ごろ(最初期の記憶)から現在、その日の出来事まで
        自分が体験・知覚したものであると確信が持てず、不安であり、確認したい
        記憶障害ではあるが、確信が持てないという要因である
    上記の不安由来の確認欲求は、人に確認してもらうことで和らぐ
        業務であれば同僚に、昔の出来事やニュースであれば友人に確認していた
        実存の連続性を交流に仮託していたと言えるかも
    直近数年、特に年末年始の記憶が欠落していた
        最も具体的な記憶喪失、ただし部分的
    記憶は奥行きがあるものだが、それが測れない
        記憶のZ軸が潰されて二次元になる感覚
    身体的な感覚も、実存を確認できる手段であった
        今回は性欲が強まった
        (これは生物としての本能が剥き出しになったとも考えられるが)
        悪い方向に進んだ場合は自傷に繋がった可能性あり

不安感+健忘

  • 虚脱感
    移動での疲れが普段より強い
        不安要因(精神面)か?
    睡眠時間を確保していながらも、強烈な眠気が突然訪れる
        気を張っているため?また、当時は喉風邪がひどく、また天候も悪かったため、睡眠の質が落ちていた可能性はある
    繊細な作業が難しい
        動きの癖が抜けているのか、はたまた気持ちが不安だからか、手の仕事をする際に指や腕が震える

健忘+散漫

  • ド忘れ・文章を読めない
    ・様々な事柄について、ド忘れが起こる 例えば…
        *ことば
          単語・熟語・日本語英語拘わらず
          漢字もパッと思い出せない、書くのに時間がかかる
        *ルーチンワーク
          仕事も生活も: 業務内容、予定etc/
          洗濯槽を開けたら、乾いた衣類が発見されたことも
          (かなりショックでした 本当に洗ったのか、洗う前だったのかは分からない)
        *空間
          よくモノや壁にぶつかる…家でも職場でも
          普段から過ごしている空間の設備配置とともに、移動のクセもド忘れしているものと思われる
          知らんところに青あざが出来ていたりする
        *無駄遣い
          スーパーでも薬局でも、別に必要ないものまで買ってしまう
          そりゃ家になにがあるか忘れてるもんね!
          おかげでおやつには困らなかったです 生ものじゃなくて良かったね…
    ・長い文章を読むときに集中して理解が出来ない
        目が滑る感覚

定期的に「あれ?何してんだっけ*1」とハッとする場面があると、人間は結構疲れる。
ストレスです。
普段ソツなくこなせる作業について「これはどうするんだっけ?」という健忘も、不安感を煽りますし、効率も落ちる。
それぞれの症状は、それぞれがそれぞれの要因であり、結果でもある。

※解離性同一障害(いわゆる多重人格)ではない。
    最初にも書いたけど、自分が自分である実感はある。
    確信が持てないのは、自分の実存と記憶に対してのみです。

 

一方、解離症になったがために良かったことも数点あった。
そちらも折角なので紹介します。

良かったこと

  • 嫌な感覚が持続しない
    食べ忘れていた、ボケきったリンゴを食べたが、健忘なので食べたことを忘れていて得をした
    口の中に残ってる果肉のかけらで気づきました
  • モチベーションが定期的にデフォルトに戻る
    気付いた場面が実存感覚の開始段階として機能する=言うなれば起き抜けの状態
    洗い物・ゴミ捨て・筋トレの疲労感や倦怠感に対して鈍感になる
    発症中にはフィギュアケースの組み立てをしたし、溜まっていた洗い物を片付け、新たに料理した後にもササっと洗い物が出来た
    (発症中はフィギュアケース見るたびに「いつ作ったんだ!?」と思っていた)
    解離してる時の方が家事できるよ
    治って思うのは、正常な状態で生活をしていくなら自分を律する力がとてつもなく要るということです
  • 新鮮な気持ちで音楽を聞ける
    かなり最高!
    何度も聞いている音楽は、先の流れまで覚えてしまっているものです
    これから何が起こるのか、再度分からないまま好みのものを聞けるのは最高
    好みの音楽は変わってなかったです
    The Futureheadsの1stを聞いていたく感動した
    あれはすごいアルバムです!
    「記憶を消してもう一度やりたいゲーム」みたいなのもありますけど、ゼルダのBotWもOuter Wildsもやらんかったな…もったいなかったかも!

 

経緯・改善要因

経緯

2024/2/1の就寝時、発症。
健全な方は実行して良いことがない。
(浮遊感があって最初は気分がいい
そのうち不安感が勝って抑うつっぽくなってしまう)
そのため、トリガーについては以下に範囲選択で浮かび上がるやつにしときます。
試してみないでね!(逆けんた食堂)

スマートフォンで見てる人って白隠し文字どうやって読んでるの?
クリックしたら展開される形式にしたかったのですが、上手くいきませんでした。
有識者の方はやり方を教えていただけると幸いです。

過去の記憶とその整合性を考えたり、失敗した出来事を思い出して後悔や反省を繰り返すことをトリガーとする。ストレスが重なると、離脱感を得られる。その感覚を握り続け更に思い出しと反省を反芻し続けると、持続的に自己の連続性や実存への不信感に繋がるので、そうなればもはや解離症に落下していくだけである。
宇宙ヤバイ*2」のコピペに大真面目に向き合った時=宇宙の規模を思考し、自己の矮小さを痛感している時に近しい。

2/6に症状が改善するまでは、上記した症状に悩まされていた。

症状改善後は、感銘を受けた音楽やらなにやらを思い出して再度感銘を受けつつ、段々と記憶の距離感が治っていく感覚だった。
2/6,7辺りはまだ過去の記憶のフラッシュバックと確認の思考は頻発はせずとも残っていた。
日ごとにかつての記憶感覚が戻っていくのが記憶のデフラグみたいでした。

改善要因

想像される改善の要因は、症状を手書きでノートに書いていったこと。
2/6に、2/1からの症状を体験や所感込みで記述していった。
この記事も、そのノートなどを基に書かれています。

記述していく中で症状の把握及び連続性の確認ができました。
更に文字を手書きする=カナや漢字を書くという行為が脳に上手く作用したのかもしれません。

 

考えたこと

上記改善要因については、同じ症状で悩んでる人は試してみるといいかも。
僕も再度発症したらまたおこなってみます。
だけど何より大切なのは毎日の十分な睡眠かもね!

あとは下らない記憶の確認に付き合ってくれる、くだらなさを一緒に笑ってくれる友人との会話の場も持っておくべきです。
これは解離症に限った話ではない。
下らないことから真面目なことまで、ある程度深くまで話せる友人を持ちましょう!
2021年の時も今回も、付き合ってくれた皆さんありがとう。
おかげでまた治りました。
次もお願いします^^

理解しにくく大変そうに見える症状かもしれませんが、僕の場合はそこまで重く考えていません。
そもそもブログにまとめた理由も、
「久々にブログ記事にできそう。
   ネットで繋がる知人友人の知見にも繋がるなら有益だよね」
程度の思いつきですし。
同情したい場合は解離症を発症した上で出直して来てくださいね。

実際に一部記憶が抜け落ち、他の記憶は距離感が掴めなくなり…という症状に悩まされますが、治ってしまえばこちらのもんです。
咄嗟の武器としてガンガン使ってやるのがお得です。
「解離症だったんだ」を伝えておけば、「忘れちゃったみたい ごめんね」でそれ以上追究されない。
少なくとも近い関係においては。
あなたは記憶障害起こした人にそんなこと言われて追究を持続できますか?
出来ない人が多いと思うんだよなー。
結果
便利!

*1:似たような歌詞のあるMr.Childrenの楽曲『ランニングハイ』は解離症の可能性があるね

*2:それにしてもニコニコ大百科は便利ですね…

dic.nicovideo.jp

シポウルスポール考 (The Last Remnant)

みんな!ラストレムナントって知っていますか。
スクウェア・エニックスが2008年にXBOX360とPC向けに販売した、集団戦を行うRPGです。
2018, 19年には、PS4やSwitchでリマスター版が出ています。

www.jp.square-enix.com


軽い気持ちでオススメできない作品ですが、どうしても好きだし、やっぱりオススメしちゃいます。
端的に表現するとしたら、ロマンシング・サガ3のコマンダーモードで操れるパーティが複数あり、更にフィールド上の位置関係の要素が足されたようなゲームです。
ロマンシング・サガ3を知らない場合は、すみません。

もしも、あなたがこのゲームを遊ぼう、と思うような勇者である場合は、PC版Wikiを読みながら遊ぶことを推奨します。

wikiwiki.jp

 

この記事では、ラストレムナント日本版に出てくる術法・シポウルスポールの語源について考察していきます。
考察とは名ばかりで、ググりと感想文の羅列に過ぎませんが…。

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シポウルスポールって何?

ラストレムナントでは、ファンタジーで言う魔法や術は、ミスティック・アーツ(Mystic Arts、MA)という名前で登場している。
MAには、突撃術法、狙撃術法、工作術法、救助術法、戦術術法、戦略術法、6つの体系がある*1
各術法を、複数人で合成して発動する全体範囲のMAが禁忌術法。

今回考察していく、「シポウルスポール」という名前のMAは、この禁忌術法に属している。
合成元は、状態異常を目的とする工作術法。3人で行う。
敵全体に、沈黙・麻痺・毒・ピヨリの4つの状態異常を与えつつ、打属性の特大ダメージを与える術である。


こんな感じ↓

くさそう

ゲーム中の記述は

全ての敵ユニオンに術法ダメージを与える。まれに対象を複数のステータス異常にする

というもの。

複数の人員=ユニオンで成り立つ隊=ユニットと対峙することとなるラストレムナントにおいては、全体攻撃がいかに頼もしいことかは言うまでもない。
更に、このゲームは状態異常がとても強い。
このような理由から、シポウルスポールのことを頼もしく思いつつ、その耳なじみのない、されど小気味よい名前を忘れられずにいるマニアクスたちも少なくないのではないだろうか*2

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シポウルスポールの元ネタ・語源探訪

さて、この奇妙な謎の単語、シポウルスポールを探っていこう。

英語版 The Last Remnant のシポウルスポール

まずは、英語版での名前を確認する。
下手をすれば、それだけでシポウルスポールの綴りが分かって、早くもチェックメイトだ!

禁忌術法Arcanaの、工作術法Hexesの術‥‥‥‥
‥‥どうやら、シポウルスポールの英語名はAnimalcule(アニマルキュール)のようだ*3
Animalはそのまま動物・生物、Culeはラテン語で「小さなもの」を表すCulumから。
Animalculeはそれらを繋げた、「小さな生物」という意味の単語。
転じて、微生物、細菌、バクテリアなどもAnimalculeとまとめて呼ぶことができる。
毒を操るシポウルスポールの内容を表すのに適した訳だと言えるだろう。

英語版の術名からは、細菌のイメージを共有するまでにとどまる結果となった。
しかし、このご時世に於いて目にすることもありそうな単語も、一つ覚えられた。
未知の単語は、無限に存在することで広く知られているはずだ。

Final Fantasy12のシポウルスポール "シオウルスポール"

シポウルスポールでググってみると、違うけどよく似ている単語が見つかった*4
Final Fantasy12の敵専用技に、「シオウルスポール」というものが存在するのだ。

使用する敵は、ゴルモア大森林のボス、エルダードラゴン。
近距離範囲攻撃で、こちらに混乱、スロウ、沈黙、くらやみ、猛毒、オイル、スリップの状態異常を付与。
プレイヤーは使えないものの、範囲攻撃、多彩な状態異常と、ラストレムナントのシポウルスポールに通ずる要素を持っている。
上記FF用語Wikiにも書かれている通り、ラストレムナントFF12も、サガの産みの親・河津秋敏氏のチームが携わっていることから、恐らく同じ出自の名づけなのだろう。

シオウルスポールの英語名は、Sporefall*5
Sporeは胞子、Sporefallは「胞子落とし」といった意味合いだろう。
技の演出からも、上から胞子を降らせている様子が見て取れる。
発音自体は「スポア」だが、この単語が「スポール」とイコールであろう。

動画の4:19~4:31あたりで、シオウルスポールの演出を確認できます

youtu.be

 

シポウルスポール、シオウルスポールの"スポール"は特定できたが、では"シポウル"、"シオウル"とは、何を表すのだろうか?

英語のFF FandomのSporefallのページには、同時に「直訳した場合は"Sheol Spore" (lit. "Sheol Spore")」という一文が見て取れる。
Sporeは上記した通り、胞子を表す英単語たが、それではSheolとは何なのだろうか。

"シポウル(シオウル)"を探る

改めて、シポウルの語源を探っていこう。
調べものの入り口はググりである。まずは何より、ググれ!我らググり世代。

シポウルは、ラストレムナントの情報しか当たらない!
(ここでは「シポウル」と省略する記述をいくつか目にしたが、ここまでの調査(=Sporeが後半の語で、胞子を表す)を踏まえると、正しい切り分け方であるわけだ。)

シェオル(שאול, Sheol)は、ヘブライ語音訳であり、新改訳聖書では「黄泉」の原語である*6

旧約聖書(ヘブライ語)に書かれている死者の国、黄泉の国、冥界がシェオルであると分かった*7

以上から、Sheol Sporeは"黄泉の国の胞子"という意味合いであろうか。
強力なダメージだけでなく、多彩な状態異常もバラ撒くシポウルスポール・シオウルスポールにうってつけである。

そして、ラストレムナントにおける該当の禁忌術法名は誤読である可能性が出てきた。
Sheolは確かに、セウルだとかソールといった別の読み方も確かに存在している。
しかし、Pの音が入った読み換えや、Pの入っていないSheolの綴りからPの発音が産まれるような言語を私は知らない。
(Hに撥音の要素が入るような読み方をする言語をお知りの方はお教えくださいな。)

・シポウルスポールはSheol Sporeの誤読

・黄泉の胞子を表すSheol Sporeが元来の名前だが、英語版ではAnimalcule、Sporefallと別方面からの訳がなされている

この二点を、ひとまずの結論とさせていただく。


閑話

どうしても海外のラストレムナントプレイヤーと日本名のシポウルスポールについて話したい人は、FF12に則ってSheol Spore(シオウルスポール/シェオルスポア)としてお話するかもしくは、上記の誤読まで含めてShepol Spore(シポウルスポール/ シェポルスポア)と、背景を説明しながら使ってみたらいいんじゃないかと思います。

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語源探訪を終えて

レゲエを演奏するつもりならいざ知らず、*8ラストレムナントの技術名を学ぶときにも聖書の教養が必要であるなどとは、夢にも思わなかった。

語源については、FF12のシオウルスポールに辿り着ければ、芋づる式に結論に至ることが出来た。
(記事中では、FF12の英語名からすんなりとシェオルにまで導かれているように書きはしているが、実際には"lit. Sheol Spore"の表記を見逃していた。結果、シポウルとかシオウルから黄泉の国を示す単語・シェオルに到着するまでに、ここに書いていない、色々な道程を辿ったのであった。知恵袋とかね。)

結局、「シポウルスポール」の単語自体は、"言語的には正しくない"ものではあったが、だからと言って正すべきとか、興味を失うなどということは全くない。

河津秋敏さんの開発チームが作るゲームには、今回のように"正しくない"名前が少なからず出てくる。
例えば、ブリムスラーヴスとプリムスターヴス、バブラシュカとバラブシュカ等々…。
いずれも神話や海外文化からの情報を仕入れ、世界観醸造に一躍する、説得力のある調べものの元、結果的に誤読が発生している。

そもそも、創作物なのだから、現実にない名前を付けて何も問題はない。
(例. サトーココノカドー、オンスタグラム等々…)
更に、例示したような創作名とは一線を画した独創性を持っている。
ひねった上に着地をミスした名前。
これが、元ネタのニオイを消しつつ、独自性をもたらしている背景だろう。
そして、元ネタが分かりにくいが故に、僕のようにシポウルスポールを調べたり、下記記事にてアルム=バンド氏がブリムスラーヴスを調べ(た挙句にルーン文字カレンダーをバッチバチに購入しちゃっている!)る結果に繋がっている。
こういう経験があるから、書き間違えとか言い間違え、聞き間違えに魅力を感じて仕方がないんです。

 

これら例のうち、特にブリムスラーヴスは、以下の記事に詳しい。

今回の記事化に踏み切る切っ掛けになりました。本当に面白い。
しっかりと文献にも当たっていて、こんな記事とは比にならないほどしっかりと考察されております。
ここまで、少なくとも興味を持って読み切っていただけた方々にはより楽しんでもらえること請け合い。
是非確認されたし!!

ewigleere.net

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ラストレムナント、やってね。

 

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*1:突撃Invocationsは近接、狙撃Evocationsは遠距離、工作Hexesは状態異常、救助Remediesは回復、戦術Psionicsはモラル上下、戦略Wardsは味方のサポートを目的とする術法。

*2:俺の悩んでいる様も、インターネットに漏れ出していた。忘れていた。この記事の通り、今日に至るまで、忘れられずにいるのである。このツイートについては忘れていたのに?

*3:

lastremnant.fandom.com

The Last Remnant Wiki。英語。日本語Wikiよりも詳しい可能性があり、しかし日英で用語等名前が統一されていないため、逐一の確認が必要。
Artsの各項目で、術や技の内容が、実際の映像とともに確認できる、すばらしいサイトです。

*4:特技/【シオウルスポール】 - ファイナルファンタジー用語辞典 Wiki*

*5:

finalfantasy.fandom.com

*6:シェオルについて、Wikipedia

ja.wikipedia.org

*7:聖書での冥界と言えば、ハデスとか、ゲヘナなどという単語のほうが創作物等で一般に普及しているように思えるが(私もシェオルなぞ耳なじみがなく、聞いたことがあるのはこの二つでした)、なんでもその二つは新約聖書(ギリシア語)での呼び方であるとのこと。また、シェオルは、端的に地獄を表す訳ではなく、死後、魂がとどまる中立の場所としての黄泉を表すため、単純に「死後の世界」と認識するのが良いだろう。

*8:the pillowsのギター、真鍋さんがレゲエ音楽をやる際に聖書を読み切った、という記述を昔読んだことに由来する記述。レゲエ発祥の地ジャマイカでは保守キリスト教徒が大半を占めている。ラスタファリ思想運動と密接に関わったそれは、聖書を聖典としているため、レゲエ音楽の読み解き等には聖書の知識が必要なのだそうだ。閑話休題

美しき日本語、ダウソ

ダウソ

ネットスラングであり、「ダウンロード/ Download」を意味する。

 

なんと美しい略語であることか。
機能美に満ち満ちていながら、愛嬌も失われていない!
魅力的なネットスラングであり略語である「ダウソ」について、真剣に向き合ってみる日があってもいいんじゃないか?
それが今日だよ。諦めてほしい。

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様々な方法で多くの略語は作成される。
語全体から意味の手掛かりとなる要素を抜き出し並べて作られたり、語の一部を削り取ってしまっていたり、頭文字のアルファベットを並べたり*1…。
(例. アフター・レコーディング->アフレコ、ストライキ->スト、池袋->ブクロ、United Kingdom->U.K. 、 
Unknown Flying Object->U.F.O(ユー・エフ・オー発音もユーフォー発音もどちらもある) etc.
東名高速道路も東京都名古屋間をつなぐから東名ですね
パソコンもパーソナル・コンピュータだし、ブログも元はウェブ・ログだ)*2 

略語作成・運用の目的は、「簡易化/平易化」。
「発話のし易さ」、「文字入力のし易さ」のため、コミュニケーションの場で醸成されるものが略語である。

今回検討したい「ダウソ」は、上記内容に照らすと後者に当たる。書き文字文化の中で生まれ落ちている。
ダウソは、ダウンロードの前半3文字を抜き出すに止まらず、3文字目「ン」を、形状の類似するカタカナ、「ソ」に置き換えている
この、(恐らく)おふざけで置き換えられた一文字が、ダウソのダウソ足る、高い機能性に寄与している。

もし、ダウンロードの略語が「ダウン」だったらどうだろうか?
英語には膨大な、接頭にDown-の付く単語が存在する。そんな膨大な単語から、「ダウン」だけで「ダウンロード」と読み替えろ、などとは到底要請できないし、不可能だ。
結論「ダウン」だけで「ダウンロード」にたどり着くことは到底能わない*3

そんな、有り余り過ぎた可能性を持つ「ダウン」から抜け出し、文字数を同じくして「ダウンロード」の意味をピッッッッッタリ表す略語が「ダウソ」である。
俗な出自を侮るなかれ、特筆すべき記載の効率性・伝達性の高さに加え、茶化しの性質まで持ち合わせているではないか!
(フォーマルな場面では使用できない、という事実でもあります)
慈しむべき語・ダウソ。
いかがでしたか?
「ン」「リ」「ソ」が語中にあれば、どんな語でも同じ方法で楽しく略語が作れてしまう。大変です。門戸は開かれている。

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このダウソに見て取れる表記法は、Weblioによると、リートスピーク/ Leetspeekと呼ばれる記法に当たるそうだ*4

リートスピークに該当する日本語を名付けた方がいいんじゃないかと考えた。
まず、リートスピーク表記を読み解くためには、ノウハウが必要である*5。暗号・なぞなぞを解くような感覚が得られ、これがリートスピーク表記の多産・地位向上をもらたしていると思わされる部分である。
しかしこれまでに何度も書いているように、ダウソに類するスラングには、リートスピークとは一線を画す要素も含まれている。それは「茶化し/ おふざけ」であり、語に嘲笑/ 煽り・自嘲・風刺の属性を付与する。
風刺画は戯画とも呼ばれるし、深く考えず「戯語化」とか呼んどいたらいいんじゃないかな。

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音声面での置き換えが起こっている、これまたネット上でよく目にする略語と言えば、インスコ/ アンスコが例示できよう。
それぞれ、「インストール」、「アンインストール」の略語であるが、ダウソと同じように前半部の抜き出し+置き換えられた一語の形式だ(アンインストールは抜き出し形式だが)。
が、ここでの置き換えは類似の形状ではなく、類似の音に基づいている
「ト」と「コ」はどちらも無声の破裂音だ。どちらも開放音であり、違いは音の発生する箇所。トは歯茎~硬口蓋で、コは軟口蓋での破裂音です。*6
よって、インスコ/ アンスコの「コ」部分の代替としては、同じく無声破裂音であり、唇の開放によって発音する「ポ」が挙げられよう。インスコ/ アンスコを促す際に、更なる茶化しを加えたい場合は、容赦なくインスポ/ アンスポと伝えるといい。半角にもしちゃえ。私は怒ると思う。

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これからインターネットに触れる世代は、元の語・ダウンロードやインストールとの関連を見出せぬまま、ダウソやインスコに触れる可能性があると思うと不憫でならない。
知らんことがあったらネットで調べたり、人に聞いてしまおう。これは自戒。

できるだけ不真面目にやらしてくれや…。

*1:これは、読み上げ方でアクロニムかイニシャリズムかが変わる

*2:全体から1語だけ抜いて略称としている語を集めた、Kouさんのツイートスレッドがなかなか含蓄に富んでいて面白いです 
Kou on Twitter: "「かしゆか(樫野有香)」みたいな1文字しか略してない言葉を探しています" / Twitter

*3:会話でよく使われる言葉であればダウソではなくダンローみたいな発音・表記がされていたと思います
そもそも発音するにあたって「ダウンロード」に要する労力はかなり低い…
から全然フルで発音してしまって問題がないのである
筆者の考え

*4:「ダウソ」の意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio辞書
Deadmau5とかH4PPYとかいう、類似形状の別文字への置き換えから、Thanx/ Thxといった、同じ・類似の発音だと分かる別の文字への置き換えなど
ギャル語みたいなもんだと思えばいいんだろうな

*5:4はAの代替とか、5はSの代替とか
ノウハウなしでは、閃きを待つしかないだろう

*6:カ行の混乱 | 22世紀の日本語を考える「た行」が言えない原因は何ですか? | 滑舌QA

ゲーム三枚おろし~音楽編~

「どんなゲーム音楽コンポーザーが好きですか?」

popotan322000さんに配信中に聞かれ、すんなりと答えることが出来なかった。
音楽コンポーザー単位で、パッと浮かぶものがない。
どうしてだろう?
ゲーム音楽を考える際には、ゲーム体験とゲーム音楽を一緒くたに考えているから。
ゲームを遊ぶ体験、ゲーム音楽、これらは(他の要素ももちろん複合されたうえで)「ありき」の関係だ。
それぞれが互いに手を組んで一個体を構成する。それを分解して考えることは、難易度の高いものであった。
幼少期に音楽との相関関係が強いゲームばかり体験してきたから…。
…そうじゃないゲームなんてあるのか?

だから質問の時点では「○○というゲームの音楽なら大好き(だけど、コンポーザー単位になるとハッキリ言えないかもなあ)」という答えに収まるのが、オチだった。

上記質問に答えられないのは残念だ。悔しいとは言いたくない…。
好きなゲーム音楽を上げていけば、何かしら傾向や趣向が分かってくるのではないか。
じゃあ好きなゲーム音楽って何だろう?
聞いて当時のゲーム体験を追憶できるもの?
上記とは関係なく(ゲーム自体をしていないが)聞いているものもあるよね。
列挙していってみよう。

 

風のクロノア2 ~世界が望んだ忘れもの~

大人数のコンポーザーがいる*1
風のクロノア2は、ゲーム内ステージ環境の変化(ex.屋外⇔洞窟)等に伴って、楽曲が変化する、ゲームと音楽の相互関係性の深い作品です。

ちいさな頃にこの作品を遊んだ経験が、自分のゲーム音楽観の根幹になっていることは言うまでもない。
余談だけど、クロノア2の曲はPat Metheny Groupの音楽をオマージュしていると推測しています。
Pat Metheny Group - Dream of the Return


惜しくも2020年に逝去してしまったLyle Maysの特徴的なシンセ(Overheim?2:39~)が、クロノア2でも特徴的なさわやかなシンセとオーバーラップします。
Going to Lunatea

星のカービィ2

HAL研の安藤浩和さん、池上正さんの共作。
安藤さんは初代スマブラの楽曲に携わったことでも有名ですね。

クラウディパーク ステージ選択BGM

名曲として有名であろうクラウディパークであっても、ステージ選択画面音楽。
カービィ2とカービィ64はステージセレクト画面のBGMがとても良い。
そのステージ・星がどんな雰囲気なのか。
時にはステージBGMと同じ旋律や音色を用いて短く表現されています。

カービィ2以降、管理業務に追われていたらしい池上正さんですが、最新作ディスカバリーにて主題歌の作曲をされたようです。嬉しいお話!

Lovedelic系列のゲーム

Thelonious Monkees

安達昌宜、谷口博史からなる二人組。
ラブデリックに関係するゲームに楽曲だけでなく効果音も、また変名アーティストとしての参加もしている。
彼らの関わっている作品は(大体ラブデリック関係ですが)追っています。
好きなコンポーザーです。

moon - Promise (MD Version)

変名参加例 
チグニータ*2 - ラ・チートイツ

おそうじBGM

めちゃくちゃいいよな。なあ?

エンドネシアに至っては、まだ遊んでないのに曲が好き過ぎて何度も聞いています。
エンドネシアは安達さんワークスみたい?Twitterでの谷口さんからのリプライ情報。

ファンシーゾーン(元気一杯)

どうやら主人公の状態によって音楽も変わる様です。
遊ぶのが楽しみです。

moonの頃から、インタラクティブゲーム音楽にこだわりのある方がいる(バンプール立ち上げた工藤さん)という話を読んだことがある*3

様々な参加アーティスト

moonを端緒に、ラブデリックのゲームには多くの現実のアーティストや、他のゲームコンポーザーの変名ユニットが参加している。
ジャンルも多種多様、プログレからタンゴ、民族音楽の録音まで…。
そんなのがゲーム中に流れてくる。

そんな中でも、ギフトピアに収録されていた、MUMUの役人#4を紹介します。

MUMU - 役人#4


こんなのがゲームしてると流れる。子供は違和感を覚えないで聞きながら遊ぶ…。
MUMUは追いかけてます…がゲームコンポーザーではないね。
最近はまたライブもやってるみたい!やってるうちに見に行くぞ!平日ばっかだが…。

サガシリーズ

河津秋敏

音楽コンポーザーではありませんが、Unlimited: SaGa以降の主題歌の作詞に携わっています。
荒唐無稽なフリーシナリオを越えてきたプレイヤーに飛び込んでくる歌詞の楽曲が多く、ゲーム体験と密接に結びついていると言えます。

河津さんの作品は追っていますが、河津さんというディレクターのゲームを追っているということです。

Romancing SaGa -Minstrel Song-では、アーティスト山崎まさよし氏が作詞作曲を行っていますが、事前に分厚い台本を受け取っていたとのこと*4

天翔ける翼 (作詞: 河津秋敏 作曲: 濱渦正志)


これはしっかりアンサガを全主人公でクリアして聞きたいです…。

胸に刻んで(作詞: 河津秋敏、片岡正博、佐藤弥詠子 作曲: 伊藤賢治)


サガシリーズの中でも随一の淡白さのサガスカですが、最後にこの歌を聞くだけですべて報われます。
是非遊んだうえで受け止めてみてほしい。

伊藤賢治

聞く時のモードが違う気がしますが、どちらも好きなコンポーザーです。

イトケンさんは実は、自称静かな曲が得意なタイプらしいですよ。
豊かなストーリー・リージョンに合わせたバラエティパックとしてサガフロンティアの街の曲は、どれもキャラクターが立っていて好みです。

伊藤賢治 - 九龍


キュートな電子ベースのリフからなだれ込んでくる!

濱渦正志

コンポーザー単位で追ってると言えるのは濱渦さんでしょうか。
サガフロ2で出会い、フリューのレジェンドオブレガシー、アライアンスアライブを遊ぶ一因になっていましたから。

濱渦さんは映像作品を作ったり、アイヌ研究をしていたりもするらしい。幅広くてすごいです。
FF10のピアノアレンジのアルバムがとーっても好きです。

濱渦正志 - ビサイド


黒鍵を主体で作ってらっしゃるのかしら。
ラヴェルやらドビュッシーからの影響とともに紹介されることも多いみたい?

植松伸夫

追ってなくても耳に入るお方。
町などの落ち着いた曲に魅力を感じます。

Final Fantasy 5 - 街のテーマ

Final Fantasy 7 - 旅の途中で


ホントいい曲…。

Final Fantasy 8 - ami


Fisherman’s Horizonと悩みました。

Final Fantasy 9 - 辺境の村 ダリ



余談ですが、植松さんはmoonに「あすなろボーイズ」として楽曲提供をしています。
相方はなんと光田康典さん*5

あすなろボーイズ - くつしたの穴


このアコーディオンが、あのネコ柄の楽器から鳴っている。

Hylics2

Mason Lindroth氏のクレイアニメの変なゲーム。
前作から強化された要素の一つが、Chuck Salamone氏のガレージサイケ。
Mason Lindroth & Chuck Salamone - Them's Fightin' Words


これが通常戦闘曲。アガるっしょ?
ゲームは、イカしたクレイアニメ+実写で、こちらもまた濃ゆい雰囲気を纏っております。

Chuck氏は新譜も出しているようです*6

佐野電磁

Drag-on Dragoonの楽曲を担当した佐野電磁ことsanodgこと佐野信義さん。
ストーリーを読み込むにつれ、楽曲からも狂気じみた雰囲気を煽りたいと画策*7し、たどり着いたのがオーケストラサウンドのサンプリング。*8

佐野電磁 - 第六章 上空


アルバム一枚の動画から、該当時間を抜粋しています。シークバーを動かせばそこここに名曲が!!
第六章上空、本当に素晴らしい曲です!

お名前の信義は、DOD/ニーアシリーズにて刀身が紫から鉄の色にグラデーションする綺麗な日本刀として登場しています。
どれも高名な歌人が才能枯渇して自害するストーリーなんだけど、佐野電磁さんにあまりにも失礼じゃないか?

 

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結び

皆さん、いい曲が沢山知れて、背景まで分かって、嬉しかったでしょう。
どれも良いゲームです!音楽を聴いて気になったら、是非遊んでみてね。

 

この記事の目的は何だったっけ?

 

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実写版『こち亀』の「おしまい」画像に、私がクソコラされています

*1:柿埜嘉奈子、境亜寿香、増渕裕二、柴野浩美、椎名豪、田島勝朗、高橋弘太 敬称略
名曲ぞろい・リッジレーサーなんかにも関わっていたり…

皆様ご健在のようで、現在の動向を知るのも面白いです

*2:TANIGUCHIの逆読みだよね…

*3:参照:

伝説のRPG『moon』20年目の同窓会──ラブデリックメンバーが語る、ディレクター3人という奇跡のような開発スタイル…そして「あのころ」の始まりと終わり【座談会】

*4:

山崎まさよし、『ロマサガ』ファンに向けて弾き語り | BARKS

*5:

光田康典 作家20周年記念インタビュー ― 遥かなる時の彼方へ ― [2083WEB]

自作のアコーディオンの話なんかをしています。このブログよりバッチョンバッチョンに面白いので読んでほしい。なんとロマサガ2の閃き💡のSEを作ったのは光田さんだとか…。

*6:

masonlindroth.bandcamp.com

*7:佐野電磁さん自身が書く、自身のWiki。非常に読み応えがある。是非楽曲を聞きながら読んでみてほしい。にしても、東京ニューシティ楽団の方々は自分たちが演奏した楽曲をハナっからサンプリングされて、どういう気持ちだったんだろうか。

www.wikihouse.com

*8:上のWikiにて言及されている、「弦楽のためのファンタジー

なるほどこれは非常にDODサウンドである!こんなにいい曲がエクソシストに使われていたなんて知らなかった。DODを遊んだから、佐野電磁の楽曲が好きだから、この音楽で怖がるなんてことは今後無いか、非常に抑えられることとなった。罪作りだよ!

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