アルピナを一言で言うならば「究極の普通の車」です。もちろんスーパーカーのような性能をもっていますが、あえてそう言いたいと思います。
BMWは比較的「カチッ」と作られています。BMWは高速走行時やコーナーリングは「ピタッ」としていてブレません。電車がレールを外れることがないように、車がラインから外れることがありません。架空のレールの上を狂いなくトレースしていく感覚はBMWの真骨頂だと思います。しかし街中では少し硬くてゴツゴツとしています。全体としてスポーティーなのです。BMWはソリッドでタイトで金属質な乗り味と言う感じがします。
一方アルピナは「フワッ」としてます。サスペンションがよく動きます。だから不安定かというとそうではありません。高速走行もコーナーリングも接地感と安定感を失うことはありません。これは表現が難しいのですが、ある人の言葉を借りればアルピナはタイヤがひたすら丸いと表現したいと思います。タイヤがひたすら丸く一転がりごとに確実に路面とコンタクトしながらヒタヒタと転がっていくのです。それは超高速走行においてもです。それでいて足がしなやかに動くので走りは非常にスムーズで滑らかです。BMWと比較して言えば、ソフトで有機的でアナログ的な感じです。あともう一つ言えることは、超高速走行に入ると、普通の車だとちょっと緊張してドキドキしてきますが、アルピナは精神状態を平常に近く保たせてくれて心拍数が上がりません。超高速域でも普通に走れるのです。
「究極の普通の車」ということについては、車ってどこか欠点というかクセみたいなものがあったり、あるいは過剰な演出があったりしますが、アルピナにはその両方が全然ないのです。たとえばGTRとかBMWのMとかは何か威圧感があって運転席に乗っただけて緊張感があります。あれは演出によるものが大きいと思いますが、アルピナにはそれもありません。至って当たり前で優しく普通なのです。その普通がどこまでも破綻しないのです。アルピナマジックと言ったりしますが、それは乗ったときから超高速走行まで一貫しています。