回答(3件)

ざっくり言えば、「大ヒット」が出たことで、 大きなリソースを手に入れたこと。 そして、そのリソースの豊富さはジャンプの基本方針と 大きなシナジーがあることです。 ざっくりまとめると以下のようになります。 過去の大ヒット作品の遺産を他誌に比べて存分に使える。 ↓ 発行部数が増えることによって認知機会の増大につながり、 更に部数を伸ばしやすい循環が生まれる。 ↓ ヒット作の量産は漫画家志望者に 「漫画家ドリーム」を抱かせ、大量の志望者がやって来やすい。 ↓ 漫画は「ヒットしない」のが当然ではあるが、 それでもヒットを出すためには「作品数」がものを言う。 ↓ アンケ主義により、読者人気のある作品を残すことで、 高回転・高効率で採算商品を生み出す。 ↓ これは他誌では新人の数が足りないことや そして「不採算商品」の部数を出すことも出来ないため、 真似しようとするとただ単に 多くの本屋に並ばない程度の発行部数の打ち切り作品を量産してしまう。 ↓ 更にジャンプに人材が一極化していく。 --- ジャンプの基本方針とは、アンケート主義ですね。 ジャンプはサンデー・マガジンの後発の少年誌でした。 集英社は小学館のいち娯楽部門だったため、 当時有名な漫画家をほとんど起用できず、 新人を使わざるを得ない、という状況がありました。 このことから、初代編集長が組み入れたシステムが、 専属契約とアンケートによる継続判断システムです。 始めは、苦肉の策として取り入れたシステムでしたが、 後々これは大きなヒット作品を生んでいくことになります。 - ヒット作は大きな利益をもたらして、 「漫画家ドリーム」を見せて、 多くの新人を集めることに成功します。 他の編集部でもアンケートなどの反響は もちろん作品の継続に影響はあるんですが、 ジャンプほど多くの新人は抱えていません。 こちらは2017年のジャンプ編集長のインタビューです。 https://mannavi.net/3569/ ジャンプの編集者は”一人当たり” 100人以上の新人に声をかけられる、 ということが書かれています。 これはつまり、ジャンプ編集部全体で およそ2000人以上の担当付き新人がいることになります。 現役の商業連載漫画家は3000人前後いるようなので、 それを考えれば2000という数字が どれだけ豊富なリソースかわかるでしょう。 もちろん、他誌の編集部でも 十数人~数十人抱えているというケースはありますが、 全ての編集者がこのレベルの新人を抱えているというのは ジャンプのみでしょう。 (もちろん担当掛け持ちの新人もいますが) - ジャンプのアンケシステム、よく早期打ち切りの原因として 槍玉に挙げられることがあります。 実際そういう負の側面も無いわけではないですが、 この「早期打ち切り」が異常なのは、 まさにその「早期で打ち切れる」ということです。 そもそも、世の中の漫画の殆どは「不採算商品」です。 こちらは元講談社の漫画編集者の方の記事です。 商業マンガ連載の継続条件と続けるためにできること https://note.com/mi_muramatsu/n/n7c97d30fdbe8 「連載がギリギリ継続できるレベルの作品は1/4程度」 「1年で黒字になる作品は1割未満」 という話が出てきます。 つまり、「当たらなかったら切る」というのは、 どこだってやりたいんです。 だって「ヒットしない・赤字になる」作品が9割以上なんですから。 でも、ジャンプのようには出来ません。 なぜなら、「終わらせる」と「始める」は基本的にセットだからです。 終わらせるのは誰にでも出来ても、始めさせるのは容易ではありません。 準備に半年~1年かかることだって珍しくありません。 「ジャンプが成功しているならジャンプの真似をすればいいじゃないか」 というのは誰もが思いつきますが、 そのようには出来ないわけですね。 無理やりやろうとすると、 中堅~ベテラン漫画家に頼まざるを得なくなって、 「なんかこの雑誌いつも同じ顔ぶれの連載陣だな」 ということになります。 こういう漫画家も、固定ファンが付いていて強みはありますが、 一方で新しい読者を取り込みづらくなります。 - そしてジャンプの専属契約は任意ですが、 新人にも「研究生専属制度」というものがあります。 https://r-cbs.mangafactory.jp/c16286/c210-20925/ 漫画家志望者にとって、下積みというのは本当に厳しいです。 連載までいった漫画家でさえ、 大半の人は受賞して担当が付いてから 7年前後はかかっています。 5年以下で連載できたら早い方ですね。 漫画は掲載されなければ、基本的に報酬は出ません。 つまり、別の仕事をしながら連載を目指すしか無いんですが、 この研究生専属制度では半年で30万円支給されます。 もちろんこれだけで生活は難しいですが、 (審査もありますが)1年で60万円支給されると考えれば、 漫画への注力のしやすさは段違いでしょう。 ギリギリの生活でいいなら、週に数日バイトするだけでも 生活が可能になる資金が得られます。 また、審査があるため、支給を打ち切られないようにするために、 作品制作も本腰をいれるでしょう。 --- 大ヒットを産みだしたところまでは、 運の要素もあったかもしれませんが 「なぜ今でもジャンプが漫画界のトップなのか」 という部分に回答するなら、 ・リソースを見込みのある新人にも回している ・莫大な漫画家ドリームを見せ続けている という点になるでしょうね。 ジャンプは1年に10作品ほど新連載が始まりますが、 その中にはどう見ても厳しそうに見える作品もありますよね? 実はONE PIECEも当時編集長だった鳥嶋さん(鳥山明の初代担当)は 「こんな作品絶対当たらない」として、 連載企画を何度も会議で落としていました。 結果的には編集部が真っ二つに賛成・反対で割れたため、 鳥嶋さんは渋々連載にGOを出し、 結果的にはそれがジャンプ史上類を見ないヒットになるわけですが。 この辺の経緯については鳥嶋さんがこちらの記事で語っています。 伝説のジャンプ編集者が見誤った傑作 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40658940Q9A130C1CR8000/ - 売れる確信があるから出すんではなく、 「ダメなら切り替えて次に行く」という、 ある種の潔さが、新人が連載をする上で 多くのチャンスをもたらしているとも言えます。 「ジャンプで売れれば他の雑誌よりも遥かに大きな発行部数になる」 「数は多いけど、新人にもチャンスが回ってきやすい」 「こういう作品でもジャンプで連載されるなら自分だって」 みたいな、漫画家ドリームを持った人が、 今でもたくさん集まってくるわけですね。 これが、先述した人的リソースを生んで、 作品がヒットするまで試行し続けられるわけです。

この回答はいかがでしたか? リアクションしてみよう

ブランドって事になるんですが、 結局のところ「紙面の行く末を読者に選ばせてる」ってのが一番の理由な気がします。 それによって、読者の中には 「終わってしまう作品にはどういう課題があったのか」 「どんな新連載が始まったのか」 といった事に興味が向かう事になって、必然的にブレイク前の新人の作品も話題になりやすいってサイクルができています。