日本政府が「自衛隊は軍隊ではない」および「自衛隊は戦力ではない」とする答弁を行ったのは、日本国憲法第9条との関係を説明する文脈において、特に国会での議論を通じて明確にされてきたものです。
1. 「自衛隊は軍隊ではない」とする答弁
日本政府は、憲法第9条第2項の「陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない」との文言に基づき、自衛隊を「軍隊ではない」と説明してきました。
初期の明確な答弁: 1954年(昭和29年)の自衛隊法制定時、政府は国会答弁で「自衛隊は憲法の禁じる『軍隊』には該当しない」と述べています。
この際の論拠は、「自衛のための必要最小限度の実力組織であり、侵略を目的とした軍隊とは異なる」というものでした。
また、1981年(昭和56年)には、政府が「自衛隊は国際法上では『軍隊』と見なされる可能性があるが、国内法上では『軍隊』ではない」と説明しています。
2. 「自衛隊は戦力ではない」とする答弁
「自衛隊は戦力ではない」とする公式見解は、憲法第9条に違反しないことを説明するために繰り返し述べられています。
代表的な答弁
1954年3月24日: 憲法第9条に関連し、参議院予算委員会において当時の内閣総理大臣吉田茂が「自衛隊は戦力ではなく、自衛のための必要最小限度の実力組織である」と答弁しました。
1972年10月14日: 内閣法制局長官が、「自衛隊は必要最小限度の実力にとどまるものであり、憲法第9条の『戦力』には該当しない」との見解を示しています。
政府見解の一貫性
日本政府は、「自衛隊は憲法の禁じる戦力ではなく、必要最小限度の実力を保持する組織である」という立場を一貫して維持してきました。この論理に基づき、「自衛隊は軍隊ではない」とする説明もなされています。
ただし、これらの答弁や政府の公式見解は国際的には必ずしも一致した評価を受けておらず、特に「国際法上の軍隊」という指摘もあります。現代における憲法改正議論の背景には、こうした解釈の曖昧さをめぐる課題が存在しています。