民主主義のデメリットは各種あります。頻度が少ないけれども深刻なものとして、ナチスの台頭のような熱狂的な民衆の暴走による独裁国家樹立(不可逆的に憲法改正までされてしまう危険あり)。深刻ではなくとも頻繁に起こる不都合もあります。
ここは「最大の」が最大公約数的なものだととらえて、ほぼ日常化した、解決不能なデメリットを指摘しましょう。それは「遅い」「まずい」「高い」の三拍子です。
まず「遅い」点について。
民主主義は意思決定がとにかく遅い。正しい情報の取得、それらが公開された上での自由な議論に基づく結論到達が大事ですから。そこで全国から広く意見を拾って集約して、それを持ち寄って議論します。独裁政治ならば1人または数人が「こうする」と決めればすぐに決定して実行されますが、民主主義だと決めるまで何か月もかかるります。
次に「まずい」の点について。
政策の中身の質が落ちます。なぜかと言うと、志の高い議員や官僚が素晴らしい理念に基づく法律案を作っても、それでスムーズには決まらないからです。それを制定されると困る人の反対意見が出たり、ゴネ得を狙う連中が交換条件を出すなどします。決めるには多数者の賛同をとりつける必要がありますから、同じ党内であろうと、多数を取り込む過程でどうしても、譲歩とか妥協を強いられます。そのため当初考えられた最善の仕組みよりは失われ、最大公約数的な仕組みとか、つぎはぎの仕組みへと変質するのです。料理で言えば最初は辛口のスパイシーなビーフカレーを作ろうと思っても、辛すぎると子供が困ると意見が出たり、小麦アレルギーの人が反対したり、ジャガイモは抜いてくれと意見が出て、肉を入れることにベジタリアンの反対が出るなどして、誰もが食べられる、甘口で味が曖昧で、わけのわからない料理になるのです。最善ではなく、最大公約数を目指すので、100点は無理で、いつも50点になります。
最後に「高い」の点について
これは意思決定過程でコスト、金がものすごくかかるということです。選挙のたびに多額の金がかかるのもその一種です。議会を開くためにたくさんの議員が全国から集まってきて長時間議論をするので、議員の給料やら交通費、また議員をサポートする秘書たちの人件費なども欠かせません。また議論の前提となる正確な情報取得のための調査活動・資料作り・公聴会実施・専門家からの意見聴取なども金がかかります。議会運営を支えてくれる裏方スタッフの人件費など議会の環境整備のための費用もかかります(議員歳費よりもこちらの方が高いのが普通です)。