歌舞伎は、同じ演目でも演者や観客の解釈によってそれぞれ違いますが、私個人的には、弁慶の飛び六方は「喜び」を表していると思います。 無事に主君を守れたことの喜び 主君が無礼を理解し許してくれたことの喜び 富樫の厚情に触れた喜び 演者として難役弁慶をさいごまで演じきった喜び 花道の付け際で、富樫にわからぬほど静かに感謝をあらわした後、内側に秘めた熱い思いを一気に爆発させて義経一行を追う荒々しい飛び六方は、勧進帳一の見どころです。 表現としての「飛び六方」については、六方は東西南北天地の六方向。 手の動きはそれくらい大きく振り、手と同じ側の足を踏んで飛ぶ。 ただ歩くのではなくこうした誇張した表現を使うことによって、荒々しさや力強さを表します。