ハンブルグ製とニューヨーク製とですが、もともとは、グロトリアン・シュタインウェーグ(グロトリアン)がスタインウェイの発祥で、長男をドイツに残して、ニューヨークに親子で移住し、始めたのがスタインウェイ$サンズ(スタン)です。ところが、米国へ移住した後子供たちがみんななくなって窮地に陥り、ドイツから長男テオドールを呼び寄せて、会社の立て直しをはかりました。(南北戦争のころ?)
グロトリアンとスタンは名称を巡って訴訟を起こし、いまでは、ヨーロッパではグロトリアン・シュタインヴェーグの名称を使ってもよいが、日本ではグロトリアンという名称で販売しなければならないようになっています。
経営の立て直しが軌道にのってから、ハンブルグでも製造をはじめたので、ニューヨークの方が歴史が古いと言えます。最初に作ったのがA型で、ついで、BCDの順に作り一時期は3メートルものピアノも試作したようですが、今は、D型が最大のところで落ち着いています。家庭用の小さなピアノを作るノウハウがスタンになかったので、同じくドイツから米国に移住してきたメイソン・ハムリンに作らせて、納得できたので、これにスタンのブランドをつけてラインナップに入れています。したがって、家庭用とコンサート用のA以上では基本設計が異なります。
ハンブルグ製は、SMOABCDがフルラインナップで、ニューヨーク製はAが無くて、L型(リビング)として販売していましたが、最近では、ニューヨーク製でもA型を作るようになりました。ニューヨーク製はアメリカ大陸で販売、ハンブルグ製はそれ以外で販売されていて、日本でニューヨーク製が欲しければ並行輸入しかないようです。
最近の値上げラッシュにより、スタンの最低価格が1000万円以上となっていますので、相当のお金持ちしか新品は買えない状況になっています。また、度重なるスタンの経営危機により、親会社が変わっていますので、中古を購入するには、そのことも考慮する必要があります。
まず、1970年ごろに、大幅なモデルチェンジをしたので、ABCD型は、より金属製の音色が強調されるようになりました。ここを境に音色が違います。それから、ハンブルグとニューヨークとでは、設計は同じなのですが、ハンブルグではcm、ニューヨークではインチが使われていたので、アクションの両者を並べて比較すると、88鍵盤のうち一鍵盤分ニューヨーク製が狭いことが分かっています。
いまは、スタンを買収した親会社が、米国のアクションの下請け企業全社を買収したので、そのような鍵盤幅のばらつきはなくなったそうです。昔、松尾楽器がスタンの総代理店だったころは、ニューヨーク製とハンブルグ製の両方が購入可能で、100万円ほど、ニューヨーク製が安かったと思います。
ご承知のとおり、ピアノは出荷調整という作業が重要で、製造しただけではピアノの音になっていないのです。ピアノを弾きこんで、ハンマーがある程度固まって、ピアノらしい音になるのですが、ハンブルグ製では、自分たちの納得がゆくまで、弾きこみとか出荷調整をしてから出荷するのに対して、ニューヨーク製では1000回弾きこみをして、まずまずならOKという事で、出荷するので、音のばらつきが多い反面、人件費が低く抑えられるほか、米国で製造し米国で販売するので、運送費が安上がりな点で、安いのだと思います。
出来上がったピアノをどれだけ見ても人件費とか運送代は分からないので、音で区別するしかありません。