挙げておられる高校についての、具体的なお話ではなくて申し訳ありませんが… 「進学校に行って美大を目指す」というやり方があります。どの美大をどんな入試方式で目指すかにもよりますが、上位美大生の多くは進学校出身です。 上位美大は、推薦やAOではなく一般入試が募集のメイン（募集定員の全てまたは殆どが一般入試な美大もある）です。合格は実技試験と学力試験の合計得点順。難関大になるほど実技の合格レベルが高く、実技配点比率も高くなります。実技試験で問われるのは、揺るぎない基礎実技力です。なので、大学卒業後の専門職での企業就職は、ガッツリ基礎を身につけなければ合格できない上位美大が格段に優位です。 美術系高校や美術コースでは、実技試験合格に必要な基礎修練が到底足りず週に何日も美術予備校に通うことになるのですが、そうなると今度は勉強時間が圧倒的に不足するので、学校の授業にしっかり取り組めば塾なしでも共通テスト程度はカバーできる、偏差値60台前半くらいの緩い進学校が有利です。ただし、そこでついて行くには要領の良い地頭必須です（笑）。 （高校受験と大学受験では母集団が違うので、ざっくり、高校受験偏差値60あたりが大学受験偏差値50程度に相当することをお含みおきください。） ある程度以上レベルの美大を受験するなら、実技修練を担うのは、美術予備校です。美術予備校でゼロから基礎修練して対策までやるので、予備校のトップが普通科生なこともフツーにあります。なので、例えば藝大の自分の科の同期は8割が普通科出身（現役含む）、あとの2割が首都圏美術系高校出身でしたがその年度は皆、毎日6時間以上の実技修練を予備校昼間部で2年前後追加した浪人生でした。 ただし、放課後にも頻繁に補習があったり、毎日7~8限まで授業があったり、夏休み冬休みに講習会（補習授業）があったりでは、美術予備校に通う時間が不足します。そのあたり、時間的な自由度については、候補にお考えの高校それぞれについて、具体的にお調べになることが必要です。 注意が必要なのは、上位美大の実技対策は美術予備校が担うので、高校の「進学実績」はそれらの美大についてはあまり参考にならない（その高校に通っていればそれだけで充分目指せる、とはならない）ことです。 ただ、進学校で、有名大学進学を目指して勉強する同級生に混じって、自分だけ軸足を勉強ではなく美術予備校に置く生活は、自分独自の確固たる価値観を持っていなければ、なかなか厳しいかもしれません。自分だけ、偏差値とは物差しが違う世界に生きる自覚が必要です。中学で勉強の優等生だった意識にひきずられずに、優先順位を美術予備校≫勉強とシフトして、学校の成績が良くなくても揺るがず実技に邁進できるでしょうか。 中堅未満の私美大の推薦入試をお考えなら、候補の高校にお考えの美大からの指定校推薦の募集があるのか（ただし募集は毎年変わることに注意）、お調べになってみてください。 ところで、大学については、ご家族とお話しになったことはおありでしょうか。美大は設置数が少ないので、一人暮らしが必要になったりします。そうなると「国公立大学しかムリ」となるご家庭はフツーにあります。その場合、美術系高校や美術コースでは勉強科目の授業レベルや時間数が足りず、美術予備校に加えて勉強の塾にも通うケースは多いです。学校の制作課題に追われる中でそれらも両立させていくには、強い意志やメンタルが必要になることは、お覚悟ください。 …いろいろと厳しい事を書きましたが、まだこれから考えて行けば良いことでもあります。 とりあえずのマイルドな着地点としては、 勉強をしっかりできる進学校に進み、まずは高校生活や勉強のペースをきちんと確立する →美術予備校の季節講習や無料体験イベント等に参加して、美大受験について垣間見てみる →気になるなら、高2から週3~4くらいで通ってみる …で、高2のうちに美大進学をどうするか決めるので大丈夫です。好きで描いている絵と、美大進学のための基礎修練は、また違うので、やってみて「やりたかったのはコレじゃない」となる人も一定数いますし、耐えられずに辞める人もいますし、逆に楽しすぎて「毎日朝から晩まで予備校だといいのに」となる人もいます（←それって浪人生じゃん！現役で受かる気ないってか？…と予備校講師にツッコまれましたが）。やってみないと分からない事も多々あります。美大もそれ以外も楽しみに、選択肢を沢山残しての進学をお勧めしたいです。