耳鼻科医がわかりやすいように「聴力がゼロ」と説明なさったのだと思いますが、聴力がゼロは聴者成人の平均値で、数値が大きくなるほど、聞こえにくくなる程度を表します。ですので、逆に、聴力が100dBとか、120dBというように大きな値が聞こえにくい状態を表します。 さて、今回は一側のみ失聴したということで、一般的には「片耳難聴」とか「一側性難聴」と呼んでいます。 まず、同じ片耳難聴の方々がどのような歩みを経てきたかと読まれてみてください。 片耳難聴当事者の会「きこいろ」 https://kikoiro.com/ 次に、補聴器ですが、クロス補聴器というのが適応対象にはなります。 受信機兼補聴器と、送信用マイクの２台セットだと思います。 充電式か、電池式かで価格がそこそこ変わります。 単純に送信マイクの価格だけで言えば、Signiaの送信機は電池式で 99,000円です（充電式は 110,000円）。受信機兼補聴器(電池式)はPure312 1AXが160,000円（充電式は204,000円～）なので、電池式ならば、259,000円～でセットが組めると思います。 メリット：聞こえない側からの呼びかけや話が聞こえるようになる。 デメリット：一方、やはり補聴器を通した音は機械音なので、聞こえない側からの音は鮮明さに欠けるため、雑音が気になることがある。両耳に補聴器状のもの（送信機と受信機を兼ねた補聴器）を装用する必要がある。これらの購入費用と電池式の場合は電池代もかかる。 聞こえない側の音が聞こえるようになることは大きなメリットですが、そのことでそれほど方向感は向上しません。装用を続けると、「器械的な音が聞こえたら、聞こえない側からの音だ」というような感じで方向感が徐々にわかるようになります。雑音下での聞こえは、受信機側の補聴器の性能（価格）により変わりますが、こちらも大きくは向上しません。しかし、これも使用の継続により、徐々に聞こえない側からの音が聴取できるようになると向上していきます。 2つ目は軟骨導補聴器です。クロス補聴器は非良聴耳側にマイクが入った送信機を付け（補聴器ではありません）、良聴耳側に受信機能が入った補聴器を装用するので両耳に2台装用という感じになります。軟骨伝導補聴器は、非良聴耳側に装着し、非良聴耳側の軟骨導振動が頭蓋骨を振動させ、良聴耳の内耳で非良聴耳からの音が聞こえるようになるという仕組みで装用する補聴器は非良聴耳側のみとなります。クロス補聴器は一般的な補聴器販売店で試聴ができますが、軟骨伝導補聴器は大学附属病院などでしか試聴ができません。軟骨伝導は効果が出る方と出にくい方がいますので、試聴が欠かせません。 ■軟骨伝導補聴器取扱い病院 https://mapcl.rionet.jp/b/rionetccha/ その他に、片側からしか聞こえない＝「一側性難聴」の場合は、雑音下での聞き取りが落ちるということが生じます。これを補うのは、ロジャーシステムという方法で、良聴耳側に受信機を装用して、より明瞭な音声を聞こうとするもので、発声者にマイクを付けてもらう必要があります。 下記の「ロジャーフォーカス」という器種です。 https://nijiho.com/column/roger/ ★問題は価格対効果です。 最初は反対側からの音が聞こえるので、物珍しく思って、「ワー、聞こえる!!」という返事が返ってくると思います。しかし、結局、毎日使用するようになるかと言えば、そうならない場合が多いです。 特に小学校3年生ぐらいだと、クロス補聴器、軟骨伝導補聴器は、装用の面倒さに比べて聞こえの向上の度合いは低いです。ロジャーシステムは聞こえの向上は高いのですが、使用時に発声者にマイクを渡すという一手間が必要です。もちろん効果が出れば、自治体の「軽度中等度難聴補聴器助成事業」の対象となり、全額ではないですが、1／3前後の自己負担で購入できます。 上記の価格帯効果が少ないという事であれば、とりあえず、試聴だけして、こういう器械があるという事だけは記憶しておき、もう少し成長し、高校生ぐらいになった時に、例えば、英語の授業や集団での討論に参加できないなどの社会的支障が生じたときに、再度、補聴器を考えるということでも良いのではないかと思います。