「変な家」に出て来る独特な言い伝えです。
「変な家」は著者である雨穴先生が中心でストーリーが動いているため、実話であるという噂もあります。
しかし、この作品は完全フィクションです。
また、建築基準法では居室に窓などの開口部を作らなければならないというルールがあります。
窓のない部屋を作る場合、納屋もしくは窓がなく法律として認められていない居室になるため、間取り図で「こども部屋」と記載されることはありえません。
そういった観点からも、この作品がフィクションであることを位置づけられるでしょう。
つまり雨穴先生が間取りやトリックを考え書かれたということになります。
実際にこんな物件やしきたりが存在していたら、怖すぎます。
1つの間取り図から始まった謎多き家の理由を暴いていきます。
左手供養は片淵家の代々伝わる呪いが関係しています。
片桐家は、そもそも宮江恭一の妻・宮江柚希の実際の名前「片桐柚希」の家系になります。
左手供養が始まったのは、昔の片桐家で起こった事件が発端でした。
片桐家は、昔地元の名家で、そこには宗一郎・清吉・千鶴の3人の子供がいました。
後継問題が起こった時、周囲の誰もが清吉が後継に相応しいと言われていたのですが、結局宗一郎が本家の跡取りとなったのです。
跡取りに選ばれなかった清吉は、本家を出て自分の才能を開花させます。
跡取りとなった宗一郎は、妻となった高間潮と千鶴との間で揺れ動いていました。
結局宗一郎は、自分の妹である千鶴との間に子供を儲けてしまいます。
この不祥事が清吉にとって復讐のきっかけとなり、本家に関わっている人間たちをどんどん宗一郎と潮から遠ざけてしまいました。
潮は、夫と自分の居場所を奪われたショックで、自殺してしまいました。
自殺の際に、潮は左手を落としてしまいました。
程なくして、千鶴は双子の男の子を産んだのですが、一人は左手のない子でした。
清吉の第二夫人は、左手がない子が生まれた理由は潮の呪いと言い出しました。
本家の子供を追いやり、自分の子供を跡取りに据えることが目的でした。
そして、左手供養が生まれたのです。
左手供養とは、生まれつき左手がない子供に1年に1回、人を殺させ左手を供養するというものです。
さらに、左手のない双子の一人「桃太」を閉じ込めて儀式だけに利用していきます。
清吉の第一夫人の子供も桃太に左手を切り落として殺させることで、第二夫人の子供がいよいよ後継人の候補に上がります。
桃太の兄麻太は、桃太の補佐をさせられ、麻太も後継者の候補から離れていったのです。
左手儀式は、桃太が13歳になるまで続きました。
その後、戦争が始まったことでこの儀式だけが切り離されて残っていったのです。
では、2つ目の間取り図を持ってきた宮江柚希の夫である宮江恭一は誰によって殺害されたのでしょうか。
と言いたいところですが、宮江恭一は孤独死であり殺害されたわけではありませんでした。
慶太がしきたりをきちんと行っているように見せかけるため、宮江恭一の亡くなった遺体をバラバラにしていました。
そのニュースを見て殺害されたと柚希は恭一の妻であると伝え、雨穴に近づきます。
ですが、孤独死で亡くなっていた事から柚希は実際に恭一の妻ではなく、嘘をついていたことが発覚。
実は、柚希はあの家に住んでいた片淵家の奥さんの妹だったのです。
ストーリーの最後のカギとなった喜江。
喜江は片淵家の本家と分家どちらの血も受け継いでいる存在でした。
そして、喜江の祖母である弥生は左手供養のしきたりによって兄弟を殺されてしまった被害者。
弥生はそういった経緯もあり、左手供養に対して恨みのような感情を抱いていたのです。
喜江の周りでも同様に沢山の人が殺害対象となり、死んでいったというような描写が書かれていましたし、喜江自身も左手供養に対して良い感情を持っていたとは考えにくいです。
こういった憎悪感を持っていると考えられているため、喜江は作品全体の謎について裏で糸を引いていると考察されています。
しかし、既に完結している小説内にも決定的な文章は見当たりませんでした。
しきたりに大きく関わっている仏壇。
この仏壇は清吉の第二夫人が左手供養を始めたのと同じ時期に、潮の仏壇を離れに置いて本家の嫁を追いやったのです。
さらに、切り取った左手を安置する場所として仏壇を利用していました。
対象の殺した相手の左手を切り落とし仏壇に置くというのは、正直気味が悪いと思ってしまいますね。
ですが、それだけ宗一郎が妻を自殺に追いやったことに罪の意識を感じ、呪いに対して恐怖感を持っていたことがわかります。
作中の中で最初の違和感となっていた間取りを含め、3つの間取りの共通点である「こども部屋」
こども部屋に窓がない理由は、左手供養のための掟にありました。
「片淵家に左手なき子、産まれた時、暗室に入れ養うこと」
更に、家を建てる際には片淵家主導で間取りを決めた為、こっそり明るい部屋にするということもできなかったのでしょう。
締め切った部屋で生活するというのは病んでしまう印象がありますが、桃弥は優しい子供に育ったのだなと、切ない気持ちと心苦しくなってしまいました。