イメージなさってるのはどうも１９世紀の社交界って感じなのですが。 あと宮廷ではなく個人の邸宅で行われるもの、ということでよろしいでしょうか。 とりあえず１８世紀と１９世紀と簡単に説明しますね。 １８世紀は夜会にこれといった形式は無かったようです。 親しい人が集まってする食事会みたいな感じ。 なので招待状というのは特に無く、招待する側が手紙か従者に伝令を頼むかしてお招きする。 要は顔見知り同士の集まりなので顔パスです。 家令は当然そういった人たちの顔を覚えてなきゃいけません。 入口のところで家令がお迎えして「〇〇様、お待ちしておりました」なんて言えば従僕がそれを裏方に伝令して回り、最終的には従者から主人に伝わる。 あとは控えの間なりホールなりに案内して主人とご挨拶。 そこからは食事するなりダンスするなり軽食をつまむなり主人の采配次第。 なお当時は生演奏なので演奏者は合図があるまでひたすら待機。 食事中に音楽が欲しいと言われればBGMを奏で、ダンスを踊るとなったら舞踏用の曲を演奏する。大変だ。 さて一通り食事したりダンスしたりした後は、カードゲームなどをして夜っぴて遊ぶ。 なおカードゲームったって現代のアレではなく、要は賭け事です。 いくら賭けるかは主催者次第。 人によってはどっかで抜け出して男女でしっぽり。 明け方になってフラフラ帰っていく。 主人との挨拶は…まあその時々で。酒飲んで潰れてる可能性もあるし。 １８世紀はこんな感じの享楽の時代でした。特にフランス。 そりゃ革命も起きますわな。 こういう享楽的なバカ騒ぎが性に合わない人たちが知的なサロンを開催してごくごく少数の人だけ招いて知的な会話で盛り上がったのです。 １９世紀になると社交もかなり儀礼的になっていく。特にイギリスでは。 とにかく準備と形式を整えることが大事。 カードの紙からインクの色から考え抜かれた美しいデザインの招待状を作って従僕に届けさせる。 この時に舞踏会か晩餐会かはしっかり書いておくこと。全然別の行事なので。 社交のシーズンはあちこちで同様の晩餐会や舞踏会があるのでどれに参加するかで今後の社交界の立場が決まるので判断ミスは許されない。 招待する方も実力者と重ならないよう開催日を調整したいところ。 この辺は情報戦です。誰がいつどこで夜会を開くかの情報を突き止めることが大事。 なお舞踏会なんかだと途中抜けも出来るので先に重要じゃない相手のところを回って挨拶だけして適当な理由付けてお暇し、重要な相手のところには最後に行って終了するまでいて挨拶して帰るという手がある。 個人の邸宅ですと招待される人数もそこまで多くないので執事が対応。 重要なお客様は基本顔パス。 それ以外は招待状を見せればどうぞ中にお入りください、となる。 招待状は回収しないようです。相手に印象付けるために気合入れて作ってますから。 案内の時は「〇〇様とその奥方様がいらっしゃいました！」と大声でアナウンスする。そうすると中にいる人たちに誰が来たかが判るので。 控えの間に案内してメンバーが集まったらそこに女主人が現れてご案内。 この時に女主人は男女をある程度組み分けして配置し案内するという重要な役目がある。 席順や組み合わせによって話が弾むかどうかが違うので采配は重要。 なお未婚の男女はお見合いも兼ねているので女主人はその辺も配慮する。 この手の社交は基本的に女主人が采配します、奥様も大変だ。 晩餐会の場合は食事が終わるとほどほどに落ち着いたところで女主人が声をかけ、男女別々の部屋にご案内。 というのも男性はタバコタイムだから。 タバコを吸う部屋というのがあって、そこで女性抜きで男性だけでくつろぐのがお約束。 その気になったらプレイルームでビリヤードなどで遊んでも良い。 女性たちは別の部屋でお茶やお菓子でおしゃべりタイム。 ひたすら噂話に花を咲かせる。 ほどほどの時間（だいたい午前０時～１時）になったらお開き。 主人と女主人が招待客と挨拶を交わして送り出す。 メイドたちはここからお片付けの時間。大変だ。 そんな感じなので１８世紀の主人たちは仲の良い相手を気楽に招いて参加者も気楽に盛り上がっていましたが１９世紀の社交は戦場。 主催者は完璧な夜会を主催しようとあれこれ手を尽くすし参加者もいかに人脈を広げるかを虎視眈々と狙ってる。 社交界は恐ろしい世界なのです。