質問者さんのように寝起きのウトウトしてまどろんでいる状態におこる幻覚体験のことを【出眠時幻覚(しゅつみんじげんかく)】と言います。
逆に、寝入りばな(眠りかけ) に幻覚体験をすることを、【入眠時幻覚(にゅうみんじげんかく)】と言います。
質問者さんが幻覚体験をした原因は、レム睡眠中に理性や判断をつかさどる脳内の前頭前野(ぜんとうぜんや)は眠っていたけれど、脳の別の部分は起きていた(覚醒していた)ことによって引き起こされたものなのです。
簡単に言うと、半分眠り、半分起きているような状態のことです。
質問者さんが見ていたクモが次第に消えていくのは、脳の一部分が睡眠状態から覚醒状態へと移行している最中だったのです。
【レム睡眠とは】
身体は深く眠っているのに、脳が起きているような状態の「浅い眠り」のことです。
レム睡眠のときに幻覚体験が現れるのは、脳内の視覚連合野(しかくれんごうや)が活発に働いていて、目からの情報ではなく、記憶の情報を視覚化しています。
現実の映像も見えていますが、幻視も重ね合わさって見えるので、視覚連合野が目からの情報と過去の記憶からの情報を両方処理していることになります。
(睡眠麻痺がかかる直前の室内の風景や、普段の室内の記憶が鮮明な夢となって奇妙な物が映し出されることがあります)
通常の睡眠は【ノンレム睡眠】から入り→【レム睡眠】→【ノンレム睡眠】→【レム睡眠】→【ノンレム睡眠】の順で繰り返していくのですが、ストレスや不規則な生活習慣などの影響でこの睡眠リズムが崩れると【レム睡眠】から入ってしまいます。
すると、体は寝ていて動けないのに脳は起きたまま意識はあるため、幻覚体験をひきおこすのです。
また、真夜中や朝方、昼寝などでもストレスなどが原因で通常より眠りが浅くなることにより、睡眠リズムの中でも眠りが浅いレム睡眠時に脳だけ起きてしまう場合があり、そんなときに幻覚体験をすることがあります。
ですから、質問者さんのケースは病気とは違います。
ついでに、どのような幻覚があるのかを情報として説明しておきます。
「幻覚体験」には以下のような種類があります。
例えば、部屋の入り口に人影が見えたり、誰かが襲いかかってきたりする他、壁や天井に手のひらほどの大きいクモを見たり、奇妙な動物や化け物のようなものが体に覆いかぶさるといった恐ろしい幻覚を見ることがあります。
このような体験を【幻視(げんし)】と言います。
★質問者さんの場合は【幻視】を体験したことになります。
知らない人が近づいてきて、耳元でボソボソとささやくことや、夜中なのに鈴の音が聞こえるということもあります。
これを【幻聴(げんちょう)】と言います。
知らない人から刀で切られるとか、足や腕を触れられる、掴まれるなどといった生々しい現実感をともなった【幻触(げんしょく)】が起こることがあります。
その他に、自分が空を飛ぶとか、体が浮いたまま部屋の中をグルグル回ったり、窓から出て行くといった【浮遊感覚(ふゆうかんかく)】がおこることもあります。
幻覚は夢を見るのと同じように、毎回体験する内容が違います。
そして、人の数と同じくらい幻覚体験の内容が違うのです。
これらのような幻覚に恐怖を感じて逃げ出そうとしてもレム睡眠中のため体が脱力して手足が動かないことがよくあります。
また、声が出せないのも特徴です。
その他に、耳鳴りがする場合もあります。
これを【睡眠麻痺(すいみんまひ)】と言います。
★心霊体験でよくある「金縛り」というのはこの睡眠麻痺の症状で医学的に説明が出来ると言われています。
睡眠麻痺は幻覚と同じように “レム睡眠中” におこります。
何度も繰り返しますが、レム睡眠中は「頭は起きているけど、体が寝ている状態」なので、助けを呼ぶこともできないため、金縛りのような恐ろしい体験をします。
たとえ幽霊のような恐い幻覚が見えても「これは夢だ」と冷静に、再度目を閉じて寝てしまいましょう。
むりやり金縛りを解こうとすると、非常に疲れます。
睡眠麻痺(金縛り)を自分で解くことはほぼ不可能なんです。
ごく稀(まれ)に自分で金縛りを解けることもありますが、かなりの疲労感になります。
金縛りになった場合は、そのままじっと耐えたまま寝るか、偶然に第三者が来て起こしてくれると睡眠麻痺(金縛り状態)が解けます。
【入眠時幻覚や出眠時幻覚、睡眠麻痺になる原因と対処法】
1.過度のストレスや過労・心配事が多い
ストレスによって起こっているので、緊張やストレスを解消する必要があります。
このストレスというのは、様々な人間関係の悩みや学校生活、仕事のこと、その他に抑圧(よくあつ)された生き方によるストレスや、環境的ストレス(騒音・温度・湿度・気圧)などがあります。
2.生活パターンの乱れ
入眠時幻覚や出眠時幻覚・睡眠麻痺などは覚醒と睡眠という生体(せいたい)リズムが乱れてしまう病気なので、夜間の睡眠を十分にとり、規則正しい生活を心がけるといいです。
不規則な生活習慣は日中の眠気をはじめとした睡眠障害を悪化させるので、規則正しい生活に改める必要があります。
3.横向きに寝るとレム睡眠になりにくいと言われています。
ただし、個人差があります。
ちなみに、僕も中学生から高校生の頃までは金縛り体験はありましたが、社会人になってからはそのような体験はしなくなりました。