大雑把にまとめますと…
モーツァルトの『レクイエム』K.626は14曲からなりますが、すべてがモーツァルトによるのは第1曲“入祭唱”と第2曲“キリエ”だけとみなされています。加えて、第3~7曲・第9曲・第10曲の合唱部分他と第8曲の8小節目まではモーツァルトによる楽譜が残されていたそうです。最終第14曲については「第1曲の導入旋律と第2曲のフーガの歌詞を入れ替えて用いろ」などという旨を指示を残していました。(ちなみにこれはミサ曲の慣例)
要するに、第3~10・14曲は何らかのモーツァルトからの何らかの情報をもとにオーケストレーションなどが行われたことになります。
そのほかはジュスマイアの作曲ということになります。
『レクイエム』の遺稿と遺言をもとに、何人かの弟子が補作を試みますが「モーツァルトの補作」という事の大きさに投げ出されることになり、最終的にお鉢が回ってきたのがジュスマイアでした。こういうことなので、ジュスマイアは優秀な弟子…というわけではなかったようで;;
このような経緯で世に出されたので、「モーツァルトはこんなことしないよ」と言われる部分も多く、『ジュスマイア版』に改変を加える形で色々な作曲家や学者が補作をします。
また、ジュスマイアが補作した部分でモーツァルトの意志があまり反映されていないと思われる部分を削除したものや、削除して新たに作曲(改作)したものもあります。その他には、上記の『補作を投げ出した弟子』の楽譜を頼りにしたものもあります。
時には、公演に際して指揮者がさらに改変を加えることもあります。
私が知る限りでは1991年に発表された『レヴィン版』が最も新しい補作だと思います。200年も補作が続く作品も珍しいでしょうね…。