ん・・・これは、むしろ、君の解答の方が理想的だと思う。 設問の意図は、 「文ことばなめき人」は憎らしい、 という、この章段の主題を把握しろという意味で、 主題に直結する部分を抜き出させたいということなんだろうけど、 それなら、「さ」の指示内容を指摘させる設問にする必要はない。 清少納言は、「平安時代の女性」です。 鎌倉時代の隠者、鴨長明や兼好法師のように、 「文構造」を意識して、対句を多用し、 「序論！本論！結論！」といった段落構成に基づいた、 理性的、論理的な文章というのとは、根本的にスタンスが違う。 一般的な女性の話し言葉を聞いていたらわかると思うけど、 話題が目まぐるしく二転三転して、結論が出ないままに次の話題に移り、 男の眼から見ていたら、「さっきの話はどうなったの？？」とストレスのたまることこのうえないｗ 清少納言の文体というのも、要するに女性のおしゃべり口調、 話題は刻々と展開を見せ、思いつく端から感覚的に言葉をつないで、 全体として統一された、まとまった文意をもつ、 というスタイルになっている。 だから、無理やり「さ」の指示内容をもって「主題」に回帰させるという、 作問の狙い自体がずれている。 そういう問いかけをすべき章段ではないんだよ。 「手紙の言葉遣いが無礼な人は憎らしい。」と語り始めて、 慇懃無礼もヤなもんだ、と言って、 自分にもらった手紙で言葉遣いの無礼なのは憎らしいのは当たり前だが、 人んとこへ来た手紙でも、言葉遣いの悪いのは傍腹が立つ、 と言って、いったん、ここで、「手紙」の話はもう終わってるの。 次は、「話し言葉」の無礼さ。 「手紙」の言葉遣いの話から話題がずれて、 「だいたいさあ、手紙でなくても、「差し向かいでしゃべっていても、失礼な」人って、なんでこんなこと「言う」のかしら、とイライラすんのよね！」 と話を展開させた。 「高位の御方を「さ（＝失礼に）」「言う」ヤツなんか、めちゃムカつく！」 「まあ、田舎じみた人なんかが「そう」なのは、バカっぽくて可愛げもあるけどねｗ」 「使用人のくせに主人を無礼に「言う」のなんかサイテー」 こういう流れで、後半は全部「話し言葉」について「なめき」言葉遣いが腹立つ、と言ってるじゃない。 その真ん中の「田舎びたる者などの「さ」あるは」の「さ」が、 なんでそこだけ急に「文ことば」の話に戻らなきゃいけないの。 理不尽じゃない！ もちろん、ここも、「話し言葉がなめき」に決まってるんだよ。 そうすると、君が出した「差し向かひてもなめき（＝差し向かいで話していても失礼な）」が、 「さ」の指示内容である、という指摘の方が、 模範解答よりもはるかに理性的に本文を読めていることになる。 だから、君の抜いた箇所は「間違いじゃない」。 それどころか、模範解答よりも理想的な解答である。 これが、俺の結論です。