経過を追って回答しますと、健康診断で甲状腺腫脹が見つかった場合の多くは単純性甲状腺腫といい、ただ腫脹しているだけで甲状腺分泌機能には問題のないもの、したがって放置して良いものです。 ですが中には無症候性の橋本病がみつかることもあります。これは甲状腺ホルモンの分泌が正常なので経過観察で良いのですが、最初に腫脹を指摘され、甲状腺ホルモン（FT3,FT4）と甲状腺刺激ホルモン（TSH）だけを測定したのであれば、この時点でどちらであったのかわかりません。橋本病の診断には、他に抗サイログロブリン抗体、抗TPO抗体などの抗体の測定と甲状腺エコーが必須だからです。 甲状腺の触診については、頸部触診中に唾液をごくんと飲んでもらい、その際に甲状腺を気管軟骨と一緒に動かせて、甲状腺を触知するのが典型的な方法です。 ですが、軽度の腫脹であればよくわからないことがあります。また人によっては鎖骨レベルに埋もれるほど低い位置にあり、やはりよくわからないこともあります。 橋本病が原因で腫脹した場合、甲状腺が自然に小さくなることは通常ないので、同じ大きさの甲状腺腫脹が数年間の健康診断で見逃されていたということになります。 脱毛やうつ傾向は橋本病の症状として典型的ですが、不安障害やパニック発作があれば、うつ病という程ではなくても、多少なりともうつ傾向になることはよくあるので、うつ傾向が橋本病から来ているのかわかりません。 一般に橋本病の症状としては、これら以外に、全身倦怠感、動作緩慢、徐脈傾向、寒がりになる、下肢の浮腫（指で押しても圧痕は残らないタイプのむくみ）などが典型的です。 血液検査では橋本病の抗体まで検査しませんが、代謝が低下するため、コレステロールが上昇します。心電図では徐脈傾向が出ます。 心療内科や健康診断での採血の結果、これらの所見がなければ様子を見て良いと思いますが、二度甲状腺腫脹を指摘されているので、一度は内分泌科や甲状腺外来を受診されて、上記の抗体検査や甲状腺エコーを受けられたほうが良いと思います。